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第5回 Presentation「聞き手の立場に立って準備する - 異文化の壁を乗り越えるには」

Understanding the basics of Business Presentations -基礎知識-

英語でのプレゼンテーションをやることになったとし て、最初に思い浮かぶのは何でしょうか?

「正しい英文法を使うこと」
「正しいボキャブラリーを用いること」

このような答えが聞こえてきそうですね。しかし、文法や語彙ばかりに気を取られていると、"聞き手の立場"を無視した一方的な"語り"となってしまい、プレゼンテーション本来の目的を全うできなくなる可能性が高いので要注意です。
プレゼンテーションの目的として挙げられるのは、「聴衆に理解してもらう」「聴衆の賛同を得る」「聴衆に行動を取ってもらう」といったことです。
これらの目的を達成するにあたり、プレゼンテーションの準備段階から、6W2H※を用いて具体的な対策を練らなければなりません。特に、聴衆が日本人でない場合は、相手の文化に合わせ、"何を(どんな事例やデータを)"、"いつ(どのタイミングで、どの順番で)"伝えるかが重要なポイントとなってきます。

※6W2Hとは、Who(誰が)、Whom(誰に)、Where(どこに)、What(何を)、Why (なぜ)、When(いつ)、How to(どのように)、How much(どれだけ)を示します。

聴衆に合わせ、伝える内容やタイミングを変える。

このようにお伝えすると、プレゼンテーションの軸が定まらないのではないかと心配される方がいます。しかし、これは、決して相手によってプレゼンターの主張を変える作業ではありません。特に、グローバルなビジネスシーンにおいては、確固たる主張を持つことは大切です。しかし、自分の主張をただストレートにぶつけただけでは、相手を説得できないのがビジネスプレゼンテーションの難しいところです。ここで求められるのが、聴衆の特徴を理解した上で、伝える内容を調整する対応力です。
「何を(どんな事例やデータを)」、「いつ(どのタイミングで、どの順番で)」伝えるかを決定する上で、基準とすべきことが、聴衆の特徴です。すなわち、相手の特徴を知った上で、相手が欲する内容を、相手が理解しやすい順番で伝えればよいのです。
そして、相手の特徴を理解する上で役立つのが異文化理解です。同じ主張をするにしても、プレゼンテーションの内容や流れを相手の文化に合わせるだけで、あなたのプレゼンテーションは一方的な「語り」から、説得力のあるものへと変身していきます。今回は、基本的な異文化理解のポイントをお伝えしましょう。

1:個人主義と集団主義の違い

個人主義とは、個人の特性や成果を使って個人の価値を主張するものです。個人主義の人間は、個人が幸福感を得られるかどうかを第一に考えます。一方、集団主義とは、「集団の中の一人」として個人をとらえ、その個人の価値を主張するものです。集団主義の人間は、「著名な団体に属している」といった、集団の一員であることに価値を見出します。アメリカが個人主義を代表する国であるなら、日本や中国は集団主義を代表する国として挙げられます。

2:結果重視志向と過程重視志向の違い

結果重視志向の文化では、具体的な目標を設定し、その目標がより短時間で達成されることを重要視します。一方、過程重視志向の文化では、協働や協調の姿勢を重んじます。アメリカが結果重視志向の国として挙げられる一方、グローバル化が進む前の日本は過程重視志向の国として挙げられます。

3:権力優先志向と知識優先志向の違い

権力優先志向の文化では「権力を持つ人」の意見や考えが優先されます。一方、知識優先志向の文化では「高い知識を持った人」の意見や考えが優先されます。権力優先志向の国としては日本やインドが、知識優先志向の国としてはイスラエルやアメリカが挙げられます。

英語でのプレゼンテーションを実施する前に、これらのことを知っておくだけで、説得力ある事例選択が可能となります。
まず、個人主義の傾向にある聴衆には、「個人のメリット」を強調できる事例を、集団主義の傾向にある聴衆には、チームや組織が「集団として得られるメリット」を強調できる事例を選択してください。

英語でのプレゼンテーションを実施する前に、これらのことを知っておくだけで、説得力ある事例選択が可能となります。
次に、結果重視志向の聴衆を前にしたら、「効率性」にフォーカスし士気を高め、過程重視志向の聴衆を前にしたら、仲間と協力し合う意義を伝え士気を高めましょう。

英語でのプレゼンテーションを実施する前に、これらのことを知っておくだけで、説得力ある事例選択が可能となります。
最後に、権力優先志向の聴衆に対しては、プレゼンターのプロフィールに「地位」を明示し、知識優先志向の聴衆に対しては、プレゼンターの過去の実績を証明する「受賞歴」を含めてみてください。

英語でのプレゼンテーションを実施する前に、これらのことを知っておくだけで、説得力ある事例選択が可能となります。
あらかじめ聴衆の特徴を理解し、相手に合った内容の選択をするだけで、英語でのプレゼンテーションは格段によくなります。ぜひ、このことを皆さんも覚えておいてください。

英語でのプレゼンテーションを実施する前に、これらのことを知っておくだけで、説得力ある事例選択が可能となります。
では、具体例を見てみましょう。

Examples -具体例-

これまで学んだことを、ある電機メーカー勤務の会社員のエレベーターピッチを通じて学んでみましょう。
「エレベーターピッチ」とは、1分程度の営業トークのことを指します。ある大手企業の社長とたまたまエレベーターに乗り合わせたとします。最上階の社長室で社長が降りるまでの時間で、自分のアイディアを売り込むのがエレベーターピッチなのです。
今回登場するのは、電機メーカーCarZet社の加藤さんです。彼が担当しているのは、新しいカーナビのシステム、NoJiKo。カーナビを作っている企業に「弊社のこの機能を搭載してください!」というお願いをするためのエレベーターピッチです。

Hello. My name is Shouta Kato.

権力優先志向の自己紹介

I'm the chief researcher at CarZet.

知識優先志向の自己紹介
I've been studying car transportation for 10 years.

Today, I would like to introduce NoJiKo, a system that can provide you with real-time traffic congestion(1) information.

個人主義の商品紹介

By installing(2) NoJiKo, you will become known as the creator of the first navigation system(3) that can navigate your users to their destination jam-free(4).

集団主義の商品紹介
By using our NoJiKo system, your company will be known as the No. 1 driver's brand.

NoJiKo learns where the driver is, and how fast he is driving from every car that has NoJiKo every five minutes. By crunching information(5) from over 10 million cars every minute, we can map out the places the traffic is slow(6).

結果重視志向な商品紹介

This system is the fi rst of its kind, and it will give you an advantage over competitors and a jump in sales(7).

過程重視志向な商品紹介
Over five years of intensive research with the University of California has gone into this product.

If you are interested, please contact me, and we can show you how you can integrate(8) our service into your system.

1:traffic congestion / 交通渋滞 2:install / 導入する 3:navigation system / カーナビ 4:jam-free / traffic jam free の略。交通渋滞知らず 5:crunch information / 情報処理をする・分析する 6:traffic is slow / 車の流れが遅い 7:jump in sales / 売り上げの急上昇 8:integrate / 統合する

相手に合わせる、ということを体感できましたか?
エレベーターピッチは、相手や状況に合わせて最適なものを言えるように、いくつかパターンを作っておくことをおすすめします。日頃から話し慣れている内容でも、いざ本番になると、なかなか言葉が出てこないものです。ましてや、短い時間で、英語で話さないといけないとなれば、なおさらです。
また、エレベーターピッチも、前回ご紹介したPDCAサイクルに基づいて改善を図るようにしましょう。繰り返し話すことで一番よく伝わる表現方法を見つけることができるでしょう。
それでは、最後に、下記の項目を参照しながら、ご自身のエレベーターピッチを作成してみましょう。

■Asserting the situation
  • Who :
  • Whom :
  • Where :
  • What :
  • Why :
  • When :
  • How to :
  • How much :
■Identifying the cultural background
  • 個人主義 or 集団主義
  • 結果重視志向 or 過程重視志向
  • 権力優先志向 or 知識優先志向
■Writing the content
  • Introduce yourself :
  • Attention grabber (How can you portray the uniqueness of your product in ONE sentence?):
  • Describe your product :
  • What is the benefit of your product?:
  • Conclusion (What would you like the audience to do as a result of this message?):
野村 るり子 (Ruriko, Nomura)

株式会社ホープス代表取締役、教育コンサルタント
15歳で単身渡米。ペンシルバニア州立大学体育学部卒業。慶應ビジネススクールでMBA 取得。フルブライト奨学生として、ハーバード大学教育大学院で教育学修士取得。日米双方のオリンピック委員会指定クラブで体操競技指導。その他、外資系企業での業務を経て、教育コンサルティング会社(株)ホープスを設立。著書に『英語でプレゼン』(日興企画)、『よくわかる英語プレゼンの技術』(中経出版)『英語の授業では教えてくれない自分を変える英語』(講談社)など。

谷口 諭 (Satoshi Taniguchi)

株式会社ホープス教育コンサルタント
慶應義塾大学総合政策学部卒業。卒業後(株)ウィル・シードにて、研修設計業務に従事。2010 年にコトバンク(株)を起業。開発担当責任者として、英会話のオンライン添削サービスSqript!を立ち上げる。事業の譲渡を機に退社。現在はキャリアフラッグ(株)取締役、(株)ホープス執行役員として、大学生~社会人の教育設計・開発に携わる。著書に『OB 訪問本』(本の泉社)。TOEICR 990点、英検1級取得。