神奈川県のほぼ中央部に位置する神奈川県大和市。全国初の特例市として、「地域のことは地域で考え、決める」という町づくりをめざしている。市立南林間小学校やSELHi指定を受けた県立大和西高校と隣接する市立南林間中学校では、各教科の授業を通じて、生徒同士の「学び合い」によって「学ぶ力」を養っている。全校生徒に受験を呼びかけて取り組む英検も、生徒同士の良き刺激となって、学習意欲の向上につながっているという。
1)英検を知り、安心して受験する
南林間中学校では毎年、年間行事計画の中に2回の英検の試験日程が組み込まれている。毎回、ホームルームを通じて英検のお知らせを配布し、受験希望者は英語科の先生に直接申し込む。同校は英検準会場となっており、「普段から使い慣れている校舎なので、余計な緊張をしない」と生徒たちは安心して試験に臨んでいる。生徒の英検への意識は高く、友達が受けるなら自分も受けよう、と生徒が互いに刺激を受けながら、受験しているという。
各学年で英検への取り組みは異なる。例えば、1年生には、英検がどんな試験なのかを知ってもらえるように、5級の一次試験の過去問を配布し、50分間の授業時間内で実際に解答し、ていねいに解説する。リスニング問題は音声CDで二度繰り返されるので、二度目のときにヒントを与え、解答時間10秒で答え合わせを行う。このように英検を実際に体験してみて、「これなら受けられそう」「もっとがんばらないと難しそう」など感じてもらい、受験へとつなげていく。3年生になると、高校入試を意識して英検を取得しようとする生徒も多いので、選択授業で英検取得を目的としたコマを設け、過去問に取り組んでいる。
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2)推察力がつき、喜びを分かちあえる
横手悦郎先生
「中間や期末試験は成績に直接影響するので、生徒たちも緊張感の中で試験を受けるのですが、英検は成績に影響しないので、実力試しという意識で受験しているようです。学校の成績では歯が立たない友達にも、英検では逆に優位に立てることも起こり得るので、生徒は毎回、英検の結果を楽しみにしています」と、英語科の横手悦郎先生は話す。また、結果を受けて、生徒同士で励まし合い、次につなげようと努力する姿も見受けられ、英検は生徒の学習意欲を高めるための良い刺激になっている。
横手先生が英検を教育に取り入れるのには、次のような理由がある。
まず、英検は、学校の定期試験とは異なり、学年とは関係なく受験できる点だ。「低学年の生徒が3級や準2級とさらに上級のレベルにチャレンジするとき、どうしても未習の単語や文法事項に遭遇することになる。そのとき、生徒は文脈から意味を推察して考えるので本当の実力がつくのです。私たちが生きていくうえでは、未知のものに出くわしたら、推察して行動する力が必要なのです。英語を通じて推察する力を身につけることで、思考力にも幅が出ます。英検は受験者が問題を解きながら、自然に推察する力が身につくように作問されている、質の良い検定試験」である。
次に、生徒に勇気と自信を与えるきっかけになるという点だ。英語を学び始めた1年生にとって、5級に合格することは、「自分にも英語の問題が解けた」という自信をつけ、「思ったよりできたから、次は4級に挑戦しよう」とする意欲を生み出す。また、英語を苦手とする生徒にとっても、5級に挑戦することで基礎基本に立ち戻り、しっかりと力をつけることができる。
「5級合格を目標に、あきらめないで努力する友達の姿は、周りの生徒にとっても良い影響を与えます。そして、その生徒が合格できたとき、周りの生徒たちも自分のことのように喜ぶのです。合格した生徒と喜びを分かち合えるような経験は、ほかにはなかなかありません。だからこそ、個人で受験させずに学校で受験するのです。受験した生徒たちがみんなでドキドキ感を味わい、合格を喜び、たとえ不合格でも励まし合う。そうしたことは学校教育において大切なことですから」
3)小学校との連携も視野に入れて
岩下正文校長
英検に限らず、同校の生徒は学ぶことに対して、意欲的に取り組んでいるという。それは、日頃から授業を大切にし、学び合う力を養う教育の成果であるといえよう。岩下正文校長によれば、同校ではどの授業も生徒が自ら考えることに重点を置き、教員はそのためのヒントを与えながら授業を展開しているという。「英語科では、暗唱やアクティビティなどのグループ活動を取り入れて、授業の活性化を図ってきました。今後は、学区内の3つの小学校と連携した英語教育にも取り組み、小学校での英語活動と本校の英語教育の連携のあり方をさらに研究していきたいですね。本校の英語科教員による小学校での出前授業や、小学校の先生の研修なども予定しています」
今後も同校の英語教育はさらに発展していくにちがいない。そうして高まっていく生徒たちの英語力は、いずれ英検合格というひとつの形となって花開いていくことだろう。
英検チャレンジャーにインタビュー!
理系でも英語力が必要なので、がんばっています
渡邉恭江さん
(中3・準2級取得)
理系でも英語力が必要なので、がんばっています
英検取得者は高校入試で優遇されると先輩から聞いて、3年生の秋までに合格することを目標にしてきました。中学1年で5級、2年で3級まで合格し、今年は準2級に挑戦しています。わからない単語を抜き出して単語帳を作り、声に出して覚えたところ、難しい英文も読めるようになってきました。大学で研究職に就いていた父の影響もあり、将来は理系の大学に進学し、得意分野を生かした仕事をしたいと考えています。理系でも英語の文献などを読むため、英語力が不可欠だと父から言われ、英語の勉強に力を入れています。
客室乗務員になる夢をかなえるために勉強中です
今井羽奈さん
(中2・準2級取得)
客室乗務員になる夢をかなえるために勉強中です
父の仕事の都合で、小学2年までニュージーランドで過ごしました。帰国後は英語を忘れないように英会話教室に通い、小学3年生で5級、6年生で4級、中学1年生で3級とステップアップしています。今年挑戦した準2級は、リスニングも筆記試験も難しく感じました。でも、これからも将来の夢のために挑戦し続けます。高校卒業までに1級まで合格することが目標です。客室乗務員になる夢をかなえるためにも、高校でも英語をがんばり、大学では夢に近づくための勉強をしたいと考えています。
ピアノと英語を両立させて、いつか世界へ羽ばたきたい
溝口明日香さん
(中1・4級取得)
ピアノと英語を両立させて、いつか世界へ羽ばたきたい
小学2年から週1回英会話教室に通っています。外国人の先生とのマンツーマンレッスンなので、内容がわからないときは、先生の表情から意味を推測します。最近、特にリスニング力がついてきたと実感しています。今年は4級に挑戦しましたが、夏休み中に毎日1時間、苦手な長文問題を過去問中心に徹底的に解いて試験に臨みました。私は習字やピアノも習っています。将来は音楽の道へと進みたいので、特にピアノをがんばっています。ピアノと英語を両立させて、世界で活躍できるような実力をつけたいですね。
高校で留学できるように、英語力をつけたいです
村田 尋さん
(中1・4級取得)
高校で留学できるように、英語力をつけたいです
私は小学6年から英検を受け始め、今年は4級に挑戦しました。教本の付属CDを活用して、聞き取れた単語を書き出して勉強することで、リスニング力や単語力をつけました。私が住んでいる地域には、南米やアジアの国籍の人が多く、幼い頃から外国人やハーフの友達がいます。色々な外国の言葉を自然に耳にする環境に育ったんです。ですから、私にとって英語は身近な言葉。高校生になったら留学しようと考えるようになりました。そのためにも、英語力をもっとつけていきたいです。
STEP英語情報 2010年3月・4月号 掲載