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小学校英語情報

小学校の英語活動

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「言語科」でコミュニケーション能力を育てる

静岡県沼津市立浮島小学校

沼津市は平成18年度に言語教育特区となり、市内26校の小学校で「英語の時間」を実施している。沼津市の特色は、「英語の時間」と「読解の時間」で構成された「言語科」を設け、その両輪で、積極的に人とかかわっていこうとする態度の育成を目標に掲げていることである。

自分で考え、上手に表現できる子どもに

 今の子どもたちは、言葉によるコミュニケーション能力が不足している、言いたいことを上手に伝えられない、友達の表情から、相手がどんな気持ちでいるのかを汲み取れない子どもが増えている―。そこを何とかしなければ、という思いから「言語科」は誕生した。
 まず「読解の時間」だが、国語を学ぶのではなく、正答がある学習でもない。子どもたちにいろいろなテキストや新聞広告などを読ませ、あるいは美術館に飾ってあるような絵を見せ、そこに表現されているものを読み取って、言葉や文章で発信させていく活動である。
 たとえば、「鳥獣戯画」を低学年の子どもたちに見せて、この木の棒を持っている動物はどんな思いで逃げていると思う? 後ろにいる動物は、もし言葉を発しているとしたら、何を話していると思う? などの質問を投げかけ、子どもたちの考えを発表させる。そして友達と意見交換をしながら発想を膨らませたり、自分の意見が変わっていったりする体験をさせる。自分の考えをさまざまな方法で表現できる子ども、異質なものも受け入れることができる子どもを育てたい、というねらいである。
 ほかに、高学年の子どもたちが低学年の子どもたちに読み聞かせをする、地図やグラフに書かれていることを把握させる、友達におすすめの本を紹介する活動もある。1年生から4年生までが15時間、5・6年生20時間が年間の学習時間だ。

小中連携を視野に入れたカリキュラム


玉井 久子 教諭
 一方の輪、「英語の時間」は、1・2年生20時間、3年生30時間、4年生以上が35時間。小中一貫カリキュラムになっていて、小学5・6年生と中学1年生をひと括くくりとし、中学卒業時の英語力を確かなものにすることを目標の一つに掲げている。1・2年生のカリキュラムの題材は、子どもの生活に身近な、果物や野菜、遊びなどで構成されていて、単語を覚えたり会話ができたりすることではなく、身近なものを英語で言うとどんな表現になるのかなど音声に親しませることに重点をおく。3・4年生になると数が入ってくるが、たくさん教え込むのではなく、1~20程度に押さえ、ゲームを通して使ってみる活動が中心になっている。異文化理解を通して、日本に対する理解を深める指導では、たとえばハロウィーンがどんなものかを体験させるだけでなく、すべての地域で行っているわけではないことを教え、日本では同じ季節にどんな行事があるかなど、日本の文化に気づかせることに力を注ぐ。

5・6年生から中学1年生への接続の問題は模索中だ。校区の中学校の先生が小学校の「英語の時間」を参観するようにし始めたのも対策の一つ。中学校の先生からは、「英語の時間を体験して入学した生徒たちは、聞く力が育っている」という感想が寄せられている。

外国の文化はALTから学ぶ


金丸 真人 教諭
 浮島小学校は、4年、6年が1学級でそのほかの学年は2学級。クラスサイズは20人程度から多いクラスで38人の小学校である。研究開発学校でもあり、言語科発足当時4校あった拠点校にもなっていた。

 市が行った最初の研修、拠点校研修では、先生たちが子ども役になって、教育委員会の担当者とALTが展開する英語活動に参加した。また先生たち自身が公開授業を行い研究協議する研修会も実施した。「英語の時間」は担任とALTとのティームティーチングで、浮島小にALTが来るのは木曜日と金曜日。英語教育の推進にあたる玉井久子教諭は、「担任の思いをALTにどう伝えるか、いつも悩みます。担任とALTがアイコンタクトをとりながら、ALTも子どもたちの様子を見ながら授業を進めてくれることが理想です」とALTとの意思疎通の大切さを強調する。英語担当は各校に1人いて、ある程度教員経験があり、校内研修を推進できる人を校長が指名する。必ずしも英語専門の先生とは限らない。

3年1組を担当する金丸真人教諭は、「ALTに祖国の文化を話してもらい、自国の文化と比べながら子どもたちが彼らの国にも興味を持ち、自ら話しかけられる機会を設定するように心掛けています。言葉を通して、いままで知らなかったことを知る楽しさを子どもたちが体験できれば」と話す。

副読本で「英語ノート」との連動を図る

 沼津市は言語科推進委員会を設置している。構成員は小中の教員代表、各部会の校長、教頭、大学教授である。この委員会が中心になって、各小中学校での読解と英語の実践の積み重ねをまとめた「副読本」を作成した。英語ノートも配布されるのに負担が多くなる、との声が平成21年度当初5・6年生の担任を中心に挙がった。そこで「英語の時間」推進部会において英語ノートの活用を組み込んだ年間指導計画を作成し、英語ノートのすべてを使うのではなく、副読本にはない題材を5・6年生各3つ選び、これだけはやろう、と提案している。5年生は「数で遊ぼう」「自己紹介をしよう」「いろいろな衣装を知ろう」、6年生は「友達の誕生日を知ろう」「道案内をしよう」「自分の一日を紹介しよう」がその題材だ。23年度以降の言語科をどうするかは、現在推進委員会で検討中である。

英語を聞きとれる喜びを体験する子どもたち

トランプで数字の英語表現を学ぶ 見学したのは、3年生の授業でクラスサイズは23人。トランプを使って数字の英語表現を伝える授業だが、まず初めに担任が百人一首のカードを使って「坊主めくりゲーム」を紹介。priest(僧)という難しい単語も出てきたが、日本語と英語の発音の違いに気づかせることと、日本人がお正月に楽しむゲームと外国のゲームの違いを知ってもらうことが目的なので、問題はない。続いてオーストラリア人のALTが、「日本にはお正月に楽しむ特別なゲームがあるようだけど、オーストラリアにはそういうゲームはありません。でも、好きなゲームがあります」などと、ゲームのルールを含め、すべて易しい英語で話す。子どもたちは懸命に聞き取ろうとする。


大きな身振りでALTの指導に応える子どもたち 担任は首を傾げる子どもたちを見つけては、“Do you understand?”と話しかける。ALTがゆっくりリピートする。やがて、分からなかった単語が聞き取れるようになった子どもたちの間から、「分かった!」と歓声が上がる。ALTも担任もここまで日本語を使わず、子どもたちを引っ張ってきた腕前はたいしたものだ。
 ゲームのための班づくりが進んでいるとき、それまで繰り返し発話させてきた活動の基本表現、“Do you have a ~?”“Yes, here youare.”“Oh no!”などをALTが板書する。そしてゲーム開始前に黒板の文字を指しながら発声させる。やがてオーストラリアで行われている「Go Fish」というゲームが始まったが、子どもたちはゲームを理解して、友達同士で教えあったりしながら楽しんでいることが見て取れた。

「担任とALTのやりとりは子どもたちの憧れ」

沼津市立浮島小学校
服部 裕美子  校長

 英語の授業を見ていると、言葉を学ぶという以上に、ALTが豊かな表情と表現、身振り手振りを交えて何と か子どもたちに伝えたいという思いが、子どもたちを元気に活動させているように思います。
 ALTと担任のやりとりを見て、子どもたちが、いいなぁ、あんなふうに話せるようになりたいなぁ、と思ってくれればうれしいですね。分からない単語があっても、何とかコミュニケーションを続けようとする子どもたちを見ていると、これからも低学年から英語に触れさせてあげたい、という願いを持っています。

「小学校の先生ならではの視点に拍手」

沼津市教育委員会学校教育課
川口 郁代  指導主事

 言語科を設置した当初は研修に力を注ぎました。「英語の時間」というのは、言葉を使いながら人とかかわる体験をさせるもの、と先生方に知っていただきました。また、挨拶あいさつの基本表現や、班を作りましょう、といったクラスルームイングリッシュ、ALTとの打ち合わせに必要な英語表現などに慣れていただき、授業の組み立て方を助言しました。
小学校の先生は、子どもたちの実態に応じ活動を工夫するのが上手です。コツをつかんでくれると、ALTを有効に活用しながら学校独自の活動を取り入れたりして、小学校の先生ならではの視点で実践してくださっています。

沼津市立浮島小学校〒410-0318 静岡県沼津市平沼811 TEL:055-966-2004

沼津市教育委員会〒410-8610 静岡県沼津市御幸町16-1 TEL:055-934-4809

「英語活動」は「多様性」に寛容になれるか

和田稔(財)日本英語検定協会検定委員長
・明海大学名誉教授
和田 稔
 沼津市立浮島小学校の「英語の時間」の授業を参観し、授業担当者、校長先生、市教育委員会の担当主事からその理念や具体化としての授業についてお聞きしながら、私は「総合的な学習の時間」の枠内での「英語活動」の可能性は何であったのか、をしきりに考えていました。
 沼津市では「言語科」という新しい科を作り、その一部に「英語の時間」を位置づけるというユニークな試みを平成18年度からしてきました。「言語科」は、文章は言うまでもなく、絵、図表など多様な伝達媒体を「解読」し、それについて自分の考えを発信し、他者の意見を積極的に聞くことができるような児童を育てることをねらいとしています。このようなねらいを「英語活動」がどこまで共有できるのかは難しい課題でしょう。とはいえ「総合的な学習の時間」のなかで小学校で「英語活動」が導入された時には、それは豊富な可能性を秘めていました。「言語科」はその可能性を具体化したものでしょう。
  全国的にも「地域や学校に根ざした多様な英語活動」が展開されました。そこに、新しい「学校文化」の可能性を期待する英語教育のオピニオン・リーダーもいました。しかし、結果は英語教育界だけでなく、教育界全体も「多様性」に辛抱できませんでした。
 いま、平成23年度の新学習指導要領の本格実施を控えて、「領域としての英語活動」にシフトする教育委員会や小学校がほとんどです。言うまでもないことですが、「領域としての英語活動」では、目標、授業時数、学年などが「整備」されました。使用教材も文部科学省で用意しました。日本の教育体系上は小学校の英語活動が「統一」を確保したと言えるでしょう。ですが、このような状況のなかでも、「多様性」を完全に払拭することは不可能なことは多くの小学校の英語活動の実践を見れば明らかです。とくに、いままで地域や学校に根ざした実践を試行錯誤しながら積み重ねてきた場合、貴重な実践経験は大事にすべきでしょう。つまり、「統一」に「多様性」を生かさなければ英語活動は硬直してしまうと思われます。しかし、いわゆる「横並び思考」に災いされて「多様性」に寛容になれない傾向が教育界にあることもまた事実です。私はこれからの英語活動を「寛容」という観点から見てゆきたいと思います。