「英語ノート」とICTを活用して必修化に備える
北海道札幌市立山の手南小学校
札幌市では平成23年度からの小学校外国語活動を円滑に進めるため、移行期にあたる2年間、最低10時間の外国語活動を行うよう市内206校の小学校に通達している。山の手南小学校は「英語ノート」とICTの活用を柱に35時間の活動を実践してきた。
外国語活動を全校の課題とした協力体制
山の手南小学校は移行期以前に年間10時間程度、英語活動に取り組んでいた。35時間の外国語活動を選択したのは、この経験による先生たちの自信、保護者の関心・期待の高さ、行政の支援によるところが大きい。
英語活動コーディネーターの先生を選任して、カリキュラムや指導案の作成を担当してもらい、学習会、模擬授業、外国語活動の理論面からの研究会などを実施するなど、外国語活動を5・6年生の担任だけの課題とせず、全校で取り組む協力体制を確立している。
文化交流を低・中学年も学ぶ
活動内容は、5年生が「英語ノート1」、6年生が「英語ノート2」のカリキュラムを基本に、英語ノートの指導書を山の手南小の子どもたちに合うように改良しながら行っている。低・中学年は1・2年生が特別活動「なかよしタイム(英語遊び)」を、3・4年生が総合的な時間で「世界HOT COM.(国際理解)」の授業をそれぞれ年6時間実施している。低・中学年の時間にはゲストティーチャー(地域ボランティア)3人が来校し、それぞれが詳しい外国の文化について紹介したり、先生たちに指導のアイデアなどを提言したりする。いずれの時間も、他国の人と交流する楽しさや難しさを体験させながら、「英語が伝わる喜びを知り、それがきっかけになって世界への目が広がる」という思いを子どもたちの心に芽生えさせることが目標だ。低・中学年の活動は23年度以後も継続する。
6年生担任の千歩(せんぶ)純子先生は、「昨年は2年生を担当していたので、6年生を担当した経験がある先生にコツを教えてもらいながら子どもたちに接しています。時間ごとに、活動のねらいや身につけさせる力は何かを考えながら指導することを心がけています。ALTが来校する時は、ネイティブの発音を聞くチャンスでもあるので、質問タイムを多く取りながら、子どもたちに比較文化的な話を聞かせてあげたいですね」と抱負を語る。ALTは年2回、3日間ずつ来校する。ゲストティーチャーやALTが参加するときは彼らにすべてを任せるのではなく、子どもたちの意欲や関心を引き出す「担任の技術」を前面に出して活動を進める。
学びやすく教えやすい環境を作るICT活用
自発光型の大型ディスプレー、パソコンが設置されたことを機会に、ICT(Informationand Communication Technology)を活用した授業と学校づくりを推進し始めている。授業で頻繁に利用することにしたのは実物投影機。教科書や教材を大きく映し、子どもたちが学びやすく、先生たちは教えやすいのがメリットである。英語教室には電子黒板が設置され、英語ノートのデジタル教材をフル活用できる環境が整えられた。電子黒板はタッチパネルの機能もついているので、子どもたちは楽しく学習でき、先生は子どもたちの表情を見ながら授業の運営に活用している。
先生たちがICTを使いこなしている例を挙げると、子どもたちのノートを美しく、たくさん書かせる指導がある。ノートに書き込みやすい板書を心がけながら先生たちは、上手に書けている子どもたちのノートを実物投影機で紹介し、全員で良いところを共有するなどして、子どもたちの意欲を高める。4年生の総合的な学習では「生活」を窓口として日本と外国の違いや特徴を調べたり比べたりしているが、事前の調査で活躍するのがパソコンである。子どもたちをパソコン操作に慣れさせながら、同時に「調べ学習」の手順と大切さを教える。
ICTコーディネーターを務めながら3年生の担任を担う菅野牧子先生は、「英語ノートのデジタル教材は、音楽もかかるし、リズムもいいし、ネイティブの発音なので、それを聞かせるだけで子どもたちは自分も外国人の気分になって活動します」と話す。実物投影機を使った菅野先生の算数の時間「重なりに気をつけて長さを考えよう」では、授業の冒頭で教科書をディスプレーに映して勉強内容を共有させるのだが、先生は2本の物差しを手で重ね持つ格好をして、子どもたちが問題の場面を具体的にとらえることができ、何に注目して考えるとよいのかが分かるような工夫を加えた。授業力のひとつとしてICTを使える教師が、ICT環境をフルに利用している、という印象を受けた。
答えが二通りに分かれ、子どもたちの意見が活発に飛び交うと、子どもたちのノートをディスプレーに映し、説明させながら、どちらが正しいかを考えさせる。自分の間違いに気づいた子どもを誉めて、「ほかの人の意見を聞いて、間違っていた、と分かることが勉強です。今日は給食大盛りだ!」―先生の声にまた子どもたちが沸いた。
「子どもたちに世界が広がる感覚を味わわせたい」
札幌市立山の手南小学校
新保 元康 校長
本校は、保護者・地域との連携が強い学校です。PTAの行事や会議、懇談会などに、1年間で延べ1万人以 上の保護者が来校します。ボランティアを引き受けてくださる保護者も多くいます。先生方も熱心に外国語活動に取り組み、空き時間も他の先生の授業を見学し、お互いに学び合っています。ICT設備も整い恵まれた環境ですが、ネイティブスピーカーや英語に堪能な人の発音を子どもたちに聞かせる機会をもう少し多くしたい、と考えています。外国語活動で異文化を学んだり、外国の人が来校したりして、世界が広がる感覚を子どものころに味わうと大人になっても忘れません。子どもたちのための外国語活動に取り組み、経験を積み重ねて、先生方の指導力が高まっていくことを願っています。
「友達の輪を広げ自己表現力を高める活動に」
札幌市立山の手南小学校
西 尚美 教諭(英語活動コーディネーター)
外国語活動は、コミュニケーション活動であると理解すれば、大きな不安もなく、子どもたちも先生も楽しめる活動になっていきます。現代の子どもたちは、人と接したり話したりすることが苦手な子が多いので、外国語活動はそれを改善する大事な時間のひとつになると考えています。また、先生方の授業力を高めたり、よりよい学級づくりをしたりするうえでも大切な時間になるでしょう。英語をきっかけに世界の国々に目を向けたり、日本の良さに気づいたりして、自己表現力を高め合いながら、子どもたちとともに私たち教師も育っていく活動を工夫し続けていきたい、と考えています。
「会話が続く」活動を喜ぶ子どもたち
見学したのは6年生の28人の授業。導入部でCHIeru(ICT活用教材を提供する会社)の『小学校のフラッシュ英単語』を利用して、活動に関連がある言葉を繰り返し聞かせ、発話させる。英語で道案内をするための準備として建物の名前を覚えさせることが目的の授業だが、発音はデジタル教材に任せる。担任の先生は、電子黒板に写し出された建物にタッチさせ、ネイティブスピーカーの発音を聞かせ、真似させる。子どもたちとともに耳を傾け、いっしょに発話しながら、子どもたちの興味・関心を引き出す役割に徹していた。
単純な繰り返しではなく、子どもたちそれぞれに好きな建物を選ばせることにより、建物の英語表現を忘れないようにする工夫も見られた。
次の時間に学ぶ、右に曲がる・左に曲がる・まっすぐ行く・止まれなどの英語表現を予習した時、聞いたことがない単語を注意して聞くように促す。まっすぐや右、左については、「野球をやっている人は分かるよね」と手がかりを与え、日常生活のなかでも英語表現が使われていることに気づかせて、子どもたちの意欲を引き出していた。
札幌市立山の手南小学校〒063-0001 北海道札幌市西区山の手1条9-6-1 TEL:011-621-6771


















