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本物のコミュニケーションを目指して
~英検二次面接試験と授業への活用

 第5回 語彙指導


 英検二次試験を控えた生徒を指導していると、相反する2つの思いが交錯する。英語で伝えようとする真摯(しんし)な態度を誇らしく思う一方、それにしてももう少し何とかしなければ、と焦燥をおぼえる。入室して臆せず自分から挨拶をし、アイコンタクトを取り、はきはき音読するまではよい。ところがいざ質問が始まると、言葉に詰まって苦戦する。「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成」が実現されているのは喜ばしい。ところが、レベル相応の言語知識がそれに追いついていないのである。

 とくに憂慮されるのは、生活語彙の不足である。なぜだろう。中学では言語の使用場面として、生徒の身近な暮らしにかかわる場面が取り上げられるが、そこで使われる語彙を実際に使う言語活動が不十分なのかもしれない。高校では言語の使用場面が広がり、教科書が取り上げる題材は社会、文化、自然科学などに関する説明文が主となる。生活語彙のインプットが豊富とは言えない。つまり、中学で習う生活語彙が、受容語彙から発表語彙へ移行しないうちに高校へ上がり、高校ではそれらを繰り返し使う機会も、新たに増やす機会も不足気味なのではないかと推察する。

 とりわけ、準2級Picture Aの5つの動作を答える問題で、ことばに窮する受験生が多いのは、おそらくそのような背景があるのではないだろうか。準1級を受験する大学生でも、社会的問題について意見を言えるのに、stroller(ベビーカー)という単語が出てこなくてイラスト描写の途中で沈黙してしまったことがある。生活語彙は日本人学習者の盲点かもしれない。そこで今回は、イラストを利用して、日常生活でよく使う語彙の増やし方を考える。

 以下のイラスト(準2級2010年度 第1回カードA)は、次の5つの動作を問うている。

イラスト

 これらの表現を覚えるとき、関連するものもまとめて覚えるとよい。そこで、前回述べた、 「見えないものを見せる」指導をしよう。イラストには描かれていないけれど、イラストから連想される動作を、次のようにインプットするのである。

A woman is wrapping a box. If you take the box home, what will you do?
― I’ll unwrap the box.
A man is closing an umbrella. We close an umbrella when we enter a building. When you go out in the rain, what do you do?
― We put up / open an umbrella.
― When you don’t have an umbrella, you may ask someone to share his / her umbrella.

 コロケーションの知識も増やしたい。例えば、次のように、pushという動詞を、単独ではなく用例と共に示す。

A man is pushing a cart. We push a cart to carry something. What else do we push to carry something?
― We push a shopping cart.
― We push a suitcase.
― We push a stroller.
― We push(someone in)a wheelchair.

 単語を使えるようになるには、実際に使われる形で覚えなくてはならない。また、上記のようにすれば、pushという動作のイメージも、より具体的に理解されるのではないかと思う。中には準2級を超えたレベルのものもあるが、一度に全部覚えさせる必要はなく、そんな言い方があるんだ、と生徒が気づけばよい。忘れてしまっても、また同じ表現に出会う機会を作ればよいのである。例えば、面接カードを使った語彙指導を授業開始直後の5分間の帯学習として実施し、面接カードを日替わりで繰り返し使ってみてはどうだろう。

 さて、面接カードの利用だけが面接対策とは限らない。リスニング問題は生活語彙の豊富な源泉だ。例えば、次のパッセージを聞き、ペットを話題にするとき使ってみたい表現を書き取らせてみよう。

Roger has a new kitten. Last week, he took it to an animal hospital. He put the kitten in his car, but when he started to drive, the kitten would not sit quietly. It scratched his car seats and made a lot of noise. Roger thinks he should put the kitten in a special cage for carrying cats.
(準2級 2010年度 第3回 No.25)

 animal hospital / scratch / make a lot of noise / a special cage などが書き取れればよい。書き取った語句を生徒に答えさせ、それを板書していけば、ペット関連の語彙リストが出来上がる。これらの発音を練習して、次の問題を与えてみよう。

Do you think more people will have pets in the future? Why? / Why not?
(準2級 2009年度 第2回 二次試験 カードB)

 書き取ったフレーズを利用して、次のように答えることができる。

No. Some pets can cause trouble. For example, cats scratch the carpet. / dogs can make a lot of noise.

 Yes の場合の答えは、既存の知識を総動員して、例えば次のように言えるだろう。

Yes. Many people think that pets are important members of the family. Pets make our life happy and comfortable.

 こうすれば、「語彙・文法対策」「リスニング対策」という出題形式ごとの学習の味気なさから解放される。語彙学習を組み込みつつ「興味・関心のあることについて自分の考えを述べる」(「英検Can-doリスト」準2級より)ことを目指した指導ができるのではないだろうか。

(STEP英語情報 2012年1・2月号より)


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高田 智子  (たかだ・ともこ) 

明海大学 外国語学部 准教授。お茶の水女子大学卒業。ボストン大学M.Ed., ニューヨーク大学Ph.D. 取得。東京都の私立中高に勤務後、2008年より明海大学准教授。
著書にTeaching English to the World(Lawrence Erlbaum Associates)(共著)、『新版英語科教育法』(学文社)(共著)など。

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