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小学校英語情報

特集コラム

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「新しい小学校英語教育への取り組み 〜中教審の中間報告を読んで〜」

中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会は、2007年11月に「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」を発表し、「小学校段階における外国語活動(仮称)」についての提言の中で、「小学校高学年で週1コマ年間35時間程度実施する」などその目標と概要を明らかにした。
「審議のまとめ」(以下中間報告)が示す活動は総合学習の英語活動とどう違うのか、現場でどう対処したらよいのかについて、小学校での英語教育に長年かかわってこられた和田稔・明海大学教授と松川禮子・岐阜県教育委員会教育長の両先生に話し合っていただいた。(以下、敬称略)

司会:財団法人日本英語検定協会 広報課課長 古畑儀行

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    明海大学教授
    和田 稔

    千葉県生まれ。元文部省外国語担当教科調査官。研究対象は言語政策、カリキュラム、テスト、タスクなど小・中・高の英語教育全般。

  • #

    岐阜県教育委員会教育長
    松川 禮子

    長野県生まれ。岐阜大学名誉教授。著書に 『明日の小学校英語教育を拓く』(アプリコッ ト、2004)、『小学校英語と中学校英語を結 ぶ』(高陵社書店、2007)などがある。

総合的学習時間の英語活動とどう違うのか
–––– まず初めに、中間報告の全体的な印象からお話しください。
松川
今回の中間報告は、平成18年3月に外国語専門部会が発表した「小学校における英語教育について」を下敷にしたもので、微妙に変わっている部分はありますが、内容的にはほぼ同じです。ただ、今回はっきり示されたのは、総合学習とのかかわりです。英語活動は総合学習の時間とは趣旨・性格が異なるとして、教育課程上の位置づけが別になりました。さらに、総合学習の時間についての改善事項の中で国際理解に関する学習を行う際は英会話的なことはやるべきでない、という趣旨が述べられている個所があります。このことから私は、小学校の英語活動は性格が違ったものになるだろうと認識しています。
和田
その点に関して、私は心配していることがあります。先進校は別として、一般の小学校の先生方と話をしてみると、総合学習という側面を出せるなら英語活動ができる、とおっしゃる先生が多い。なぜなら、それぞれ得意の分野に結びつけるような形で活動できるからです。しかし、今回は切り離された。総合学習ならできると言っていた多くの先生が困るのではないかと心配しています。移行期を利用して、この点をどうするか、問題点として指摘しておきます。
松川
今まで総合学習で積み上げられてきた成果が基本的には生かされる方向だと考えますが、教育課程における位置づけが変わることと、共通の目標・内容が設定されることから、色彩が変わってくる要素を含んでいることに注意すべきですね。
和田
「国際理解教育の一環」として、という文言も外すべきだという議論があったようにも聞いています。これからの方向として、かなり英語・英語会話に焦点を当てた活動になりそうですが、松川先生、その点はいかがですか。
松川
現行の教育課程での小学校英語は、英語学習なのか国際理解教育なのか、という議論がされ続けてきました。しかしご指摘のように中間報告では、学校教育における外国語教育の充実という文脈に位置づけられていることから、言語教育としての色彩が強まっていると思います。小学校英語推進派の中での色分けとしては、スキル派対国際理解派ではなく、むしろ、スキル派対コミュニケーション派と言うほうが適切かもしれません。

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小学校では、何を、どのように、どこまでやるか
–––– 異文化理解や国際理解教育を中心に英語活動を行ってきた現場の先生方は、これからの活動をどう展開したらよいかとまどっています。
和田
私の意見は簡単で、基本的には中間報告に書いてあることをやればよい。ただ、中間報告では、小学校英語は中学校・高等学校でコミュニケーション能力を育成するための「素地」をつくることが重要だとしていますが、この「素地」という言葉が問題で、もう少し具体的にしてほしいと感じています。素地が積極的なコミュニケーションを図ろうとする「態度」ではあいまいな気もします。「基本的な単語や表現で、音声的な面を中心とした活動を行う」とありますから、この線に沿って進めることは賛成です。
松川
内容的には、現行と同じように小学生段階にふさわしい体験的なアクティビティーの要素を含めながら、興味を持たせる形で英語に取り組んでいく、というのが小学校の役割だと考えます。今回の学習指導要領改訂のキーワードでもある「言語の能力」を考え、言語への関心、言葉の豊かさへの気づきなどを重視すれば、音声に慣れ親しませつつ、プラスアルファー、どこかで構造的なものも意識させたいですね。そのヒントは小学校でもある程度与えることは可能でしょう。そこに国語教育との相乗効果ということもあります。その意味では、5・6年から始める、としたことも適切だと思います。
和田
「小学校英語」を「言語力」と結びつけるのは、理念としてはわかりますが、具体的に実際の教室で、どういう授業を構成していくのかという大変難しい課題に小学校は直面すると思います。私は、関係者が具体的な提案をどのようにするか関心を抱いています。
松川
文部科学省が作成中の「英語ノート」は、ペーパーベースのものだけでなくCDやDVDなどの電子教材も配布され、それらを活用することになりますが、英語ノートの内容が示されたうえで、誰がどのような研修をするのかという点では課題があります。英語ノートを具体化してどう教えるかの説明や、実際のワークショップになると、担当者によって微妙に違う講習になる可能性はあります。
和田
シラバスやカリキュラムには必ずゴールや目的があります。理念が、英語で言うところの、Pie in the skyで、実際は別だ、というのはよくないというのが、私の基本的な考えです。小学校英語にかかわっている先生方が、今後理念をどのように具体化していくのかに興味があります。また、関係者が進めていくであろう研修についても、このような問題意識を持って研修内容を組み立てていくのか、それともあまり意識せず過去の例に依存しながら進めていくのか、見守っていきたいですね。

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中学英語の前倒しと小中連携の問題点
–––– 中間報告には、中学校段階の英語を前倒しするのではない、と書かれています。
和田
中間報告は先ほども出た「素地」という言葉を使って、連携を示唆しています。素地とはいかなる意味か。もっと具体的にしなければ、現場の先生にはわからないのではないでしょうか。たとえば、小中連携のキーワードを「文法」としてみましょう。中間報告では、スキルよりもコミュニケーションを図ろうとする態度の育成が基本、とするほかに、「中学校段階の文法等の前倒しではなく」と文法という言葉が初めて入ってきました。「文法を前倒ししない」とは具体的にどういうことか、もっと明確にすべきと思っています。私は「文法力」は小学校でも必要と考えます。小学校英語で「明示的に」文法を指導することに慎重であるべきということならば私も賛成です。
松川
中間報告における「素地」という表現には確かに解釈の幅があります。これまで、小学校英語活動は中学校英語の前倒しではないと言われてきました。今回は、「中学校段階の文法等の英語教育の前倒しをするのではなく」と、限定がつきました。中学校における外国語学習への円滑な移行や、小中の緊密な連携が強調されています。何をどう連携するのかという点の一つは、中学校が小学校での共通履修内容を前提とできるようになるということです。また、言語や文化に対する理解や積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成は、中学校と共通の目標でもあります。具体的には、新しい学習指導要領が発表され、「英語ノート」が提示され、どのような授業展開をするのかというマニュアルが提供されてからの話になるのでしょうが、「素地」をつくるという以上、一貫した言語教育であり、外国語教育であり、広い意味で体験を通した外国語教育入門指導をやることになるはずです。
–––– 評価はなじまないとされていますが、どう考えるべきでしょう。
和田
今までは、「態度」を評価することが一般的でした。私は、態度を情緒的にとらえるのはやめるべきだと考えています。ある程度きちんとした英語を使わせてそれが伝わったなど、英語力と結びついた具体的な力の裏づけに基づいた「態度」の評価をすべきだと思います。評価自体が悪いのではなく、どう活用するかが大切であり、子どもや保護者へのフィードバックをどうするかを考えたうえで、評価に前向きになれ、というのが私の考えです。
松川
現行でも評価は行うべきなんですよ。学校で一定の時間をかけてやっている以上、目標に対する評価は必要です。中間報告では、数値による評価はなじまない、という記述に落ち着いていて、評価をしてはいけない、とは書かれていません。
和田
テストが不要なのではありません。先生方がテスト結果を指導にどう役立てるかが大切です。一生懸命にやればやった小学校ほど、評価をどうするか悩んでいるようですね。ただし、日本の場合、テストの結果は社会的な影響を及ぼすので、取り扱いには注意が必要ですが。

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ティーム・ティーチングをどう考えるか
–––– ALTの活用も問題です。どうしたら上手なティーム・ティーチングができるのでしょうか。
和田
大変難しい問題です。ALT採用の問題など、小学校の先生の仕事以外の要素がかなり多く作用するからです。中間報告では、担任とALT、英語が堪能な地域の人とのティーム・ティーチングを基本とする、とされています。私はあえて言えば、地域にいる日本人を活用したほうがよいと考えています。どうしてもALTと、というのであれば、小学校におけるティーム・ティーチングのあり方を明確に示すべきです。中学校のそれをそのまま小学校に持ち込むことなどできません。中学校と小学校を同じものとしてやり過ごしているという現状は、この言葉と概念を導入した私としては、大変心配しています。ある市のカリキュラムは、所々に空欄があって、この時間に何をするのかと言うと、過去に盛り上がった活動をもう一度やろうという場合とか、ALTが来るので国際理解に使う場合など、柔軟に対応するように工夫がされていました。私はALTをこのような形で活用することが、現在の小学校校英語にふさわしいのではないかと考えます。
松川
私は学級担任の先生の役割を、子どもたちが初めて外国語を学ぶときのモデルになれる、という点で評価してきました。子どもたちは、ALTなどの外国人と初めて出会ったとき、身近な大人である学級担任が、どのように対応するのか興味津々で見ています。その大人が担任だからこそ、先生の英語を聞いてみたいと思うのです。新しい言葉を学ぶときのモデルであるという役割は今後も大事にしてほしいと思います。ティーム・ティーチングについては、何のために外国語を学ぶのかという動機づけや、外国語体験のリアリティーという意味でALTの活用は有意義だと考えます。反面、授業準備の段階で何を中心に活動するか、クラスの子どもたちの特徴などをALTに伝えられる英語力が要求されるなど、実際にはかなりの困難が予想されます。これを克服するための研修の在り方にも工夫が必要でしょう。
–––– いろいろな課題があり、あいまいなところを明確にしていく必要もあることがわかりました。最後に、全国の先生にメッセージをいただけますか。
松川
小学校英語は、特別な学校が実験的に取り組んだ時期、総合学習で各地の学校が活動を始めた時期を経て、第三ステージに入ります。各学校で取り組み内容に違いがあるものの、やれるという手応えを持つ先生も増えてきていると思います。今後は、共通の目標と内容が示され、何をどこまでやればよいのかという、これまでの疑問に一応の回答が出ます。英語という母語とは違う言葉でコミュニケーションすることを学ぶことが、子どもたちの中にどんな力を育てていくのか、じっくり腰を据え、確かめながら活動を進めていく時期がきたのです。目標と内容に沿った形で、先生方のこれまでの経験や学校の蓄積を最大限に生かした活動が各地で行われることを楽しみにしています。
和田
小学校英語を、中学校で行われているPPP(Presentation → Practice →Production)の考え方に立って展開していくのか、それとも、もう少しゲームや歌を中心にしてやっていくのかなど、自分たちに合った方法がどれか、じっくりと検討していく必要があるでしょう。小学校英語活動で感じるのは、先生方が、子どもたちを「引き寄せる」ことがうまいということです。教科の経験を生かし、授業に工夫ができるという長所を持っています。モデル授業を提供している代表的な先生方のやり方を見て自信を失ってはいけません。小学校の先生として積み重ねてきた大切な宝を、新しい英語学習に結びつける場合どうすればよいか、もっともっと研究し、自分なりの指導法を確立することを願っています。