グローバル人材育成を目指し中学卒業までに準2 級合格を
1945 年に創設された名古屋英学塾に端を発する星城中学校。
英語教育を基盤に建学の精神の1 つである「世界観の確立」を掲げた人材育成の流れを受け継い
でいる。現在では、グローバル人材の育成という目標を実現すべく、英語教育や国際理解教育に
力を注ぐ。中学校卒業までに準2 級合格を目指して正規の授業で英検対策を行うなど、英検が英
語教育のペースメーカーとして活用されている。
英検合格を核に据えた独自の英語教育に取り組む
澤田 満先生
中高一貫校である星城中学校の英語教育は、グローバル人材の育成、つまり「国際社会において貢献できるリーダー性にすぐれた社会人の育成」を目標としている。そのためには、大学入試で求められる速読能力や文章構成力だけでなく、英語でコミュニケーションができる力をつける必要がある。そこで、英検へのチャレンジや星城版SGH 講座、海外語学研修を通じて、中高6 年間をかけて生徒の英語力を総合的に高めていく。
同校は学校全体で英検に取り組み、中学卒業までに準2 級合格を目指す。昨年度から正規の授業で週1 回の英検対策を行い、学習のペースメーカーとして英検を活用している。英検対策の授業は学年の壁を取り払い、自分が受験する級別の授業を受講する。各級で過去問を解き、担当の教員が解説をする授業だ。
中学校主任の澤田満先生は「過去問を解いて傾向と対策をしっかりつかむことが、合格につながります。英検は級別の合否が出るので、現時点での実力が明確になり、到達目標として設定しやすく、生徒も学習に取り組みやすいのが良いところですね」と話す。
年3 回実施される英検を同校では準2 級に合格するまで、毎回受験する。英語科だけの取り組みではなく、各クラスの担任や他教科の教員も一丸となって、生徒の英検合格をバックアップする体制が整っている。職員会議では生徒の合格状況が報告され、合格のためにどんな指導が必要かを担任も把握するよう、英検に関する情報を常に共有する。
英検合格は生徒に自信をつけ、学習意欲を引き出すことにつながっている。澤田先生は「スコアで結果表示される他の検定試験は幅跳びに、級の合否が示される英検は高飛びに例えられますが、英検を受験した生徒は、自分がどの高さまで飛ぶことができたのかをはっきりと把握できます。そして、英語を足がかりとして自己肯定感を高め、さらに上位級を目指すだけでなく、他教科の学習にも意欲的に取り組むようになっています」と英検による波及効果を喜ぶ。
同校では最近、2 級をすでに取得して入学してくる生徒も増え、帰国生徒も入学してくる。高い英語力を持つ生徒の学習意欲をさらに伸ばすこともする一方で、5 級レベルの生徒のための特別補習も行い、生徒の多様な英語力に対応したきめ細やかな指導を行っている。
英検受験に際しては、保護者の理解や協力も不可欠だ。澤田先生は「特別補習で下校が遅くなるときには、保護者が迎えに来てくださるなど、教員、生徒、保護者が一体となって、英検合格を目指しています」と述べた。
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「星城版SGH」に取り組み英語で学ぶ経験をより多く
吉澤則比古先生
今年度から文部科学省の「スーパーグローバルハイスクール事業(SGH)」がスタートしたが、同校ではSGH に匹敵する独自の「星城版SGH」に取り組んでいる。これは、中高一貫教育でグローバル人材を育成することを目指した取り組みで、英語の授業はもちろん、フィールドワーク、留学生との交流、大学・企業と連携した講座や講演会を通じて、国際理解教育や異文化理解教育を推進するものだ。中学生にも参加が許されており、参加にあたっては英検準2 級以上合格者に限定している。中高生が肩を並べて学び合う、学年の壁を越えた学びの機会が用意されている。
例えば、系列の星城大学のネイティブ教員を講師として、英語でのディスカッションを通じてコミュニケーション能力を育成する「英語講座」をはじめ、アジアの開発、環境問題、アジアの多様性と共生について探究する「アジア学」、NASA の元宇宙飛行士など、国際社会で活躍する人物を招いての「講演会」など、どの講座もオールイングリッシュで行われる。さらに、夏休みには1 泊2日でイングリッシュキャンプを行い、英語漬けの生活を送る。
吉澤則比古先生は「中学生にも英語で自分の考えを伝えたり、講師の話を理解したり、という“英語で”学ぶ経験を大いに積んでもらいたいと思います。参加した生徒からは『楽しかった』という声も多く、来年度は中学生の参加枠を増やすつもりです」と話す。
世界のどこにいても世の中に貢献できる人に
水野謙二先生
同校ではグローバル人材の育成という目標に向かって、中学卒業までに準2 級合格という到達目標を示した。それにより学年、学期、単元ごとの到達目標を定め、目標達成のために必要な指導内容が明確になった。そして、CAN-DOリストの手法を取り入れた指導計画を策定し、授業では4 技能を統合した活動を取り入れている。学監の水野謙二先生は「建学の精神をこれからの時代を見据えて具現化するためにも、生徒には、英語というコミュニケーションツールを身に付け、『Think Globally, Act Locally』の視点を持って、世界のどこにいても、自分の専門分野を生かして、世の中で貢献できる人に育ってほしいと願っています。星城版SGHが自己実現のための大きなインセンティブになってほしい」と希望を語った。
生徒の声
英語で意見を伝える力が伸びていると実感
淺井秀香さん 2年生
2級合格
英語で意見を伝える力が伸びていると実感
英語との出会いは2 歳の頃。いとこの家でホームステイに来たアメリカ人と会ったのです。それをきっかけに英語を話してみたいという気持ちが芽生え、英会話教室に通い始めました。その後幼稚園の年中で英検5 級に合格し、小学2、3 年生で3 級に合格。5、6 年生では準2 級にも挑戦しましたが、すぐには合格できませんでした。中学に入学して2 級に挑戦したのですが、さらにレベルが高くなり、1 年生の時に3 度目のチャレンジで合格。学校で英検対策の講座を受け、語彙力に重点を置いた勉強で徐々に力が付き、合格できたのはうれしかったですね。
小学校までは英語を話したり聞いたりすることを楽しむだけでしたが、中学生になり、英語を学び、英語を使って活動することに興味が湧いてきました。今年は文化祭で英語弁論に出場したり、星城版SGH のイングリッシュキャンプでスピーチをしたりする機会もあり、英語で自分の考えを伝える力が伸びているのを実感しています。
将来は医師として海外を舞台に活躍したい
柴田克輝さん 2年生
準1級一次合格
将来は医師として海外を舞台に活躍したい
父の仕事の関係で、幼稚園の年中からスペインへ渡りました。英語など分からないのに現地の幼稚園に入園し、英語漬けの日々に初めは戸惑いながら、自然と英語に耳が慣れ、意味も理解できるようになりました。3 年間のスペイン滞在中には英検にもチャレンジ。年長で5 級と4 級に、小学1 年で準2 級に合格しました。2 級には小学5 年で合格し、中学に入学してから準1 級にチャレンジし続けています。準1 級の壁は本当に厚くて大変でしたが、本年度第2 回検定でやっと一次試験に合格することができました。準1 級ともなると、4 技能がバランス良く身に付いていないと、なかなか合格はできないものですね。
毎週土曜に開講する星城版SGH の講座はネイティブの先生が英語で授業を行うので、英語を話す力も聞く力も高まっていると思います。僕は医師を目指していて、将来は海外を舞台に医療分野で社会に貢献したいです。
英検 英語情報 2014年 12月・1月号 掲載