「中学校区を中心とした小中連携の英語教育」
千葉県南房総市立岩井小学校
千葉県は平成14年度から、小・中・高が連携した英語教育を推進する事業「チバ・インターナショナル・エデュケーション・プラン」(CIEP)を成田地区の中学校区を中心に進めてきた。16年度からは他地域への拡大を図り、成田地区の成果を超えた英語教育の展開をめざしている。
ネイティブスピーカーによる英語による研修
千葉県は、CIEP策定当初から、一部の地域だけの小学校英語活動ではなく、全県的な広がりを持った活動にする方針を立てていた。そのため文部科学省の事業とは別に、CIEPの一環として県独自の英語活動による地域研究指定「Gateway to English Language」(GEL)を策定した。
GELは、中学校区ごとに、小・中学校の連携をめざした英語教育を推進する事業である。活動内容、使用する教材、授業の進め方などは各地区に任されているが、最終的には、担任独自で指導できる活動内容という形態を目標にしている。県は、市町村と連携してALTの配置、研修の実施など、さまざまな支援を行ってきた。とくに力を注いだのが「小学校英語活動実践講座」による先生たちの研修である。
実践講座は、各小学校で、中心となって英語活動を推進している先生を毎年各校1人(合計約670人)を受講対象者とし、県内5つの教育事務所単位で研修を行う。実施時期は、夏季休業中の3日間(平成21年度は4日間に拡充)をあてる。受講者は、1グループ20人単位で指導を受ける。他県と大きく異なるのは、講師はすべてネイティブスピーカー、指導はすべて英語で行われることだ。
研修内容は、教室で担任がALTとやりとりするときに使う英語表現、活動に役立つ英語表現、基本的な日常会話とその指導方法、子どもたちの褒め方などである。昨年度からは「英語ノート」や付属CDの使い方も加わった。どんな使い方ができるのか、困難なことは何か、などを話し合いながら実践講座は進められた。教育事務所の指導主事が補助するとはいえ、英語だけで大丈夫か、という声もあったし、無謀だとの指摘も受けた。しかし先生たちは、子どもたちのために逃げずにがんばった。教師自身が日本語の助けのないコミュニケーションのもどかしさを体験したのである。
実践講座を受講した先生は各校に帰り、自分が戸惑ったり、てこずったりした経験を生かして、同僚の先生に対して研修を行った。
中学校の英語教諭が週1回小学校へ
南房総市の富山中学校区は、県南部の代表として平成19年度にGELの研究指定を受け、21年度はその最終年にあたる。富山中学校、岩井小学校、平群小学校からなるこの中学校区では、中学校の英語担当教諭は兼務命令で週1回、2つの小学校の高学年の授業に参加することになっている。中学校の先生に、小学校の英語活動を体験して、小学校の先生から学ぶことが多いことを知ってもらいたい、というねらいがある。子どもがほんの少しだけ示した反応を察知して活動内容を変える、などの指導力や、英語の専門ではない小学校の先生が一生懸命英語に取り組んでいるところを見てほしい、という願いも込められている。中学校の先生は、英語活動・英語学習をどう進めれば効果的な小中連携が可能か、さまざまな配慮をしながら授業に臨むことになる。
今回授業を公開した岩井小学校は児童数149人。単学級であることや、子どもたちは小さいころから互いに顔見知り、といった事情から、言葉を介さなくても相手の気持ちが分かってしまい、自分の気持ちを言葉にして伝えることがあまり得意ではない。そのためふだんから人間関係づくりを心がけてきたが、GELの研究指定を受けたことをよい機会ととらえ、人とかかわりがある楽しい英語活動の進め方を先生たちは模索してきた。
先生全員で盛り上げる英語活動

亀田陽子 教諭4年生を担任する亀田陽子教諭は、「友達と一緒に活動して楽しかった、英語が使えてうれしかった、と子どもたちに思ってもらえるような体験活動を取り入れています。学級経営や子どもたち同士の仲間関係にもよい効果が出ています。こんな英語教育を私も子どものころ受けたかった、と思えるような授業にしたい」とほほえむ。
活動時間は年間35時間。1・2年生は英語活動として20分授業を週2回、3・4年生は国際理解活動として45分間の授業を週1回、5・6年生は外国語活動として週1回、45分間の授業を行う。1単元を基本的に3時間扱い、「触れる」「慣れる」「使う・楽しむ」を指導目標にして、すべての単元が人とかかわり、異文化体験ができる活動としている。
英語を「使う・楽しむ」体験活動授業時間以外にも、毎朝ALTによる校内放送がある。挨拶やその日の天気、日にちなど、簡単な英語が子どもたちの耳に入る。ALTには体育などの授業にも参加してもらったり、給食も一緒、休み時間も子どもたちと一緒に遊んでもらうなど、ALTを「フル活用」して英語に親しませる機会を設けている。また、音楽の先生が、年間の英語の「今月の歌」を計画し、毎朝どのクラスも英語の歌を歌う。イングリッシュルームや、各教室や廊下にも、英語に親しめる展示物が張ってある。小学校英語活動を、1人の優れた先生に任せるのではなく、先生たち全員で盛り上げていってほしい、という県教育委員会の方針を、しっかりと受けとめている様子がうかがえた。
校長先生の「本気度」がカギを握る
千葉県教育庁 教育振興部指導課
向後 秀明 指導主事
GEL事業は、成田の成果をもとに、県内すべての小学校が中学校と連携した英語活動が展開できるように策定されたものです。県内の全小学校が、成田の成功した部分を引き継ぎ、それにプラスアルファーをすることにより、成田を超える英語活動に発展させる可能性を持っています。幅広く指定地域を作った結果、ごく普通の中学校区で一定の成果を上げてきましたが、一部の優れた先生の成果ではなく、中学校・小学校の先生がチームとして築き上げた実証例です。こうした活動を積み重ね、一つの学校、一つのクラスだけの特別な英語活動ではなく、県全体に広がる活動をめざしたいですね。
小学校の外国語(英語)活動が成功するカギは、校長先生や教育委員会のやる気だと思います。とくに校長先生の「本気度」が大切です。校長先生が、強力なリーダーシップで自校の先生方を引っ張っていくと、市町村の教育委員会が動き、県の教育委員会も必ずバックアップするはずです。
担任主導を生かすさまざまな授業
元気いっぱい! 体育館を使った3年生の授業公開された授業は、ALTと担任による授業(1年生、クラスサイズは22人)、音声機器を活用して担任が1人で行う授業(3年生、同33人)、担任とゲストティーチャー(英語に堪能な地域人材)が行う授業(4年生、同26人)の3パターン。
1年生の授業では1から12までの数を聞き取り、発話する。数が順番どおりだと聞き取れ、発話できるが、バラバラにされると怪しくなってしまう。「How manyゲーム」では、ALTがたとえば“I want some chocolates.”と言い、子どもたち全員で“How many?”と聞き返す。“Iwant two~.”に応えて、指定された品物を取り出すのだが、探すのに夢中で肝心の「数」を忘れてしまう。そのたびに先生が「How many?って聞いてからね」と助言する。入学してまだ2か月足らずの子どもたちが、自分の英語を聞いてもらうためにわれ先にとALTを囲む姿が印象的だった。
3年生の授業は体育館で行われた。担任単独の授業は、デジタル音声機器などの教育機器を効果的に使うべし、という提案をされたような授業だった。形あてゲームをしたのだが、“What shape is it?”と子どもたちが先生に全員で質問する。先生は、“It’s a ...... ”までを答えてデジタル音声機器をタッチする。子どもたちは音声機器からの正確な発音を繰り返し聞くことになる。シェープカードを体育館にばらまいたり、子どもたちの前から音声機器までダッシュしたり、担任の先生の運動量は、子どもたちをはるかに超えていた。
4年生の、地域人材と組んだ授業は、英語全般、特に発音について、専門的な英語力を持つ地域の人たちがどのような立場でかかわったらよいのか、そのモデル授業として紹介された。
南房総市立岩井小学校〒299-2226 千葉県南房総市市部250 TEL : 0470-57-2038
千葉県教育庁教育振興部指導課〒260-8662 千葉市中央区市場町1-1 TEL : 043-223-4058


















