「小中一貫英語教育の実績を繋ぐ」
北海道三笠市立岡山小学校・萱野中学校
北海道三笠市は平成16年12月、道内では唯一「小中一貫教育特区」として認定を受け、17年4月から「国際科(OK! ENGLISH!)」などを柱に、岡山小学校と萱野中学校との一貫教育を実施してきた。20年の制度改正後も、小学校からの英語教育を実践。その成果を中学校へと引き継いでいる。
慣れ親しませながら「中学校英語」へ滑らかに移行
岡山小学校と萱野中学校が設置されている地域は、山と山に囲まれた三笠市の中でも国道にいちばん近く、西の玄関口にあたる。人口が減少傾向にある三笠市はこの地域を振興区域とし、大規模なショッピングセンターの設置、市営住宅団地の造成、「道の駅」の設置などを施策した。そしてソフト面の整備、とくに学校教育環境を整える方策として導入されたのが、小学校の英語活動を目玉とした小中一貫教育である。
岡山小学校の児童数は40人。小中一貫教育校であることから単式学級で行っている。平成21年度の英語時間数は全学年、年35時間。制度改正により特区認定が解かれたあとも、教育課程特例校として1年次からの英語教育を継続し、音声学習と、音楽を使った体を動かしながらの授業で英語に慣れ親しむことを目的としながら、「中学校英語」への滑らかな移行を図っている。授業はALT主導、担任とのティームティーチングで進められる。ALTは週3日岡山小にいて、そのほかの日は、市内全小学校の英語活動に参加する。各小学校で総合的な学習の時間で行われている英語活動は年間20時間程度になる。
岡山小でのアンケートによると、9割以上の子どもたちが「英語の活動を楽しい」と答えている。子どもたちの英語活動に対する思いを中学校でどう受けとめていくかが、小中一貫教育の成否を握っている。今年4月に萱野中学校に着任した英語科の竹内朋恵教諭は、「とくに音と文字の一致について考えます。小学校では聞く・話す活動が中心ですが、中学校では文字が加わります。英語を読む・書くことを子どもたちのモチベーションを維持させたままどう指導するか、難しいですね」と悩ましげだ。
中学生が母校の小学生に英語の楽しさを教える

竹内朋恵 教諭萱野中は、全学年1クラスで、1年8人、2年12人、3年10人、総数30人の中学校である。今年の新入生に接して、竹内先生は驚きの連続だった。最初の授業で全員が英語を使った簡単な自己紹介ができた、言葉をよく知っている、文字指導をしていない5月初旬の段階で大文字も小文字も書けた、英語を話すことに気後れしないなど…。「だからといっていきなり難しいことを指導したりはしません。音として入っていることを体験を通して定着させながら、文字や文法で整理することが中学校の役目だと思っています。小学校の先生方にいちばん感謝したいのは、英語が得意、英語が楽しいと思って中学へ進学してくる子どもに育ててくれたことです」と話す。
中学校は、以前は絵カードをあまり使わず、文字によるフラッシュカードを使用していた。絵と文字を結びつけて学習し効果をあげている小学校の英語活動を取り入れたことにより、生徒たちが違和感なく中学校英語に取り組んでいるところにも、小中一貫の効果が現れている。
竹内先生は前任校で、留学生を学校に呼び生徒たちと交流させて、「英語を使う」機会を設けた。英語を勉強してきてよかった、英語を勉強することには意味があるんだ、と生徒たちに思ってもらうための工夫である。
また、4月に入学予定の小学6年生を中学校に招き、中学校で身につけた英語を使って後輩の子どもたちに楽しんでもらうための英語活動を、3年間続けてきた。「生徒たちは、一生懸命準備をしてくれました。なんとか楽しませたい、という気持ちが小学生たちに伝わり、このまま英語を勉強していけば、お兄さん、お姉さんのようになれる、と思ってくれたのではないでしょうか」と目を輝かせた。こうした活動を萱野中でも実践したい、と竹内先生は考えている。
全市的な小中一貫教育を推進
三笠市には現在小学校が5校、中学校が3校あるが、平成23年に、岡山小と萱野中は小中一貫で基本的に残す方向だがそれ以外の学校を統合する。その際全市で小中一貫教育を推進していく方針を立てており、岡山小のカリキュラムを有効に活用できるように組織的な検討をしているため、移行期間中は岡山小以外、英語授業については総合学習の中で行うことにしている。
竹内先生は、「全市に小中一貫教育が広がってほしい。中学校の英語教師の責務として、小学校英語との接続を、小学校の先生と一緒に考えたい。小学校の授業を見学する機会や、小学校の先生に中学の授業を見ていただく機会も準備したい」と訴えた。
「つまずきの原因を発見する大切さ」
三笠市立萱野中学校
川合 正春 校長
着任して3年目になりますが、小学校で英語を学んできた時間に比例するように、新入生のレベルが毎年上がっているのが分かります。小学校英語で注意してほしいのは、知識とか能力を追究するのではなく、自然に耳から聞こえてくる英語を、シャワーのように浴びる環境を整えるということです。教科を問わず、授業が高度になれば、生徒たちはどこかでつまずきます。小中一貫教育の優れた点は、つまずきの原因がどこにあるのか、小学校段階までさかのぼって発見できることです。この大切さを、中学校の先生に知ってほしいと思います。
「岡山小のモデルを参考に指導法を研究」
三笠市教育委員会学校教育課学校教育係
音羽 英明 主任主事
特区認定が解除されて以降も、小学校1年次からの英語活動を含めた小中一貫教育を継続するのは、完成年度までの9年間の経過が達成されていないこと、発足当初に計画していた平成22年度に一定の検証をという計画が実施されていないことなど、今の段階でやめるわけにはいかないからです。平成23年度に小学校も中学校も合併しますが、それを機会に、新学習指導要領との整合性を確保しながら、主要5教科に配慮したカリキュラムを作り、小学校1年生から35時間(1年生は34時間)の英語活動を含めた全市的な小中一貫教育を実施する予定です。市の教育研究所で大きな課題となっているのが「小学校の英語指導の進め方」で、岡山小のモデルを参考にしながら指導法の研究を重ねています。
発音と連動させた中1生の文字指導
授業の初めは正確な発音から見学したのは中学1年の授業でクラスサイズは8人。小学校で4年間一緒に学んできた子どもたちばかりなので、互いに助け合う姿が随所に見られた。授業は、I am~.You are~.などのbe動詞が出てくる時間だった。~の後に、国の名前や職業名を入れた表現を付け加えたところに先生の工夫がある。教科書では~のあとに人の名前しか出てこない。
まず、職業が理解できる絵と、アルファベットが書かれたカードで、正確な発音を覚える。その後、「正確な発音をして」からカードを取るゲームが始まった。易しい発音のものからカードが取られていき、photographerとかdentistのような難しいものが残る。易しい発音の単語は小学校でしっかり覚えて自信があるだけに、難しい単語を発音するのにはためらいがあるようだ。
一方astronautなどを早い段階で選ぶ子どももいる。そんなとき先生は、「よく覚えていたね」と必ず褒める。恥ずかしがって答えられない子どもを励ましたり、正確な発音をALTが繰り返していねいに教えたりするのも授業のポイントだ。さまざまな職業の正確な発音を覚えたあと、それぞれが持っている職業カードに対応して、Iam ~. Your are ~. と、Are you ~?、Yes, I am. / No, I am not.の表現を繰り返す。
授業はその日でちょうど10時間目であり、最後に、発音を聞いて文字を書く指導が始められた。音が分かっていても正しい文字が書けるとは限らない。最初の文字をsingerはc、soccerはsaと書いてしまう子どもが多く、このあたりが今後の課題となるのだろう。
三笠市立岡山小学校〒068-2165 北海道三笠市岡山60-2 TEL : 01267-2-2314
三笠市立萱野中学校〒068-2166 北海道三笠市萱野192-1 TEL : 01267-2-2308
三笠市教育委員会学校教育課〒068-2193 北海道三笠市若草町404 TEL : 01267-2-2197


















