特区活動の成果を「新教育課程」へつなげ、
時代を切り拓く子どもたちを育成する
―宮城県角田市の小学校英語教育―
角田市は、小学校に「英語活動科」を設置し、すべての学年で年間35時間の英語指導を行っている。(財)日本英語検定協会と「角田市立小・中学校英語教育推進委員会」の共催による、小学校英語活動の現状と今後の方向性などを考えるセミナーが2008年11月4日、角田市立角田小学校で開かれた。
セミナーには市内小・中学校の先生たちに加え、近隣の関係者も参加し、すでに10年の歴史がある角田市の小学校英語教育の公開授業を見学し、大城賢琉球大学教授の講演に熱心に耳を傾けた。 角田市は、平成11年度から市内全小学校(9校)にALTを配置し、「国際理解教育」と「英語を話せる子どもたち」の育成を目的とした英語教育を開始、平成16年度には「小学校英語教育推進特区」の認定を受け、教科としての英語教育に取り組んできた。そしていま、将来に向けて小学校英語を教育全体の中にどう位置づけていくか、大きな課題に直面している。
中学校の「英語活動」で小学校英語との連携を図る
小学校英語教育の推進のために角田市が取り組んだのは、オリジナルな指導計画の作成、優秀なALTの確保、研修の充実、関連事業の充実、英語教育推進委員会の組織化などである。
市が作成した「英語活動年間指導計画」には、聞く、話す活動と評価を重視する目的から、1単位時間の中にListening Time(絵本の読み聞かせ、担任とALTとのスキット、3ヒントアクティビティーなど)、Speaking Time(既習英語表現を使ったQ and Aアクティビティーなど)、Evaluation Time(児童の自己評価、担任とALTらによる一人ひとりの確認)が組み込まれている。指導は全時間、担任とALTによるティームティーチングで行われる。研修は、公開研究会や講演会など大規模な研修の機会を年1回から2回、その他中規模のものを学校単位で開催し、子どもたちの実態把握に努めながら、指導のあり方について改善を図っている。また、各学校で肩の凝らない、明日の指導にすぐに役立つ内容のミニ研修会を実施し、指導のレベルアップと学校自体の教育力を高めている。関連事業としては「小中連携」がある。中学校に週1時間の「英語活動」の時間を設け、小学校英語との関連づけを図っている。夏季休業中には、各小学校で英会話教室を、2学期には4つの中学校区ごとにスキット発表会を開催している。
小・中学校児童・生徒によるスキット講習発表会、土曜休業日や長期休暇中を利用したALTによる英会話教室も開催している。
客観的評価に児童英検を活用
小・中学校英語教育推進委員会には、事務局、授業研究部、評価研究部、中学校部が設けられ、先進校の視察、小学校英語活動研修会の実施、授業研究会・事後検討会など、さまざまな活動に取り組んでいる。このうち評価研究部は、オリジナル英語活動評価問題「Fun English」を作成して実施するなど、英語活動の成果についても熱心に検証を重ねてきた。その結果、Fun English上級編の平均正答率(平成17〜19年度)は約80%と高い数値が得られている。また、客観的に活動の成果を検証すると同時に、子どもたちの学習への取り組みを励ますため、児童英検を積極的に活用。平成18年度には市内小学校5学年全員がSILVERを受験し、平成19年度には6学年全員がSILVERかGOLDを受験した。市全体の平均正答率は平成18年度が73%、平成19年はSILVERが80%、GOLDが69%だった。
英語を学ぶことで、さらに学びを拓く教育をめざす

角田市教育委員会
菊地 俊彦教育長
これまで歩んできた道筋のなかで大切にしてきたのは、英語によるコミュニケーション能力の育成で、今後も不可欠な目標にしたいと思っています。また、英語を学ぶことによって、さらに学びを拓くような英語教育を推進し、子どもたちの自覚的成長を促したい。英語を学び、英語に接することによって、自らの課題に気づき自覚していくことが学びを拓くこと、すなわち自覚的成長につながっていくことになるのではないでしょうか。これからの英語教育を他教科への学習意欲の向上にも結びつけていきたいと考えています。
●角田市教育委員会
〒981-1592 宮城県角田市角田大坊41 TEL 0224-63-0130
角田小学校公開授業「家族のしょうかいをしよう」
「今日の授業は、担任の先生が主導したすばらしいものでした。ALTの助けを借りる場面も、ALTの役割も、担任の先生がしっかり把握したうえで授業が進められ、私が理想と考える授業でした」と、基調講演を行った大城教授から称賛された公開授業は、4年生33人のクラス。長年指導に協力してくれたALTが帰国したためこの日のALTは9月に着任したばかり。そんなハンデを払拭し、担任の菅原千香子先生は、ALTをしっかりリードしたティームティーチングの授業を展開した。
授業の目標は、“Who is he/she?”の質問に答えるかたちで、自分の家族を紹介できるようにすること。子どもたちは、家族1人の絵を描いたカードを持って授業に参加する。家族の呼び方や年齢の言い方を、全員で、1人で、ペアを組んで、といった流れで十分に練習を繰り返す。HeとSheの使い分けと発音を確認することが、ポイントとなっている。質問に使う英語が新しい表現なので、戸惑っている子どもには、担任が、そして新任のALTまでが子どもたちのそばに行って優しく指導する姿が印象的だった。
最後は、友達の描いた絵を見て、それがだれかを友達に答えてもらったり、自分の描いた家族がだれかを答えたりして、ワークシートに○印をつける。質問を聞いて、家族の名前や年齢を伝えられたか、聞き取れたかを、子どもたちは一生懸命に自己評価していた。
角田市立角田小学校〒981-1505 宮城県角田市角田牛舘41 TEL:0224-63-1144
小学校外国語活動のめざすもの
―strategic能力を発揮させる授業を重視したい―
琉球大学教育学部
大城 賢 教授
おおしろ けん
沖縄県内の中・高校の教諭、沖縄国際大学教授を経て平成16年度から現職。那覇市研究開発校(小学校の英語教育)運営指導委員会委員、浦添市英語教育特区運営指導委員会委員長、中教審外国語部会委員などを務める。
新学習指導要領は、言語や文化について理解を深めること、積極的なコミュニケーションを図ろうとする態度を育成すること、音声や基本的な表現になれ親しませること、の3つを盛り込んだ外国語活動を求めています。
コミュニケーション能力の構成要素の1つに、語彙力の不足などを補って、コミュニケーションを続けていく能力、方略的(strategic)能力があります。その他、文法・語彙能力、社会言語学的能力、談話能力があり、文法・語彙能力があれば“Come here the day aftertomorrow.”といった文を作り出せます。方略的能力とは、Come hereは思い出せたけれど、the day after tomorrowが思い浮かばないときに発揮される能力です。その日の曜日を言ったり、カレンダーを指さしてThis dayと言ってコミュニケーションする能力です。私は、英語学習の初期段階においてstrategic能力を発揮させることを重視した活動を行えば、単語が分からないとコミュニケーションがストップしてしまうこれまでの英語教育の弱点を変えていくことができるのではないか、と考えています。
授業では、コミュニケーションがまず先にあり、言語文化があり、音声中心のスキルがある、と続くことが、子どもたちを英語に親しませるコツといえます。たとえば、数の聞き方を勉強するときに、“How many〜?”を使った文を機械的に練習させるよりも、「“ H o wmany〜?”を使って自分と同じ兄弟がいる友達を探してみよう!」というコミュニケーション活動を考えることが大切です。子どもたちの耳は“How many〜?”の質問を聞いた後には、ダンボの耳になっています。そして自分と同じ数を聞くともう大喜びです。また、日本語では年齢が上か下かで「兄」「弟」の違いはあるけれど、英語のbrotherにはないことなどを説明すると言葉に対する興味を喚起することができ、さらに、年齢の差を大切にする日本の文化などにも気づくことでしょう。
特区や拠点校となった学校の英語活動や、特定の先生の指導力が注目された時代が終わり、国の大きなプロジェクトとしての小学校英語必須化の時代を迎えました。これからは、英語の専門家ではないけれど、総合的な指導力があり、子どもたちのことが大好きな担任の先生が中心となって英語を指導していくことになるでしょう。今日の公開授業を見て、角田市の英語教育は、先生方にとって、PressureがPleasureに変わっていると確信しました。角田市の小学校英語教育を、他の市町村の小学校にぜひ発信してほしい、それが公開授業を見せていただいた私からのお願いです。


















