公益財団法人日本英語検定協会

児童の英語学習 応援します!

公益財団法人 日本英語検定協会

  • 英検
  • 児童英検
  • IELTS
  • BULATS
  • 通信講座

小学校英語情報

小学校の英語活動

一覧ページへ

英語力の定着をめざして新しい試みに挑戦

東京都武蔵野市成蹊小学校

成蹊小学校は平成14年度から「英語科」を設け、1年生から英語教育に取り組んできた。21年度からは、子どもたちの心に、「英語を聞いてその意味を分かりたい、英語で話してみたい」という気持ちをよりいっそう芽生えさせるための新しい試みを始めている。

先生の専任化とカリキュラムの確立

元気に英語の授業を楽しむ子どもたち成蹊小学校が英語教育に取り組み始めた当初は、1年生から6年生まで、同じ内容の授業を行っていた。「子どもたちの楽しそうな声とともに、どの教室からも“How are you?”が聞こえていました」と校長の金納善明先生は当時を振り返る。
 ネイティブスピーカーの先生と日本人の先生が実践してきた英語科だが、授業を重ねるたびに、「楽しいだけでいいのか。教科として実施しているのだから、せっかくの英語力を子どもたちに定着させたい」という思いが強くなっていった。新しい英語教育を行うにあたって大きく改革したことは、英語を教える先生の専任化とカリキュラムの確立、それとテキストとワークブックを取り入れたことである。テキストは2年生から使用されるが、英語でコミュニケーションができる力をつけることを目標に開発された『WE CAN!』(McGraw-Hill Education)を選んだ。
 英語科主任の岡崎啓子教諭は、「第一に、スキットの場面設定に子どもたちが入りやすく、自分に置き換えて発話しやすいこと。次に歌やフォニックスが成蹊小の指導と共通していたこと。最後にCDもついているので、学校で身につけたスキットを家庭でも復習できること」とテキスト選定のねらいを説明する。岡崎先生は、子どもたちが英語に楽しく取り組んでいる様子を紹介する英語科通信「EnglishNewsletter」を学年別に発行し、保護者にも子どもたちが何を学んでいるかを知ってもらうなど、英語教育の指揮官として八面六臂の活躍をしている。

英語で自分の考えを伝える気持ちを育む

 英語科がめざす教育目標は、身近な問題に対して子どもたちに興味や関心を持たせることが出発点となる。初めに英語ありき、ではない。子どもたちが興味・関心を持ったものごとについて、「英語ではどう言えばいいのか」「英語を聞いて分かりたい」「自分も英語でも言ってみたい」、という気持ちを持たせるのである。そして実際に聞かせ、発話させ、体験させることにより、相手の英語を聞き取り、英語で自分の考えを述べる力を育んでいく。この指導法は、「自分の手で触れ、自分の目で見、自分の耳で聞き、自分の舌で味わい、自分の鼻でかぐ」五感を使って学び、遊ぶ、といったすべての教科の底に流れる成蹊小の教育方針に則ったものになっている。
 現在の指導時間は、1~3年生は週1時間、4年生以上が週2時間だが、23年度から新学習指導要領での教育を実施する関係で4年生の英語科が1時間減る。指導体制は、1年生をネイティブの先生が担当し、2~4年生は日本人の先生、5・6年生は両者が1時間ずつ受け持つ。1年生の段階でネイティブの先生の英語に触れ、楽しい雰囲気のなかで正しい発音を学び、2年次以降に役立てていく、という出発点での工夫に加え、高学年次の日本人とネイティブの先生の交互指導により、相手が外国の人であっても、自分の考えを英語でなんとかして伝えようとする思いを子どもたちが抱く仕掛けが施されている。授業には、成蹊大学の学生や大学院の学生がTA(補助講師)として参加し、授業の手伝いをする。TAは4月に募集するが、中学校や高校の先生をめざす学生や英語の得意な学生に好評で、多数の学生が応募してくる。

宿題でCDを聞かせる効果

 「音をたくさん取り入れ、聞く力を養う」ことと、「聞いたことを言えるようにする」ことに力を注いでいるのが教育内容の特色だが、聞く力については家庭学習も役立っている。音声教材を活用したことにより、宿題でCDを聞く復習が定着し、効果的な学習の後押しをし始めたからである。子どもたちは復習をしたか、しないかのチェックを保護者から受け、次の時間に先生に確認してもらう。読む・書くについては、歌を歌うときなど子どもたちが暗唱しているにもかかわらず、テキストのアルファベットを目で追わせるなどの工夫がなされている。
 授業の基本は、導入から始まって、4回目で一単元を終える。4回目はペアを組み、学習してきたフレーズを使って発表し合う。高学年になると、授業で習った型通りのものではなく、身振り手振りを交えたり、何かつけ足したり、原文よりもおもしろいものを作って発表し、先生を驚かせる子どももいる。
 設置母体の成蹊学園には、国際教育センターがあり、国際理解教育、国際交流、国際研究を3つの柱とした事業を展開している。今年、国際教育センターの支援を受け、6年生の希望者16人がオーストラリアで初の海外体験学習を行った。ホームステイをしながら、CaloundraカランドラChristian Collegeで10日間一般の授業に参加した。子どもたちは、もっと英語が話せたら、という思いを強くして帰国し、前よりもさらに熱心に授業に取り組み始めた。参加した子どもたちは、大きな模造紙いっぱいにホストファミリーの写真や絵を張り、「英語が通じなくてもコミュニケーションをとろうとする態度が大事だと思った」といった感想などを書いて文化祭で発表した。その姿に刺激を受け、参加者以外の子どもたちの目の色も変わり、初の海外遠征は学校全体に予想以上の好影響をもたらしている。来年度も実施予定だが、参加を希望する子どもたちが多く出そうで、先生たちからうれしい悲鳴が上がりそうだ。
 気になる評価だが、3年生までは英語に限らず全教科の通知表がない。4年生以上は観点別評価を実施している。
 今年度は、6年間積み上げた英語教育の客観的評価方法のひとつとして、6年生全員が2010年度第3回児童英検GOLDにチャレンジすることになっている。子どもたちに聞く力がどれだけついているのか、また今後どう伸びていくのか先生たちは結果を心待ちにしている。

ユニークな教科で世界を学ぶ

 成蹊小は英語科を導入すると同時に、教科として「こみち科」というユニークな学習を取り入れた。観察し、調べ、結果を発表する総合学習だが、作物を栽培する体験学習では、大豆を作り、それを加工して味噌づくりまで行う。下級生が作ったものを上級生に食べてもらうなど、ほほえましい光景が毎年実現する。また、「世界のくらし」という授業では、世界各国の暮らしについて学年交流授業が行われる。成蹊小では海外生活の経験のある子どもたちも受け入れているので、海外の暮らしや文化を知っている同世代の子どもたちに直接話が聞けるなど、国際社会に対する子どもたちの視野を広げることに役立っている。
 英語のほか、音楽・美術・体育が1年次から、理科は3年次から、こみち科は5年次から専科制とし、高学年になると教科担任制の授業が始まる。クラスサイズは低学年が28人×4学級、高学年が32人×4学級で、ゆとりのある態勢である。
 施設・設備も充実しており、英語に関連するものとしては英語絵本の充実ぶりがあげられる。国際教育センターの職員が小学生のために選定した彩り豊かな絵本が図書館に備えられ、休み時間には、英語絵本を楽しむ子どもたちの姿が絶えることがない。

子どもたちの発音のよさ、反応のすばやさ

CDもついているテキスイングリッシュリーダーの仮装で始まったハロウィーンの授業見学したのは2年生の授業。教室に入ると、子どもたち全員が黙想している。これは「凝念(ぎょうねん)」といって、集中し、準備する気構えを持つために行われるもので、開校当初から取り入れられている。
 静まり返っていた教室が、授業が始まった途端ににぎやかになった。“How many do you have?”と“I have one/two.”の表現を使うことができることを目的とした授業の第1回目だが、“How many do you have?”のスキット発表テキストの絵に描かれた動物の名前を当てる子どもたちの発音のよさに驚かされた。ほとんどが速い英語での指示だが、子どもたちはついていく。児童数が28人で、先生の気配りがきき、教えやすく学びやすい、という環境もあるのだろうが、2年生のクラスにいるとはとても思えない。
 見事だったのは、“I”と“you”を発音するとき、子どもたちが声の調子を変えたこと。「youはあなた、I は私だから気持ちの込め方が違うでしょ?」と先生が肝心な点を日本語で教えたことに、子どもたちがすばやく反応した。男の子対女の子のペアを組む「UFO Catcher Game」や「Number Guessing Game」などで、手を変え品を変え、繰り返し前記の表現を聞かせ、発話させる。UFO Catcher Game。つかみ出した動物を
みんなで数える
「UFO Catcher Game」で手づくりのぬいぐるみの動物を子どもたちにつかませるとき、“left/right”に加えて“both hands”という表現もさりげなく教える。“both hands”でつかみ出せるクジを引き当てた子どもは、顔を真赤にして何匹もつかみ出そうとする。つかみ出した動物たちをみんなで数え、“How many doyou have?”。これなら絶対に忘れないだろう。
 手をたたき、誉めあいながら、子どもたちの笑い声が絶えない。最後に「Ten Little Snow-men」の歌を歌ったが、ハロウィーンが近いので“Snowmen”を“Witches”に替えて繰り返させるなど、盛りだくさんの45分間だった。

自立・連携・創造の力を養うために

成蹊小学校
金納 善明  校長

 成蹊小学校は、創立以来95年にわたって変わらずに残している教育目標を持つ一方で、子どもたちのために新しい学びのかたちを常に追求し続けてきました。1年生から英語の授業を始めることにしたのも新しい試みのひとつです。ただし英語だけに特化する教育ではなく、子どもたちが自分の考えを表現できる自立する力、集団のなかで自分を生かすことができる連帯する力、生活のなかで創意工夫できる創造する力を養うための手段のひとつとして、英語教育に取り組んでいます。
 英語は、これからの時代の子どもたちに自然に備わっていてほしい力です。子どもたちの将来に必ず役 立つ力となることは間違いないので、大事に取り組んでいきたい。先生方もそれぞれの専門性を高めることに加え、人間性も高め、保護者や子どもたちからよりいっそう信頼されるよう日々励んでいます。

聞いてわかる英語指導に徹する

成蹊小学校
岡崎 啓子  英語科主任教諭

 本校の子どもたちの自慢をすると、耳がとてもよいことです。新しい取り組みを始めて何が強くなったかといえば、聞く力です。聞いて分かる+発話するというコミュニケーション能力を育ませたい、という私たちの願いに、子どもたちがしっかり応えてくれています。学校で行う週に1~2時間の授業ではここまで力をつけるのは難しいのですが、学校で習った表現を家庭でも聞かせるように宿題を出し、それを保護者がチェックするなどの協力をしてくださるのでとても感謝しています。
 子どもたちを観察していると、英語に積極的にかかわろうとする態度や、外国の人が来校してもたじろがない姿が見えてきました。これからも聞いて分かる指導に徹し、英語に耳を傾け、注意深く英語を聞くことの大切さを子どもたちに伝えていきたいですね。そして身につけた英語表現を使って主体的にコミュニケーションをとろうとする子どもたちを育てていきたいと考えています。

成蹊小学校〒180-8633 東京都武蔵野市吉祥寺北町3-3-1 TEL:0422-37-3839

英語活動での教師の英語使用について

和田稔明海大学名誉教授
和田 稔
 成蹊小学校の2年生の英語活動の授業を参観した。岡崎啓子先生のソロ・ティーチングといってよいだろう。スピーディーな授業展開、先生の見事な英語の使用、児童の積極的な態度など素晴らしい授業であった。授業を見ながら私の頭を駆け巡ったのは、この授業から参観者は何を学ぶのか、という課題である。あまりにも見事な授業で、参考になるところはないと一般の小学校の先生は考えるのではないか、懸念した。授業参観の難しさである。小学校の先生の英語の使用について考える視点を提供してくれたと私は思った。
  英語使用は、英語活動を担当する小学校の先生方が悩む最大の課題である。「どのような英語を使えばよいか」「英語を理解できない子どもたちが出るのでないか」など悩みは多い。岡崎先生は基本的英語表現の繰り返し、英語と日本語の併用、小学生の英語力を超えていると思われる表現など多彩な英語使用であった。その多彩な英語使用は、授業研究の重要なテーマではないかと思えたのである。

Copyright © The Society for Testing English Proficiency, Inc. All rights reserved.