埼玉県編
多「彩」な取り組みで
明日の英語教育を拓く!

本稿ではできるだけ多くの県内の取り組みをご紹介したいと思います。
小学校
●全国の先進校・春日部市立粕壁小学校
平成9年度より文部省(当時)の指定を受け、以来、県等の指定を受け続けています。毎朝(月~金)の「E-タイム」(9分)と週1回の「E-タイムL」(30分)という2つの英語学習時間を設定し、英語授業の開発・改善に取り組んでいます。研究授業も積極的に行っており、県内はもちろん、全国の小学校英語教育をリードしています。
●教育特区として英語教育を行っている地域が多い
県内の6つの市(狭山市、戸田市、新座市、行田市、さいたま市、八潮市)が教育特区に指定されました。このうち、さいたま市では、英会話を人間関係プログラムとともに「潤いの時間」の一貫として捉え、英会話を通してコミュニケーション力育成を目的としてきました。また、小学校5年生から中学校3年生までのカリキュラムと全時間の授業案を冊子にして、市内の全小中学校に配布しています。
●「拠点校」が多い
文部科学省が小学校英語教育での「指導方法等の確立を図るため、地域の学校のモデルとなる拠点校」を指定しましたが、埼玉県では65校が指定されており、全都道府県で最も多い数となっています(全国で614校)。教育特区の市は含まれていないので、県内ではさらに多くの小学校が英語教育の研究・開発に取り組んでいることになります。拠点校は各校独自のカリキュラムを策定したり、地域内外の先生方に授業を公開したり、研究会を開いたりして、外国語活動必修化の本格実施へ向けて、地域のリーダーとしての役割を果たしています。
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中学校
●定期テストで使えるスピーキングテスト
埼玉県中学校英語教育研究会(中英研)が昨年、「1分間でできるスピーキングテスト」を開発しました。平成17年度に文部科学省が実施した「話すこと」の全国調査を参考に、1人の試験時間が1分で、40人のクラスでも50分授業でできることを想定しています。また、学習指導要領を踏まえており、テスト結果を学期の「話すこと」の成績として活用できるよう、配慮されています。そのほか、実施方法を具体的に説明したビデオを収録したCD-ROMも付いており、現在2年生用と3年生用が発売されています。ALTと組めば、生徒1人が合計で2分間話すことが可能。昨年度は試行ということで、県内で無料配布されました(今年度から有料)。詳しくは中英研事務局(埼玉大学教育学部附属中学校英語科、048-862-2214)まで。
●入間地区の英語教材
県西部の入間地区の先生方が中心になり、地区の市町村の名所・行事・名産品などをテーマにした教材が作成されました。『15 Stories of Iruma-chiku』と名づけられたこの教材は、それぞれのテーマを紹介した英語の読み物、地区を訪れた外国人との対話文、TFやQAでの内容確認、最後はテーマに即した自己表現のアウトプット活動で構成されています。教材は地区内の全中学校にCD-ROMで配布され、選択授業などで活用されています。その後、この取り組みは広がり、現在では県内各地を紹介する『15 Stories of Saitama-ken』が作成され、第4版まで発行されています。
●スピーチ大会
スピーチ大会は他県同様、本県でも10月に県大会が開かれています。全国大会である高円宮杯での優勝者も輩出しており、レベルの高さが伺えます。
●入試に英作文
埼玉県の公立高校の入試では平成14度からまとまった量の英語を書く作文問題が出題されています。例えば、平成18年度入試では、タイプの異なる4つの町の絵が示され、そのうちのどこに住みたいかを理由を添えて5文以上で書くという問題が出ています。埼玉県内の中学生の「書く力」に好影響を与えていることでしょう。
●第33回関東甲信地区英語教育研究協議会 (関ブロ)埼玉大会
平成21年11月13日(金)の開催に向けた取り組みが県の中英研と入間地区を中心に進んでいます。全体会は所沢の「ミューズ」にて行われる予定で、授業会場は所沢市内の中央中学校、東中学校、安松中学校です。
高校
●SELHi指定校が多い
Super English Language High School(SELHi)に指定された県内の高等学校は6校。東京、京都に続き、北海道と共に3番目に多い数です。和光国際高校はlearners autonomyと確かなコミュニケーション力の向上を目標と定め、英語力のみならず学習力の向上を目指しました。蕨高校はリーディングを中心に、四技能の育成を図った授業の構築を目指しました。春日部女子高校は中・高のギャップを埋め、やる気と基礎学力向上を図る取り組みで授業の改善を行い、昨年12月には文部科学副大臣の訪問を受けています。この他、伊奈学園総合高校、南稜高校、松山女子高校が指定を受けています。
●ディベートに強い!
埼玉県の高校は英語でのスピーチやディベートが盛んです。特に、2006年度に始まった「全国高校生英語ディベート大会」では、県内の高校が常に上位に名を連ねており、2007年度の第2回大会では春日部女子高校のチームが全国優勝を果たし、日本代表としてワシントンDCでの世界大会に参加しました。第3回全国大会でもベスト8のうち3校(伊奈学園・蕨・さいたま市立浦和)が埼玉県勢で、伊奈学園が準優勝に輝きました。この伊奈学園はSELHi指定時にプレゼンテーションやディベート、ネゴシエーションを中心とした指導が研究テーマで、現在でも県内の高校生ディベートの中心的存在です。また、英語弁論大会も50年以上の歴史を持つ、レベルの高い大会です。
小中連携の取り組み
●深谷市の取り組み
「『英語が使える日本人』の育成のためのフォーラム2008」において、深谷市教育委員会が平成19年度「英語教育優良教育委員会・学校文部科学大臣表彰」を受賞しました。おもな活動としては、まず小学校英語教育の年間カリキュラムを作成しました。また、15年ほど前からALTらによって書き貯められていた英文をリライトし、pre-、while-、post-reading活動等を付した中学生向け地域教材も作成しました。さらに、市内を3つのブロックに分け、ブロック内の小中学校が授業を公開し、授業後に小中の教員で研究協議を行っています。
その他
●自主的な勉強会・研究会が多い
県内各地で公的・私的な勉強会が多数開かれています。一部をご紹介しますと、中学校では、各地の中英研支部のほか、埼葛地区の「SETC&ASTEK」、北足立地区の「KES」「四季の会」、大里地区の「北部地区中学校英語教育研究サークル」、秩父地区の中学秩父「JE塾」、さいたま市のCUE(「教師力」パワーアップ講座)、高校では埼玉高英研があります。また比企地区、大里地区には中・高の英語の先生方による研究会もあります。
この記事を書くにあたり、県内の先生方にどのような取り組みがありますかとお伺いしたところ、たくさんの方々からお返事をいただきました。このネットワークの強さも埼玉県の強みです。できるだけたくさんの取り組みをご紹介しようと努めましたが、私の不勉強からご紹介できなかった取り組みや団体があるかと存じます。どうぞお許しください。
STEP英語情報 2009年3・4月号 掲載