1.史的回顧
文化5(1808)年のイギリス軍艦フェートン(Phaeton)号事件を契機に、幕府がオランダ語通詞※に英語の研修を命じたのが日本人の英語学習の始まりとされています。
京都は、千年以上もの長期間「都」であったため、常に上方文化の中心地でした。田辺藩(舞鶴、関が原の戦いでは東軍)も京都府北部の文化の拠点でした。京都府内では、19世紀には寺子屋中心の教育体制が既に確立し、幕末には英語教育も実施されていました。明治の近代教育体制制定の際には、寺子屋教育の素地が役立ったように思われます。その後の度重なる教育制度改革に伴い、学校教育における英語教育も時代の流れに翻弄(ほんろう)されながらも、今日の英語教育へと繋(つな)がっています。
※通詞:通訳。特に、江戸時代、外国貿易のために長崎に置かれた通訳兼商務官。
2.現状
- 小学校:今春の学習指導要領の改訂に伴い、小学校での英語教育が始まることになり、他の自治体と同様に、京都府内の全小学校に於ける英語教育体制作りが始まっています。実施要綱が公表されるのを待ちたく思います。
- 中学校:中学校では、今春の改訂でも現行学習指導要領の基本概念は踏襲されているため、到達目標の徹底のために、更なる創意・工夫が求められていることになります。
英語科では、少人数グループで音声重視・コミュニケーション重視の授業を京都府内全域で展開しています。発音・音読・会話等の練習回数が増え、「使える英語」の学習に取り組めるようになっています。教室内でのコミュニケーション活動が、以前にも増して活発に行えるようになっています。生徒の学習意欲が更に向上することが期待されています。
- 高等学校:英語科では、学校ごとに、学習指導要領の枠内で多様化に対応するカリキュラム構成で英語教育を実施中です。
3.授業参観記
京都府教育委員会・伊藤文昭指導主事のご配慮により、京都府立洛北高校・同附属中学校の授業参観の機会が与えられました。
明治3(1870)年、日本最古の中学校として設立され、二人のノーベル賞受賞者(湯川秀樹、朝永慎一郎)の母校でもある伝統校です。礼儀正しく挨拶をして下さる生徒諸君に返礼しながら、慌しく次々と英語科授業を参観する一日でした。
授業は、今日の英語教育界で推進されている指導理論・指導方法・指導技術を駆使しながら、目の前の生徒の反応に応じて、臨機応変に対応する授業展開でした。各地での研修会・講習会・研究大会で行われる授業実演を、一日で参観したようで、知的に緊張した日でもありました。残念ながら、紙数の関係で詳細を割愛せざるを得ません。関係各位に取材の御礼を申し上げます。