新潟県編

活発な自主研修

新潟大学教育学部 教授 松沢伸二

2014.04.30

 新潟県は上越・中越・下越・佐渡からなる海岸線の長い県です。その直線距離を中部日本海側に当てはめてみると、東は新潟県と富山県の県境から、西は石川県を越えて、福井県小浜市まで達します。このため、上越地方の先生方が新潟市で研修するには、福井市の先生方が金沢市を経て富山市で研修するほどの距離を移動しなければなりません。
 こうした地理的な事情のせいか、新潟県では各地域での教科ごとの自主研修が盛んです。英語科も例外でなく、小・中・高・大の先生方が各地で集まって研鑽(けんさん)に励んでいます。本稿はこうした自主研修への取り組みという視点から、新潟県の英語教育を紹介します。

コミュニカティブ・ティーチング研究会

 皆さんは写真の本をご存じでしょうか。『生き生きとした英語授業 上巻:コミュニカティブ・ティーチングの考え方と手法』(大修館書店、1981年)、『同 下巻:コミュニカティブ・ティーチングの実践』(同)です。
 本書は米山朝二先生(新潟大学)・高橋正夫先生(新潟大学)・佐野正之先生(長岡工業高等専門学校、いずれも当時)のご共著です。3人の先生は大学の同級生ですが、1975年に長岡市でコミュニカティブ・ティーチング研究会を発足させ、長く研究会の活動を牽引(けんいん)されました。本書には研究会の理念と研究実践が紹介されており、全国の英語教師に大きな影響を与えました。
 コミュニカティブ・ティーチング研究会は次のような英語授業を目指しました。「学習の主体者として生徒を位置づける。生徒の個性を尊重し、どの生徒もクラスに貢献できることを確認する。学習の初期の段階から、生徒の創意を奨励し、創造性と想像力を活用する。学習に際して、認知面とともに情意面を重視する。場面に即応し、事実に基づいた、生徒にとって個人的な意味の強い内容の言語交渉を行う。自己反映的な発話を重視し、教師-生徒、生徒-生徒の言語交渉を行う。言語交渉を通して自己理解を促進し、人間的成長を図る。生徒間の言語交渉に基づく共同学習を通し、相互理解を深め、集団としての成長を促す。生徒の発話を活用した意味のある言語材料を提示し、学習を実現する。楽しい、生き生きとした言語学習を実践する」
 以上は研究会のマニフェストにまとめられたものです。研究会が発足して30年以上経た現在においても斬新であり、今なお全国の先生方に深く支持される英語授業観だと思います。
 本研究会は『Joyful English』などの教材を開発するほか、『コミュニカティブ・ティーチング研究会紀要』を発刊しています。研究会は県内外の多くの先生方を育ててきましたが、現在も新潟大学教育学部の加藤茂夫教授を中心に、読書会と実践発表を行う月例会、それに模擬授業を行う夏期合宿と冬の授業公開を行って精力的に活動しています。