「英検スーパージム」で地域ぐるみの
英語力向上を目指す
『坊ちゃん』や『坂の上の雲』の舞台として知られる愛媛県松山市。その地に開校して89周年を迎える聖カタリナ女子高等学校では、長きにわたり英語教育や国際理解教育に力を入れてきた。近年では英検受験も奨励しており、平成22年には全員受験を導入した。さらに、独自の対策講座「英検スーパージム」により、同校生徒はもとより地域の中学生の英検取得もサポートしている。
英検の全員受験導入により英語力習得への意欲が波及
芳野敬三校長
平原澄夫先生
「英語指導力は、本校の“学校力”の一つ」と、芳野敬三校長が誇るように、聖カタリナ女子高等学校は、伝統的に英語教育に熱心な学校として地域に知られる。進学を目指す普通科、多様な進路希望に応える総合学科、5年間で看護師資格取得を目指す看護科の3学科からなり、1,000人以上の生徒が学ぶ。志望する進路も学力も多様な生徒たちに対し、いずれの学科においても、生徒一人ひとりのレベルに合わせ、充実した英語教育を展開している。
長年にわたって英検受験を推奨してきた同校では、普通科の生徒を中心に多くの生徒が受験し、学習意欲向上に活用してきた。そして、「普通科の英語力習得への気運を全校に波及させたい」と、平成22年にすべての学科で英検の全員受験を導入した。英語科主任の平原澄夫先生は、英語学習において「短期目標を持ち、それに向けて努力し、クリアし、達成感を得ることが重要」と考える。年に3 回受験の機会がある英検は、「短期目標」に最適だった。
さらに、普通科の英語科教員である越智美江先生は「学校での評価とは異なる『英検』という全国レベルの資格取得が、生徒の自信や喜びにつながっています」と、英検取得のメリットを述べる。また、合否があることも、指導に役立つ。1点足りずに不合格となり涙を流す生徒もいる。そんな生徒には、不合格は失敗ではないことを伝え、「大切なのは挑戦し続けること。諦めずにがんばろう」と励ましの言葉を掛ける。一方で、「あと1点を取るためには、その何倍もの努力をしなければなりません。しっかりと学んだ結果が点数につながるのだと知る良い機会です」と話す。
受験回は学科により異なり、受験級も生徒によりさまざまだ。総合学科の1年生には、4級からの受験も推奨している。「合格する喜びが生徒を変えます。最初は受け身で受験していた生徒が、自ら次の級に挑戦してみたいと言ってくれたときはうれしいですね」と、越智先生は生徒の成長を喜ぶ。
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英語力を鍛え、体得する「英検スーパージム」
英検スーパージムの公開講座も実施
越智美江先生
同校では、「英検スーパージム」と銘打った英検対策講座を開講している。全員受験導入以前から実施しており、現在は生徒全員の受講を義務づけている。「ジムでトレーニングをするように英語力を鍛える特訓講座」との思いを込め、越智先生はこの名前を付けた。「英語はスポーツと同じ。文法や語彙・表現などの知識は、たくさん練習してoutputすることで体得するものだと考えています」と、英語を使うことに重きを置く。
「英検スーパージム」は、英検の試験前に2~5回、放課後の時間を使って級ごとに開講する。講座では、生徒に英検の過去問を解かせた後、解き方のポイントや覚えるべき表現を徹底的に解説していく。平原先生や越智先生をはじめとした英語科教員が指導に当たり、リスニング対策は常勤のネイティブ教員であるマッカーシー先生が担当する。生徒たちは、英語を読み、書き、聞き、音読し、積極的な姿勢で講座に臨む。英検スーパージムでの過去問演習の成績は毎回記録し、生徒が自分の成長を実感できるようにしている。
同校では、向上心を持ち、自ら学ぶ自律した学習者を育てることを目指しており、「英検、そして英検スーパージムをきっかけに、主体的に学ぶ姿勢が身に付いてきました」と、平原先生は生徒の変化を感じている。昨年度は準1級に1人、2級に13人、準2級に33人、3級に139人が合格を果たした。
「英検スーパージム」の開講により、学校全体の雰囲気も変化した。英語科だけの取り組みにとどまらず、他教科の教員も積極的に過去問演習の試験監督などで協力してくれるようになった。「生徒だけでなく教員も含めて、学校全体で英検に取り組むようになりました」と越智先生は周囲の協力に感謝する。
全校を挙げて英検に取り組む中、学校の力を発信し、英語指導力で地域に貢献したいとの思いから、5年前から毎年、県内の中学生を対象とした英検スーパージムの公開講座も実施している。今年は9月28日に3級と準2級の2講座を開講し、県内各地から中学3年生を中心に、3級に86人、準2級に13人、合計99人もの参加があった。
熱心な指導に真剣に耳を傾ける中学生参加者
この公開講座は、各級とも語彙・文法、長文読解、リスニングの3部構成で、10月の第2回検定に向けた実践的な対策を行った。指導方法やスピードは中学生用にやや易しくアレンジしているが、「実際に本校で行っている指導を体感してほしい。県全体の英語力を向上させたい」と、先生たちも指導に力が入る。公開講座では、丁寧な解説はもちろんのこと、具体的な学習アドバイスに、参加した中学生たちは真剣に耳を傾ける。リスニング対策を担当するマッカーシー先生は「中学1、2年生の少し易しいテキストを読み直してみましょう」とアドバイスする。また、平原先生は準2級の語彙文法を担当し、「単語は書いて覚えるだけでなく、必ず声に出して音から丸ごと覚えること」と、音読学習の大切さを訴える。
「+10(プラステン)プロジェクト」で主体的に取り組む姿勢を養う
国際理解教育にも力を入れている同校では、国際交流が盛んだ。ニュージーランドのセント・メアリーズ校やセークレット・ハート校とは、姉妹校提携を結んで26年になる。築き上げた信頼関係は厚く、研修生の送り出しや受け入れを活発に続けている。また、アメリカ・シアトルには4つの研修校を持つ。2、3週間の短期と1年の長期の海外研修コースがあり、海外の高校に1年間留学しながら3年間で卒業できる「進級留学プログラム」を設定するなど、生徒が海外留学に挑戦しやすい環境が整っており、毎年20人近い生徒が海外経験を積む。留学を経験した生徒は、語学力の向上はもちろん、異文化に触れ、自分自身や自国を見つめ直し、人間として大きく成長して帰国する。また、留学経験者が語る体験は、周りの生徒の知的好奇心を刺激し、学年全体の異文化への興味・関心や英語学習への意欲を牽引(けんいん)している。
また、英検への取り組みや海外研修制度も含め、数年前から、「未来のジブン創造プロジェクト」として「+10(プラステン)プロジェクト」を始動した。目的は、10年後の自分の姿を思い描き、社会で活躍するための力を主体的に身に付けることにある。基礎学力の向上を基盤に、学校生活における学びや活動をspecial・base・humanの3つのプロジェクトに分類し、学力、教養、人間性を兼ね備えた女性の育成を目指す。基礎学力としての英語はbaseプロジェクトに、英検取得はspecialプロジェクトに盛り込まれている。
芳野校長は「10年後の自分像という長期的なビジョンを持ちつつ、短期的な目標を持ってほしい」と、生徒に期待する。さらに、学習を山登りに例え、「人はゴールに達すると、さらに高い山に登りたくなるものです。英語学習も同じ。英検に合格することで達成感と自信を得ることができ、さらに高い目標に挑戦してみようという意欲につながるのです」と、目標を持つことの重要性を強調した。
将来を見据え、生徒の自主性を重視した教育を展開する聖カタリナ女子高校。そこでは、英検合格という目標が、継続的な英語学習への意欲につながっている。
プロフィール
聖カタリナ女子高等学校
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〒790-8557
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FAX:089-934-9041
http://www.catalina.ed.jp/
英検 英語情報 2013年 12月 ・ 2014年 1月号 掲載