留学特進コースや英検まつりを開催
英語力向上の秘密は…みんなで乗り越える!
世田谷の閑静な住宅街の中に建つ佼成学園女子中学・高等学校。「英語の佼成」として名高い同校の独自のカリキュラムが、全国の高校から注目を集めている。1年間のニュージーランド留学を組み込んだ「特進留学コース」の設置や、ネイティブ教師が駐在する「グローバルセンター」のほか、年に2回、中学・高校全学年挙げて開催される「英検まつり」など、佼成ならではのユニークな取り組みを取材した。
人間らしい教育を
山本喜平太校長
廊下を歩くと、すれ違う生徒さんから「こんにちは」と明るく声が掛かる。山本喜平太校長は、「特に『挨拶をしなさい』と指導しているわけではないのですが、もともとの校風でしょうか。優しくて素直な子が多いですね。それに、困っている人を放っておかない。誰かがいすを片付けていると自然に手伝う。そんな学生の姿をよく見かけます」と語る。
「人間らしい成長」を目標としている佼成では、「体を鍛える」「頭を鍛える」よりも、「心を鍛える」ことを一番大切にしている。
「中学・高校時代は、『自分とは何だろう?』と考えを深め、自立していく大事な時期。様々な学校行事を友人たちと協力して盛り上げ、その喜びを分かち合ったり、ときには壁にぶつかって思い悩んだり。励ましあいながら、人間として成長できるよう、教員も見守っています」
次を見るopen
みんなで乗り越える
松村泰敬先生
宍戸崇哲先生
そんな佼成では、英語も「みんなで一緒に乗り越える」ことを主眼としたカリキュラムを多く取り入れている。中学では、朝読書の時間にひと月に1週間、クラス全員で英語の多読に取り組む。夏休みにはサマーキャンプを実施し、1年生から3年生までの合同班で、留学生たちと英語のみの環境で過ごし、異文化交流を体験する。また「イマージョン教育」を展開し、英語だけでなく、美術、音楽、体育、コンピュータも担当の先生とネイティブの先生の2人体制の授業を行う。
なかでも1番実績を上げているのが、「英検まつり」。英検担当の松村泰敬先生は、「2004年までは英検の受験は希望者のみでしたが、2005年から全校受験に切り替えました。それと同時にこの『英検まつり』を始めたんです。『まつり』としたのは、楽しみながらチャレンジしてほしいから(笑)。年に2回、春と秋の英検受験の2週間前に、毎朝25分間の英単語チャレンジタイムを設けました。自宅で机に向かうのが苦手な生徒は、覚える時間に充ててもいいし、家で覚えてきた生徒は、1枚20問の小テストを何枚でも受けてもいい。そのようにお互い競って覚えることで刺激になるようです。中学・高校の6年間で12回の『英検まつり』にチャレンジすることになるのですが、繰り返すことで確実に単語をものにできるようです」と話す。また、放課後に希望者に対して行う無学年制の「英検対策講座」も多くの生徒が参加している。
英単語力アップだけでなく、生徒たちのモチベーションが上がることで、2級以上の合格者が、2004年には15人だったのが、全校受験と英検まつりを始めた2005年には45人、そして2007年には62人と飛躍的に伸びているのがわかる。
「英検は、取得者が入試で様々な優遇措置をとられることが多いほか、保護者の間でも知名度がある。それに長文の選び方がキャッチーでいいですね。この間もトウモロコシを使った燃料に関する長文に感心しました。また、日本人のバランスの良い英語力向上を考えたとき、2次の面接試験は必要。今後も生徒たちには、英検合格を目指すことで総合的な力をつけてほしい」と国際交流部長の宍戸崇哲先生。
留学しても3年間で卒業!
高校になると、「イマージョン教育」の代わりに、歌や踊りなどを通して文化交流をするアメリカ人大学生の団体「ヤングアメリカンズ」を招いて異文化体験が行われる。これは、生徒の家庭に留学生を招き、ホームステイをさせたり、一緒にショーを考え発表したりするもの。また、修学旅行はオーストラリアへ。語学研修として希望者はそのままオーストラリアに短期留学することもできる。
最も特徴的なのが、英語に特化した「特進留学コース」の設置。高校時代に1年間長期留学するとなると日本の高校を留年したり、現地で受けた授業が単位として認めてもらえなかったりというケースが多い。けれども、佼成の特進留学コースでは、1年間留学しても3年間で卒業できる。1年生の3学期から2年生の2学期まで、クラス全員がニュージーランドの高校へ1校につき2人ずつ留学する。
宍戸先生によると、留学先でも「みんなで乗り越える」を合言葉にしているとのこと。年に数回、普段は離れて暮らしている佼成のクラスメイトが現地で一堂に集まり、現地校やホームステイのこと、生活上の問題や悩みなどを語り合う。
「だいぶそれでスッキリするようで、またそれぞれの地域に元気に戻っていきます。今まで病気以外の理由で途中帰国した生徒はいません。留学前には、会話力を高めるため、ネイティブが常駐しているグローバルセンターに昼食を持参して、ランチタイムを一緒に過ごすよう勧めています。帰国した生徒たちは、会話力のみならず精神的にもグッと強くなっているんです。今年も23名が留学中ですが、成長が楽しみですね」
英検チャレンジャーにインタビュー!
海外へ行ったら英語で話したい
中学2年生
宮島桜子(さくらこ)さん
(2008年度第2回準2級合格)
海外へ行ったら英語で話したい
私がこの学校を選んだのは、セーラー服が着たかったから(笑)。入学したら雰囲気も明るくすぐになじめました。入学前は英語に強い学校とは知りませんでしたが、今は英語の授業をとても楽しみにしています。担当のレネ先生はとても優しく教えてくださるし、解説もわかりやすいです。昨年、家族とタイに旅行したのですが、現地の人とちっとも話せませんでした。タイの人は、タイ語だけでなく英語も話せる人が多いんですよ。それからは次に海外へ行くときのために、NHKのラジオ基礎英語を聞いて会話の勉強をしています。英検受験の前には、学校のスポット講習を受けたり、過去問を解いたりしています。将来は、インテリアデザイナーになれたらいいですね。素敵な家具を見に、海外をあちこち回りたいです。
留学がきっかけで英語好きに
高校3年生
鈴木愛佳(まなか)さん
(2008年度第2回準1級合格)
留学がきっかけで英語好きに
英語を好きになったきっかけは、短期留学です。中学生のとき経験したアメリカでの2週間のホームステイはとても楽しく、もっと話せたらと、留学コースのある佼成に入学しました。高校1年生の終わりから留学したニュージーランドでは、最初は友人がなかなか作れず3か月目でホームシックに。積極的に話していこうという気持ちに切り替え、地道に勉強していると、ある日パッとわかるようになったんです。それからは、日本へ帰りたくなくなりました(笑)。今は大学合格を目指して忙しい毎日ですが、ドイツ語学科か国際交流科を受験する予定です。留学中、5か国語も話せる頭のいいドイツ人学生に出会ってドイツに興味を持ったこと、そして将来はバイヤーとなって世界中の人と交流したいという夢があるからです。
STEP英語情報 2009年1月・2月号 掲載