東京・渋谷にある青山学院大学の青山キャンパスでは、「チャットルーム」というシステムで学生同士の国際交流が活 発に行われているという。このチャットルームの発案者であるデビッド・リーディー准教授に、活動の目的や学生から の反響などを伺った。
(「The University Times」June 2011 Vol.11より転載)
日本人学生と留学生の交流の場
「学生の多くは、教室で英語を習うだけでなく、実際に話してみる機会がもっとほしいと考えています。一方で、留学生たちは、もっと日本人とかかわる機会がほしい、国際交流にかかわる活動がしてみたいと思っています。双方のニーズを満たす方法が何かないものかと思っていたところ、留学生がリーダーとなり、日本人学生たちと外国語で話をするという、チャットルームの構想が浮かんだのです」と、デビッド・リーディー青山学院准教授。
チャットルームは、青山学院の生徒であれば、誰もが無料で自由に参加できるシステム。基本的なテーマは決まっているが、実際に何を話すかは自由。誰もが気軽に英語で「チャット(おしゃべり)」を楽しめる場なのだ。
間違いを恐れずに話せる
青山学院のキャンパスのほぼ中心にある間島記念館。国際交流委員会によってここにチャットルームが設置されたのは、2008 年4月のことだ。英語のほか中国語、韓国語、そして日本人学生がリーダーとなる日本語セッションを実施。人数は、1グループでチャットリーダー1人につき参加者6人まで。平日の午前9時から午後5時まで開室、1回のセッションは約40 分。学生はインターネットでスケジュールなどを確認しながら予約することができ、開室以来、年々参加者が増え続けているそうだ。
「学生が英語を自由に話す環境を作るには、『先生』という存在がいてはいけないと考えました。指導してもらえると思うとどうしても受け身になりますし、評価されることによって、間違いを恐れるようになります。そこで、留学生たちには指導者ではなく『リーダー』として、会話の進行役を務めてもらっています。もちろん、参加者に興味を持ってもらえるような話題を提供したり、皆同じように話に加わることができる質問を投げかけたりといった工夫は必要になりますが、間違いを直したり、話の内容がよいか悪いか判断したりすることはありません」
各セッションには、「Movie」「Travel」「Fashion」といったトピックが設けられていて、基本的にはそのテーマに沿って話を進めるが、途中で脱線したり、誰かが新しい話題を提供したりといったことが起こっても、いっこうに構わない。友人同士で、英語でごく普通に会話をするような環境が得られるのだ。
また、あらかじめ「Basic」「Intermediate」「Advanced」という3つのレベルに分けてグループ作りをしているので、レベルが合わないことを心配する必要はない。このレベルは自己申告制で自由に選ぶことができるので、「Travelの話題は得意だから、今回はAdvancedにチャレンジしてみよう」と調整することも可能だ。
小学生から大学院生まで
さらに、このチャットルームの大きな特徴は、小学生から大学院生までの青山学院の児童・生徒たちが交流できる場となっているところにある。「高校生と短大生、大学生・大学院生は、同じセッションに参加します。例えば就職活動の話が出たときなど、高校生にとっては、大学生が進路をどのように決めるかを知る、貴重な機会となっています。大学生同士でも、普段別の学部の学生と交流する機会があまりないので、ここで学内のネットワークを広げることができるのです」。初等部と中等部ではそれぞれ個別にセッションを設定しており、やはり英会話を実践してみるよい機会になっているそうだ。
リーダーの要件は「国際性」
チャットリーダーは、同大の留学生の間で人気のポジション。募集を行うと大勢の志願者が集まるが、意外にも、採用されるのはネイティブ・スピーカーの学生とは限らないそうだ。「一番重視しているのは、国際性。フランスで生まれてロシアの学校に通い、大学はニュージーランドといったような経歴を持つ学生が最適です。いろいろな国の情報を提供することができますし、考え方が英語圏のものに偏ることがありません」。採用後はトレーニングを受け、参加者への質問の方法などをまとめたマニュアルで勉強。チャットルームのセッションがうまく進行する理由は、このようにチャットリーダーの育成を丁寧に行っていることにもあるようだ。
楽しいから続けられる
今のところ、チャットルームに参加したことによる「上達度」を測る予定はないが、リーダーと生徒にアンケートを取り、チャットルームの運営に反映させるようにしている。例えば、話が盛り上がりにくいとされたトピックは、次第にリストから消えていった。
参加の目的は、大半が「英会話力向上のため」ということだが、実際に体験してみると、「チャットリーダーが面白い、楽しい」「新しい友人ができる」といった声が圧倒的に多く、異文化交流を純粋に楽しんでいる様子がうかがえる。一度利用した学生の多くはリピーターとなり、週に数回または月に数回というペースで通っているそうだ。
一方でチャットリーダーたちは、日本人学生との交流の場が得られ、さらに英会話力向上をサポートできる活動に非常に満足し、大半が「これからもチャットリーダーを続けたい」「ほかの留学生にも勧めたい」と語っている。
キャンパス移行でさらに発展
青山学院大学では、現在、相模原キャンパスで学んでいる人文・社会科学系の1・2年生が、2013 年度より、青山キャンパスに移行する予定。青山キャンパスで開かれているチャットルームに、さらに大勢の参加者が集うことだろう。「1・2年生では、英語で話をする機会が少なく、練習の場がほしいという人がさらに多いはずです。そういった学生の期待に応えられるよう、これからもっとチャットルームを充実させていきたいと思っています」