「がんばらずにはいられない!」
自発的な学びの環境づくり
関西圏のトップ校を代表する関西大学。その併設高校として歴史を刻んできたのが関西大学第一高等学校だ。受験勉強のみにとらわれることのない理想の学びを追求してきたその伝統は、生徒の将来にとって本当に求められる力の育成とも言い換えられるだろう。そして今、理想の学びの一つの礎石(そせき)として、英検の全員受験という取り組みが進められている。
重みを増す英語力の大切さ
垣添尊先生
「正義を重んじ、誠実を貫く」という校訓を掲げる関西大学第一高等学校。急速に変化する国際社会において、何が正しく、どうすれば相手に対して誠実であることができるのかを自ら判断するためにも、英語力の重要性がこれまで以上に高まってきているととらえ、その充実に取り組んできた。
「英語教育は伝統的に重視されてきた分野ですが、およそ10年前を境に、一層力を注ぐようになりました。それは、国際化、情報化の進む現代では、英語を使ったコミュニケーション能力が、もはや欠かせない基礎学力になったという思いからです」
このように話してくれた垣添尊先生は、さらに次のように続ける。
「オール関大として、国際人たりうる資質を備えた学生を輩出するために、併設校である高校、中学でも、一貫した取り組みを進めることになったのです」
その言葉通り、具体的な取り組みは高校内にとどまらず、中学校との連携の上に推進されてきた。系列の関西大学第一中学校では、総合的な学習の時間を使い、外国人講師の指導のもと、各クラスを3つに分けての小グループコミュニケーション授業を実践。英語に親しみ、コミュニケーションの喜びを実感させる指導は「英語好き」な生徒を着実に生み出す実績を挙げている。
また、中学3年生対象のオーストラリア、高校1・2年生対象のニュージーランド英語研修を希望者に向け実施。様々な機会を通じて、生きた英語を我がものとする生徒を育てる環境づくりに余念がない。
さらに、英語学力のベースとなる通常授業のカリキュラム策定においても、文法の基礎を軽んじることのないような指導内容を構成するなど、入念な配慮が行われている。会話をはじめとする豊かなコミュニケーションも、基礎となるしっかりとした文法力があってこそのものだという信念がそこにはある。
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「全員受験」で取り組む英検
豊島光男校長
英検への取り組みも、そうした方策の一環だ。中学校で1回、高校で2回の英検受験が学校の費用による全員受験として行われ、多くの生徒が中学では3級、高校では準2級・2級の取得を目指して挑戦している。もちろん、理解度に応じてさらに上級の受験も可能。自校が英検の本会場となっていることもあり、全員受験の枠を超えた自主的な受験者の数も、年々確実に増加しているという。
こうした全員受験が制度化されてからおよそ5年。それ以前は学校オリジナルの学力テストで英語力を測ってきたが、より客観的な尺度を求める声が英検の採用につながった。
「授業での学力評価は相対評価ですから、それとは別に客観性のある絶対評価があればと考えました。その結果として、英検は生徒に授業での成績とは別の目的意識や達成感を与えているように思います」と垣添先生。
一方、校長の豊島光男先生はこう話してくれた。
「英検では、その準備と受験を通して学習進度を客観的に測り、そこから今の自分に足りないものを知ることが、合否以上に生徒の財産になると考えています」
英検本番だけでなく、準備や振り返りの大切さという指摘の通り、受験の奨励と並行して、希望者を対象にした放課後の定期的な対策指導など、そのための支援もぬかりなく行っている。やる気のある生徒は、進んでこれらに参加することで、より力を伸ばすことができる。
「全員受験という枠組みの中で、さらに先を目指そうという積極性が生徒に芽生えてきました。ただ競争するというのでなく、仲間と『今度は何級に挑戦しようよ』と声を掛け合うなど、一緒に向上していこうという気持ちが感じられるのが非常にうれしいですね」と豊島校長先生が続ける。英検が、勝ち負けの競争よりも「共に学ぼう」という前向きな思いにつながっているという評価には、注目すべきものがあるのではないだろうか。
明日を生きる生徒たちのために
開放感のある校舎
関西大学の併設校という位置づけを生かし、必ずしも大学受験という枠組みにとらわれない、生徒の将来において本当に求められる力に焦点を合わせた教育のあり方は、関西大学第一高等学校が貫くポリシーである。
英検以外の資格取得にも積極的に取り組むほか、中高連携の一貫したキャリア教育を実践するなど、その教育内容は包括的かつ立体的なものだ。生徒に常に「自分の将来」をイメージさせ、同時に生徒自身の今現在の立ち位置を常に確かめさせることで、学習への高いモチベーションをかき立てるのがそのねらいだ。さらに、英語で火をつけたコミュニケーションへの意欲をいっそう深めるために、関西大学教員による出前授業としてドイツ語・中国語・フランス語の講座を設けてもいる。
「がんばらせる学習には自ずと限度があります。ですが、自発的な学習を通じてなら、彼らは驚くほどグングン伸びていくものなんです」と垣添先生。
英語学習と英検への挑戦は、将来の社会人としての基礎力であると同時に、今を生きる高校生の、内なる学びの意欲を引き出す起爆剤ともなっているようだ。そしてこれら中高での取り組みは今、関西大学における外国語学部の新設(平成21年4月)とうまく結びついた。これからも更なる進化を遂げる関西大学第一高等学校から目が離せない。
英検チャレンジャーにインタビュー!
英検挑戦はステップ・バイ・ステップで
谷端美里さん
(高1・準2級取得)
英検挑戦はステップ・バイ・ステップで
中学校の授業で、外国人の先生に自分の英語が通じたときに生まれた「話せる!伝わる!」という気持ちが、私を英語好きにしてくれたのだと思います。
初めて英検を受験したのは、中学3年生のときでした。好きになって勉強した英語の力を、3級合格という形で確かめることができて本当に良かったです。高校1年生の今年は、準2級に合格できました。2年生では2級に挑戦します。最終目標はまだ決めていませんが、力をつけながら一歩一歩行けるところまで進んでいきたいです。
将来の夢は、自分自身が積極的に動いて多くの人とコミュニケーションができる仕事に就くことです。英語力を生かしながら、いろいろな国の人と出会えたらいいですね。
高1の1年間で準2級と2級に合格
芝田展彬さん
(高2・2級取得)
高1の1年間で準2級と2級に合格
僕は以前、海外のインターナショナルスクールにいた頃、英語で自分の気持ちをうまく表現できませんでした。そんなとき、日本での受験に備えて、カナダ人の先生が熱心に指導をしてくれました。「僕も英語で気持ちが伝えられる!」と自信がついたとき、いつの間にか英語が大好きになっていました。
今は、英字新聞を読んだり、英語ニュースを見たりしています。英検は限られた時間の中で問題に取り組む点でいい刺激になります。新聞やニュースが親しむものなら、英検は鍛えるものという感じで、違った充実感や達成感があります。
将来は通訳や空港事務など、英語を生かした人と人の間をつなぐ仕事をしたいので、もっと英語力を磨いていきたいです。
STEP英語情報 2009年3月・4月号 掲載