「思考を意識した活動への移行と、小学校教員の特性を生かした活動の推進」
佐世保市立小佐世保小学校
長崎県佐世保市立小佐世保小学校は、平成18・19年度、市教育委員会から小学校英語活動の実践研究の委託を受け研究を進めてきた。平成19・20年度には文化科学省から拠点校に指定され、効果的な指導方法などについて研究を続け「小佐世保スタイル」の英語活動が構築されつつある。
他教科と連動させた「総合単元学習」で意欲を高める

鳩山正彦 教諭佐世保市の小学校外国語活動の目標は、外国語活動を通して子どもたちにたくさんの異文化理解の体験をさせるなかで、コミュニケーションを図る楽しさを体験させ、併せて子どもたちの耳や心に英語を残していくことである。この目標を達成するために市は、小学校外国語活動でどういうことができるか、市内5小学校に実践研究を委託した。重点を置いた研究課題は、スキル中心の英語活動から子どもたちの心情や思考を意識した活動への移行と、小学校の教員だからこそできる英語活動の推進である。各校は、市の方針にしたがって1単位時間の活動を見直し、楽しく活動しながら子どもたちが何かを発見する活動、動と静の区別を明確にし、1時間ごとに振り返りの時間を必ず持つ活動などに取り組んできた。
5校のうちの1つ、小佐世保小学校の英語活動の特色は、他教科・領域と連動させ、異文化理解、コミュニケーション能力向上までを視野に入れた「総合単元学習」と、学習課題を明確に定めた「プロジェクト型授業」の導入である。
6年生の担任で研究主任の鳩山正彦教諭は「不安だらけで英語活動を開始しましたが、研修に教職員が積極的に参加したこと、職員模擬授業を積極的に行う姿勢があることが当校のいちばん自慢できるところ」と胸を張った。
恥ずかしさを消し去った「観光案内」体験
小佐世保小の平成20年度の英語活動時間は、3年生以上が年間35時間、1・2年生が9時間である。1・2年生は、毎週水曜日の朝15分間をフレンドリータイム(英語活動の時間)として位置づけ、日常の挨拶、動物、果物、野菜などの英語名に触れさせている。全学年を通して、「覚えようね」などという指導はせず、誤りを細かく訂正することもしない。間違いを恐れさせない学習環境作りに励んでいる。
指導形態は、学級担任の特性を生かした指導が基本である。その好例が、社会、算数、国語などの他教科や道徳、特活との関連を意識した指導、「総合単元学習」である。
鳩山先生が指導した総合単元学習「心は世界を結ぶ」は、総合的な学習時間の「W elove -ko-SASEBO」と、ハウステンボスで外国人観光客にインタビューする英語活動「ようこそ佐世保へ」を連動させたものだ。
子どもたちはまず、佐世保の自然、歴史、文化、観光、現在の5つの視点で調査学習をし、独自の「佐世保検定試験」を作成した。そして話し合いのなかから、「お客さんがたくさん来て、楽しんでくれる町に」という意見が「ようこそ佐世保へ」に直結していく。
「ようこそ佐世保へ」
「ようこそその1」で、ハウステンボスの接客のプロから挨拶の仕方やコミュニケーションの取り方などの講習を受けた子どもたちは3〜4人のグループに分かれ、佐世保紹介パンフレットを手作りで完成させた。「その2」では、英語でどんな表現が必要かを子どもたちは考えた。「どこから来たの?」は習っているが、いきなりでは失礼だ。自己紹介も必要だしお礼の言葉も必要だ。担任とともに考え、ALTの先生に表現を聞き、発音を習った。その時ALTが「外国の人は、あなたたちを日本の代表と思って話を聞くわ」と言った言葉が、子どもたちの意欲を大いに高めた。高学年になるにしたがって問題になってくる「発話することに対する抵抗」が、この活動を行った後、劇的に変化するほどの教育成果をもたらしたという。子どもたちから英語を使う恥ずかしさを消し去ったのである。
学習課題を意識させ、学びにつなげる活動をめざす

栗林俊明 副主幹小佐世保小の英語活動のもう一つの特色は、高学年の子どもたちを主な対象にした、学習課題を持たせた「プロジェクト型授業」の導入である。鳩山先生の「心は世界を結ぶ」活動も、「外国からの観光客に歓迎の気持ちを伝え、佐世保の良さを発信し、友好の輪を広げる」という最終的な学習課題を意識した活動になっている。鳩山先生は「海外からの観光客を誘致する、佐世保市が真剣に取り組もうとしている事業に、自分たちも役立ったということが、子どもたちを喜ばせました。子どもたちが考えて、納得して、新しい発見ができるような学びのアイデアを出し合って、活動を進めていきたい」と話す。
市としての今後の課題は、英語ノートの有効活用法の検討と、英語活動を全市の小学校46校へ浸透させていくことである。実践研究を推進してきた5校の実績と成果を、各校にどう発信し、全市に外国語活動を根づかせていくか。その最初の一歩として、20年度から新たな小学校に研究を委託し、さらに踏み込んだ活動を実践してもらいながら、どのような支援が必要かを探っていくことになっている。
佐世保市教育委員会学校教育課の栗林俊明副主幹は、「先生方には、英語活動そのものを目的とするのではなく、活動を通して子どもたちに何を学ばせ、何を育てるのかを大切に指導してほしい、とお願いしています。楽しい英語活動を行うと同時に、にぎやかな活動のなかで子どもたちが何気なくつぶやく創造性ある言葉を汲みとって指導に生かす先生が育っている、と感じています。外国語活動の本格的な実施を前にして、活動を「楽しかった時間」だけで終わらせず学びにつなげる活動へ高めるために、指導法や指導形態の研修をこれまで以上に深めていきたい」と決意を語ってくれた。
「子どもたちが新しい発見をするように」
佐世保市立小佐世保小学校
吉田 幸典 校長
研究校や拠点校の指定を受けて、カリキュラムも1年生から6年生までのものを作り、国際理解やコミュニケーション能力育成に力を注いだ英語活動を実践してきました。低学年には英語活動を実施できなくなるのではという危惧がありますが、1・2年生にはフレンドリータイムの15分で引き続き英語に親しませたいし、3・4年生には国際理解教育を推進するための英語、といった横断的なタスクを立てて英語活動を続けたいと考えています。活動ごとに子どもたちが何かに気づき、もっと聞きたい、話したい、と思えるような英語活動を進められればいいなと願っています。
英語ノートを巧みに活用した授業
自分のなりたい職業を英語で言うと......。見学したのは6年生の授業で、クラスサイズは23人。“I want to be〜.”と“What do you want to be〜?”を使って、将来なりたい職業を言い、友達が何になりたいのかを聞き取る授業である。力点を置いているのは、その職業になりたいと夢見る理由を述べさせること。英語ノートの指導法の活用だ。子どもたちの手元には、さまざまな職業の絵が書かれた紙が配られている。子どもたちは、「野球選手になりたい。甲子園でプレーしたいから」とか、「科学者になりたい。火山の勉強をしたいから」と話す友達の英語を聞き取り、その絵に発言者の名前を書く。配られた紙がビンゴゲームになっていて、絵の配置が一人ひとり違うところが、担任金丸直樹先生の苦労の結晶だ。授業の最初に野口英世博士の簡単な履歴と、なぜ彼が医者をめざしたのかを紹介し、子どもたちが描く将来の夢の「なぜ」の部分を刺激する。地球儀を持ち出し、博士が医者として活躍した地域を教えるなど、社会科との連動も図られていた。
佐世保市教育委員会〒857-8585 長崎県佐世保市八幡町1-10 TEL:0956-24-1111
佐世保市立小佐世保小学校〒857-0813 長崎県佐世保市小佐世保町18-1 TEL:0956-23-9305


















