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英検TOP > 英語教育サポート情報 > 安河内哲也の英語指導法強化塾 > 第5回 リスニングと発音の指導

安河内哲也の英語指導法強化塾

第5回 リスニングと発音の指導

 皆様、お元気でお過ごしでしょうか。この連載の内容が少しでも教室での指導にお役に立てていれば、大変うれしく思います。

 さて、今回はリスニングや発音の教え方に関して、私の経験や、試してみてうまくいった具体的な方法をお話したいと思います。将来英語でコミュニケーションをするためにも、英検やセンター試験で高得点をおさめるためにも、耳や口を鍛えることは重要です。また、語学の4 技能は密接にリンクしているわけですから、音声面を強化することはほかの技能の強化にも通じます。読解や文法の授業の中にも音声指導を取り入れると、授業にちょっとしたスパイスを加えることもできます。ぜひこれを機会に授業にひと工夫を加えていただき、皆様の授業をさらに魅力的なものにしていただければと思います。


リスニングが苦手な生徒を指導で引き上げろ!

 色々なレベルの生徒がいるので、一概には言えませんが、私の経験上、日本の学校に普通に通ってきた生徒達はリスニングが苦手なことが多いようです。私自身が最近特に感じているのは、耳のいい子とそうでない子の「格差」が大きくなっていることです。これは、家庭環境や早期における英語教育の有無に影響されているものだと思いますが、ここでは、優秀な一部の生徒ではなく、リスニングが苦手で困っている大部分の生徒にフォーカスしてみたいと思います。なぜかと言えば、この分野は、いったんある程度のレベルまでできるようになってしまえば、あとは本人の自助努力の問題となることが多いからです。そこで、苦手な生徒を一定レベルまで持っていくにはどう指導すればよいのかを一緒に考えていきましょう。

精聴の重要性とディクテーションを用いた指導法

 実は私自身はリスニングが大変苦手でした。私が学生時代、受験ではリスニングテストはほとんどありませんでしたから、大学に合格したあとも授業の英語が聞き取れずに苦労しました。周りの帰国子女の友人達にアドバイスを求めても、ほとんどが「たくさん聞け」というものでした。そこで、FEN(現在のAFN)をつけっぱなしにして生活していましたが、結局雑音は雑音のままで、TOEFLテストの点数も少ししか伸びませんでした。

 そこで、日本で勉強を続けて、TOEFLテストで高得点を取っていた友人に相談したところ、「同じものを何度も聞け」というアドバイスをもらいました。そこで、実際に私がやってみた、精聴ディクテーション勉強法が以下の通りです。半年後にはTOEFLテストでもかなりの高得点をおさめる事ができました。以降、昔の私と同様にリスニングで困っている生徒には、この精聴学習法を実践させて、成果を出しています。

精聴学習法

 さて、このプロセスを教室指導に応用する方法を順を追って説明していきます。

1精聴学習では、現在の自分の耳のレベルよりも、レベルの高い素材を使って練習することが大切です。そうすることによって、耳のレベルの引き上げを狙うわけです。ディクテーション学習は、できない箇所を特定して矯正していくことに意味があります。つまり、できないことに意味があるのです。授業で精聴学習をする場合には、生徒が書き取れる率が、平均してだいたい7割くらいのものを選ぶとよいと思います。聞き取れない3割を矯正することによって、リスニング力アップを狙うわけです。また、素材は長くないものを選びましょう。100ワード~200ワードくらいのものでよいと思います。

2生徒に書き取る時間を与えるために、センテンスごとに停止ボタンを押してあげたり、音声編集ソフトを使って、書き取りポーズをあらかじめ加えたりしておくとよいでしょう。また、音声は何度も聞かせてあげます。耳の弱点となっている箇所はたいてい何度聞いてもわからないものです。

3書き取りが終了したら、次にスクリプトと比較し、間違っている部分を修正させます。聞き取れない原因には「知識的要因」と「音声的要因」があります。「知識的要因」とは単純に単語や表現を知らないから聞き取れないということです。「音声的要因」とは、単語や表現は知っているものの音が認識できないということです。特に、この音声的要因については、教師がしっかり解説してあげる必要があるでしょう。例えば、リエゾンや音声の変化が起こる箇所、注意すべき発音やアクセントを持つ単語などです。

photo4赤ペンで修正したスクリプトを見せながら、もう2度ほど音声を聞かせます。自分が聞き取れなかった音と言葉の組み合わせを確認させます。

5次にスクリプトを見ずに2度ほど音声を聞かせます。耳だけで理解する訓練です。

6もちろん、耳と口は同時に伸ばしていくものですから、音声を模写して音読をさせます。リスニングが苦手な生徒にシャドーイングは難しいでしょうから、音声編集ソフトでリピーティングポーズを入れたものを準備しておくと便利です。

7このあともしつこくこの英文を繰り返し練習することを勧めます。私自身は、生徒達のオーディオプレイヤーに「耳タコ」という名前のプレイリストを作らせて、学習した素材を終了したものから、「ひとつずつ」そこに入れさせます。そして、通学中などに、リピートモードで、文字通り耳がタコになるまでその音声を聞くように指導します。また、時には、洋楽のヒット曲の歌詞で勉強し、それをこの耳タコプレイリストの中に混ぜていくこともすすめています。

 リスニング力は宣伝広告で歌われているように「あっという間に」身につくものでは決してありません。だからこそ、このような指導も数か月というスパンで粘り強く続けていくことが大切です。1週間や2週間で簡単に成果が出るものではないのだと、最初に大きく構えておくことが、指導者の側でも生徒の側でも大切なことです。

発音指導は自らも学ぶつもりで!

 英語を正しく発音する力と、英語を正確に聞き取る力は連動しています。そこで、私たちは、生徒が正しく英語を発音する力を伸ばしてあげる必要もあります。もちろん、発音の勉強に関しては、ネイティブ音声を何度も模写することが基本です。しかし、幼児とは違い、中学生以上になってくると、なかなか同じ音が出せないものです。そこで、私たち教師が、舌や歯や唇の形、発声法を具体的に教えてあげる必要が出てきます。

 多くの生徒達は、英語の綴(つづ)りを日本語のカタカナにむりやりあてはめて発音する傾向があります。また、普段から英単語を覚える際にも、カタカナ読みで覚えている生徒も多いです。まず、これをやめさせる必要があります。

 そもそも、英語の綴り字と発音は完全に一致していませんし、カタカナでは英語の音を表記することはできません。そこで、便利になってくるのが、英語を書き表すことができる唯一の表音文字ともいえる発音記号です。例えば、Catholicという英単語の発音は、カタカナではどうしても表すことはできませんが、発音記号で[kæ'θlik]とすれば、thの発音も、曖昧(あいまい)母音も正確に書き知ることができるわけです。

 生徒達には、普段の学習で、この発音記号を活用するよう促す必要があります。そのためには、まず私たち自身が記号と正しい発音の仕方を学ぶ必要があります。以下の2冊のDVD付きの本は教室での指導に大変役に立ちますので、本棚にそろえておくとよいと思います。

巽一朗 著『英語の発音がよくなる本』(中経出版)
鷲見由理 著『英語の発音が正しくなる本』(ナツメ社)

 時には、特別講義と称して、発音記号や読み方をざーっと紹介するような講義もよいかと思います。しかし、一度にすべてを網羅するように勉強してもなかなかできるようになるものではありません。ですから、普段の授業のイントロダクションの部分で、その日のテーマを、例えば「thの発音[θ][ð]」のように決めて、5分くらい発音の練習をさせてから、その日の講義に入るなど、授業のスパイスとして発音記号の練習を組み込むのがよいでしょう。

独習には最新のメディアを利用させよう!

 言うまでもなく、言語の学習においては、手と耳と目と口をすべて同時に使いながら勉強を進めることが有効です。その点においては、PCによるマルチメディア学習は今後ますます重要度を増していくだろうと考えられます。現時点でも様々なソフトウェアが開発、市販されており、これらのソフトウェアを生徒の個別練習用として使用させるのもよいでしょう。特にリスニングの練習に関しては有効です。今までは、ディクテーション学習をする際には、CD、CDプレイヤー、ノート、鉛筆、ペン、スクリプトをそろえて始める必要があったわけですが、パソコンソフトを使えば、ワンクリックで簡単にディクテーション学習ができるようになりました。また、英文をリピートし、正しく発音できているかどうかをチェックしてくれたり、映画で楽しく勉強できたりするソフトウェアも市販されています。生徒達の独学用にそのようなソフトウェアの利用を促すのも一案です。

リスニング力の向上に役立つPCソフトウェア

「えいご漬け」シリーズ(Plato)
ストレスフリーでキーボードを打ちながら、ディクテーション学習ができます。様々な種類のものが出ているのでレベルに応じて選択させましょう。

ロゼッタストーン
ゲーム感覚で、目、耳、手、口を使って勉強できます。学校文法と併行してさせると効果は大きいです。

超字幕シリーズ
中高生にとってはかなり難しいので、超ハイレベルの生徒用に。前編穴埋めディクテーションをしながら、英語を聞く「超連続リスニング」という機能を使えば、注意してセリフを聞く訓練ができます。

多聴の素材はレベルを落として

 ここまでは、リスニングや発音を「しっかりと」学ぶ精聴学習について述べてきましたが、もちろん併行して「多聴学習」により、英語への慣れをつくることも大切です。しかしながら、精聴学習と同じような素材を多聴学習で使用しても、ただ聞き流すだけになってしまい、「慣れる」以上の効果は期待できません。私が多聴学習におすすめする素材は、生徒の現在の実力よりも、2段階ほど低く、内容が面白いものです。例えば、英検準2級レベルの生徒を指導するとするならば、英検4級~3級程度のレベルの素材を用います。内容は物語風のものを使用することをお勧めします。

 授業内での利用法としては、私自身は、生徒が単語で引っかかって楽しめないことを避けるために、先に素材の中で出てくる重要単語やストーリーのヒントを、あらかじめ黒板やプリントなどを使って生徒にフィードしておきます。そして、そのあとに音声を流し、耳だけで楽しませます。最後にスクリプトを見ながら、音声に合わせて楽しませます。その英文に関しては、あくまでも聞き捨ての多聴用なので、それ以上単語を覚えさせたり説明したりすることはしません。これも、授業中の5~10分くらいで、簡単に挟み込めるアクティビティです。

 また、普段から、ネット上にある英語音声の動画をサーフし、生徒にも理解できる程度の興味深い動画を見つけたら、そのURLやサーチ方法を授業で紹介するなどするとよいでしょう。英語のサイトをサーフしてその動画を探すだけでも多読の機会につながります。また、海外のサイトに触れることが外の世界の出来事に興味を持つきっかけになるかもしれません。

苦手意識をとり除いて英語好きにさせよう!

 リスニングや発音の指導はつかみどころがないために、生徒の自助努力に任されてしまうことが多いですが、私たち教師がうまくガイドしてあげることにより、苦手な生徒を助けてあげることは可能だと思います。また、リスニングや発音がコンプレックスになっている生徒も、英語を楽しめるようになると思います。ぜひ、教室でもどんどん音声を取り入れた指導を実践していただき、英語好きの生徒を増やしていただければと思います。

 

(STEP英語情報 2012年1・2月号より)


安河内 哲也(やすこうち・てつや) 

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上智大学外国語学部英語学科卒業。東進ハイスクール講師として、英語が苦手な多くの受験生を難関大学への合格に導いている。また近年は、様々な企業の英語研修も手がけ、社会人の短期間での英語力アップのための指導を行っている。自身も英語の勉強を続け、英検1級、国連英検特A級、通訳案内士など、英語の様々な資格を持つ。
著書は語学書・学習参考書を中心に100冊を超える。主な著書に『できる人の勉強法』(中経出版)、『ゼロからスタート英文法』(Jリサーチ)、『大学受験 受かる人の「勉強法」作戦』(東京書籍)などがある。

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