「英語コーディネーター」を配置し、活動の基盤を作る
沖縄県南城市立大里北小学校
南城市は、1町3村(佐敷町・知念村・玉城村・大里村)の合併により誕生した新しい市である。合併翌年の平成19年、文部科学省の研究開発校の指定を受け、「小中9年間を見通した英語教育の効果的な指導方法と指導内容についての研究」に取り組んでいる。
合併を機に小・中全校が研究開発校に

武村 美香 教諭 沖縄本島南部の東海岸に位置する南城市には、小学校が9校、中学校が5校設置されている(離島・久高島は小中併置校)。合併前は、知念地区の小学校がALTを村で雇用し、基地内の小学校との交流を図るなどの英語活動を推進していたが、そのほかの地域では目立った動きはなかった。合併を機会に、全市の子どもたちに国際化時代にふさわしいコミュニケーション能力を育ませようとの市長の提案を受け、研究開発校に名乗りを挙げ指定を受けた。
しかし指定1年目当初は、あまり積極的でない学校から批判も出た。そのため市教育委員会がまず取り組んだのは、小学校英語活動への理解を得ることだった。具体的な活動に入る前に市は、「英語活動コーディネーター」を雇用した。コーディネーターは支援先の小学校で、英語活動の特徴や担任の先生の役割などを説明して、先生たちの不安を払拭し、意識を変えていった。この経験が、その後の「研究活動」に役立つことになる。意識改革のための講演会や、夏休みにALTを活用し、中学校の先生にも協力してもらった英会話教室の開催なども、英語活動への意識を高めることになった。現在は小学校1年生が年間15時間、2年生が20時間、3年生以上が35~40時間、「聞くこと」「話すこと」を中心とした英語活動を進めている。
指導体制は、7人のALT(市雇用3人、JETとして4人)と担任によるティームティーチングが基本だが、ここに5人のコーディネーターが参加することが大きな特色だ。コーディネーターは文部科学省からの加配教員で、ふだんはそれぞれの所属校に勤務する。英語活動・英語教育研究開発を進めることが任務で、必ずしも英語にたけているわけではない。英語活動時には、担任とALTとの橋渡し役になり授業の補助にあたる。当初の目的は研究開発だったが、活動初期の段階では、尻込みしがちな担任を子どもたちの前へ出し、活動の主役に導くことが大切な仕事だった。担任の先生は、自分たちと同じ英語力レベルの先生が英語活動に積極的に取り組む姿を見て、次第に自分が活動を主導することの大切さに気づいていった。そしてとくに年配の先生方が、公開授業の担当に手を挙げるなど積極的になっていった。
担任主導の指導体制を着実に確立する

池城路子教諭とカナダ出身のALT 大里北小学校は児童数169人の小規模校である。英語活動日の毎週水曜日には、大里南小学校(児童数727人)に所属するALTとコーディネーターが支援に訪れる。カナダのトロント出身のALTは日本語が堪能だ。池城路子教諭とコーディネーターの武村美香教諭は「打ち合わせにも苦労しないし、子どもたちの前では、日本語を話さないよう気配りしてくれるので助かります」と口をそろえる。
池城先生は平成23年度からの外国語活動必修を前にして「私には絶対できない」と思っていた。ためらいがちに子どもたちに接する池城先生の背中を押したのが、武村先生だった。英語が得意というわけではない武村先生が、懸命に子どもたちに接し、子どもたちを楽しませる姿を見て、不安が消えると同時に闘志がわいてきた。その後は、持前の指導力、子どもたちへの気配りの巧みさを発揮し、身振り手振りを交えて、コミュニケーションの素地を子どもたちに培わせている。
中学校では新しい喜びを与える授業展開を
南城市の研究開発校としての課題は「小中学校9年間を見通した英語教育」である。中学校での取り組みとしては、とくに中学1年次で、小学校で体得した「聞く」・「話す」英語活動の流れを踏まえて、「読む」・「書く」中学校英語になめらかにつなげていき、読むことも、書くことも、子どもたちが喜ぶ指導である。文法中心ではなく、子どもたちに発表させる場を設けるなど、授業に工夫を凝らし始めている。中学校の英語の先生が基地内の学校を訪れ、授業を見学し、指導方法やESL(第二言語としての英語)の進行法を学んだり、掲示物をどう活用しているのか探究もした。

又吉直正 指導主事 中学校英語教員だった南城市教育委員会の又吉直正指導主事は「中学校には教科書と指導書があります。新しい単元に入ると、単語・文法・リーディングが終わって、時間があればコミュニケーション活動といった流れで、テストを意識した授業になりがちです」と指摘する。「難しいのは、どこでどのようにして読む切り口、書く切り口を入れていくかですが、小学校の活動をヒントにして、言えたことはこう書くのだ、聞こえた言葉はこう書くのだ、という新しい喜びを子どもたちに与え、喜びを維持していけるような授業展開にしてほしい」と教育委員会の願いを話す。
子どもたちが生き生きと次の活動を続けられるよう、褒める場面を多くするように努めたこともあって、英語活動には不登校気味の子どもも参加するなど、子どもたちの反応は年度を追うごとによくなってきた。
市内全小学校の6年生全員に挑戦させている児童英検BRONZEも平均点が84点。活動内容にも自信を持つことができた。研究開発校を外れても、先生たちの英語活動に対する意識をさらに高揚させ、子どもたちにも英語が好きになり、興味を持ち続けられる学習を続けさせたいと願う市は、行政ができること、現場ができることを整理し、小中全校が混乱なく平成23年度を迎えられる準備に余念がない。
「子どもたちと一緒に勉強するつもりで」
南城市立大里北小学校
座嘉比 幸枝 校長
中1時代、英語を専門の先生に習わなかったので、2年になって専門の先生の発音に戸惑った経験があります。
一昨年まで宮古島の中学校に勤務しており、小学校は初めての体験です。小学校の英語活動を初めて見て、子どもたちの楽しそうな姿が印象的でした。今年も英語活動の経験がない先生が2人着任しましたが、前任の先生にリードしてもらいながら、いずれは先生が主導するのが目標ですよ、発音に自信がなくても子どもたちと一緒に勉強するつもりで、と励ましています。子どもたちが英語活動に慣れているので先生を助ける場面もあります。さまざまな経験を重ねながら、CDの使い方が上手になり、ALTを効果的に活用するなど、先生方は自信を深めています。
活動の目当てを子どもたちに気づかせる
見ている子どもたちも好奇心いっぱいだ 見学したのは1年生の授業でクラスサイズは32人。年間15時間のうち、7時間目の授業である。大型絵本『A Beautiful Butterfly』を使った「いろであそぼう」の授業だが、元気に活動に入れるように、「いろおにゲーム」などアクティビティーに工夫が凝らされていた。
“What color is it?”を担任が発話し、“It's red/green/yellow...”など8つの色をALTが発話して、まず色の発音に慣れ親しませる。毎日の朝の会で、その日の天気などを英語で話す機会を設けているせいか、子どもたちは何とか英語を話そうと目を輝かす。
特徴的だったのは、子どもたちから当日の活動の目当て、ねらいを引き出していたこと。メーン・アクティビティーがうまくいかなかったときは、一度やめて、子どもたちにどこが悪かったかを確認させる。振り返りの時間でも、楽しかった理由を発言させる。子どもたちは単に楽しかっただけでなく、色を英語で言えたことが楽しかった、「いろおに」で捕まって残念、今度は捕まらない、などと先を争って発言する。それと、友達を褒めたり、認めたりして他者とのかかわりのなかで発言を促していたこと。お友達を助けてあげた人を教えてくれてもいいし、がんばったお友達を誉めてあげてもいいんだよ、との先生の言葉に、子どもたちは元気一杯に手を挙げていた。
南城市立大里北小学校〒901-1201 沖縄県南城市大里嶺井1 TEL:098-945-2362
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