「高い語学教育を支える4・3・2制と独自の教科編成」
仙台市 聖ウルスラ学院英智小・中学校
学校法人聖ウルスラ学院は、幼稚園から高校まで、「キリスト教的人間観に基づく人格形成の教育」を教育目標として掲げ、私立校ならではの教育を発展させてきた。大きな特色は、小・中学校の4・3・2制による子どもの成長を見据えた教育と、伝統の語学教育をさらに進化させ、小学1年から週2時間実施している英語教育である。
「言語技術」を用いて思考力を育てる
聖ウルスラ学院英智小・中学校の教育課程は、First stage(児童期教育F1~F4=小1~小4)、Second stage(思春期教育S5~S7=小5~中1)、Third stage(前青年期教育T8~T9=中2~中3)である。教科編成は、「価値と規範」(こころを学ぶ)、「人間」(芸術と表現、身体と健康、生き方と読書、触れ合い・対話・交流などを学ぶ)、「言語と国際性」(言葉を学ぶ)、「科学」(社会科学、自然科学、環境・情報・生活を学ぶ)、「数と量」(算数・数学を学ぶ)の5分野に統合編成し、教科の枠を超えた発展的な教育を目指している。
英語は、国語、言語技術とともに「言語と国際性」の分野におかれている。「言語技術」とは、欧米の国語教育で指導される「Language Arts」をモデルとする教育理論と実践(つくば言語技術教育研究所所長三森ゆりか氏)を取り入れた授業で、論理的な思考力に基づいた表現力や読解力を育成する。教科担任制による英語や国語で「言語技術」を援用した授業を行ったところ、子どもたちに筋道を立てて考える力がつき、英語を学ぶうえで非常に関連深いことが分かってきた。同校は、「4・3・2制の小中一貫教育」により政府認定の教育特別区研究開発校に、「言語技術教育」により文部科学省の教育研究開発校になっている。
「楽しかった」を力にして次の授業へ
英語教育は小1~小4までが週2時間(幼稚園年長組も週1時間実施)、5年生からは週3時間となり、中学1年の教科書を使って学習する。このほかにパソコンを使った英語学習の時間が週1回設けられている。
伊藤宣子校長は「創立当初から、英語教育には力を注いできました。小学校で学んだことを、中学、高校へと結びつけるにはどうすれば効果的か検討を重ね、5年前に12年間の教育の流れを再構築しました。その時その時が楽しかったで終わらせず、楽しかった思いが力になって、次の力を築いていく授業にするよう工夫してもらっています」と話す。
英語専科の木村侑香子教諭は、主に1年生から6年生の授業をALTとともに担当している。4年前の着任以来、自費で研究会に参加するなど、全国行脚して児童期の英語教育に関する情報収集をしながら、夢中で子どもたちとかかわってきた。小学校教諭の免許も大学の通信教育で取得した。中学の英語教師が小学生を教えるのは子どもたちのためにならない、と考える伊藤校長の助言と温かい応援が、木村先生を勇気づけた。心がけているのは、子どもたちが上達を実感できる環境を作ること。授業以外に、学校全体で、英語スピーチコンテスト、英語の朗読会、日本語の朗読会などの発表会を日常的に開催することもその一つ。
「子どもたちにはチャレンジ精神があります。発表会では、表現の喜びや、人に訴えることがどういうことかを体で知ります。聴衆がどう聞いているかも体で分かります。ほとんど読めなかった子が、だれよりも上手になったこともありましたよ」と木村先生は飛び切りの笑顔を見せた。
21年度からは、Third stage 8~9年生を高校と直結させ、併設型の一貫教育校となった。大学進学をめざす「18歳の志」のために、受験で欠かせない科目となっている英語を受験対策としての英語教育に結びつけるのみならず、高等教育機関での研究に欠かすことのできない国際語を用いた学問の追求・探求活動に継ぐ教育をするために、と伊藤校長。First stage 3年までは児童英検の受験を奨励し、Second stage 7年修了時までに英検4級合格率85%を、高校卒業までに全員が英検2級取得をめざした対策課外講座も実施している。
becauseの後の言葉を続けられる訓練

木村侑香子 教諭 これからの課題の一つは、自我に目覚め始める高学年への英語指導だ。資料を渡しても、低年齢であればあるほど家で練習するなどして勢いをつけて通学してくる。高学年になっても、低学年の子どもたちに刺激され、英語の力をより以上につけさせたい。発音も、中学生になると、わざとカタカナのように発音する子どもが出てくる。木村先生は子どもたちの様子を見ながら、子どもたちのそんな発音を先取りして、それが通じるかどうかを子どもたちに聞く。「ワクチンを打って、予防するようなもの」と木村先生。
「言語技術」で展開される「絵の分析」を英語でも取り入れたいのも今後の目標である。これは、たとえば病院の病室の絵を子どもたちに見せて、場所がどこかを分析させるテーマでは―病院だ、なぜならベッドがあるから、でも家にだってベッドはある、金属性のキャスターがついているから病院だ、と情報を集め、分析しながら、場所を推測させる訓練である。子どもが泣いている絵を見せて、なぜ泣いているのかを細かく分析する例もある。英語でやれたら、子どもたちが喜びそうだ、と思われた。木村先生は「becauseの後の言葉を続けられる訓練、きちんと考えて相手に伝える訓練を積ませてあげたい。訓練に理由を与えれば、きっと子どもたちは応えてくれる」―先生自身の課題でもある。
最後に、外国語活動を進める公立小学校の先生たちへエールを送ってもらった。
「先生方には、何を教えるか、授業をどう作るか、どんな子どもを育てたいかを見据えた授業力と、豊富な経験があります。きれいな発音は『CD先生』に任せればいいし、電子黒板などを使いこなせばよいと思います。恥ずかしがっている姿を絶対見せないで、自信を持って、英語を通して子どもたちの世界を広げてあげてください」
子どもたちに心の表現力をつけさせたい
聖ウルスラ学院英智小・中学校
伊藤 宣子 校長
優れた教育機関でありたいと願うならば、教師が学び修養しなければなりません。教師が力をつけなければ子どもたちにも力がつかないし、教師が元気にならないと、子どもたちを元気にすることはできません。学校のビジョンは、力のつく元気な学校です。本校には、子どもたちに力をつけられる元気な教師がいます。子どもたちの可能性には驚くべきものがあることを、新しい環境を与えることによって再発見しました。これからも教育のいちばん大事な部分、「育む」ということを教師たちが学び合いながら、子どもたちに心の表現力をつける、という私たちの願いを実現していきたいと考えています。
描写力を養う第一歩
見学したのはFirst stage 4年生の授業。クラスサイズは22人。木村先生の着任と同時に入学してきた子どもたちのせいか元気いっぱいだ。動詞の語彙(ごい)の幅を広げることと、描写力を養うことが重要ポイントで、子どもたちに新しい動詞を35ほど教えた。take a bath, study English, catch a ballなどの基本的な動詞と絵を組み合わせ、見せ、読ませ、ジェスチャークイズや描写ゲームで子どもたちを引き寄せていく。もちろんこの日に全部覚えさせることが目標ではない。動詞と絵が書かれたプリントを配布することによって、子どもたちがときどきそれを見て思い出したり、いずれ辞書を引くようになることがねらいだ。
関連して、一般の小学校では難しいsadlyなど副詞の概念もさりげなく取り入れる。分からなくなったときに沈黙させたままでなく、相手になんとかして伝えたい、とがんばれるよう子どもたちを応援する姿が印象的だった。ほとんど英語で行われていたが、子どもたちが「?」の表情を浮かべたとき、学ぶべきことを一瞬の日本語で理解させ、英語の世界へ瞬時に戻らせたのは見事だった。
聖ウルスラ学院英智小・中学校
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