今、教師を取り巻く状況は厳しい。であるなら、依存し合い、支え合うことができる仲間と学び合いの場が必要であろう。自主研修・研究会はそれを提供してくれる。
動き出した中学英語自主研究会
栃木では、次のような中学英語自主研究会が動いている。
1つは宇都宮英語研究会で、月例会を第3もしくは第4木曜日の夜7時から、市の教育センターの一室を会場に開いている。少ないときは4~5名、多いときは10数名の参加者となる。
手探りでの会の運営ながら、最近では小学校教師も参加し、悩みを打ち明けながら授業研究を重ね、昨年11月に「小学校英語活動について学ぼう、英語授業力アップ」、今年3月には「第29回北原・田尻の辞書指導ワークショップ in 栃木」を主催し、ネットワークの拡大を図っている。最近はメーリングリスト(ML)での活動も始めた。
次は上都賀英語授業研究会である。毎月土曜か日曜日の午前に、鹿沼東中学校を会場に求道的(?)な授業力アップワークショップ、録画ビデオによる授業研究などを実施している。MLでの情報・意見交換も常時行っており、そのやりとりの激しさ(?)は、真剣勝負で授業作りをし、生徒とかかわろうとするメンバーの意気込みの現れである。
昨年は「弾丸インプット」指導法提唱者の川村光一氏を招いてのワークショップ、今年2月には「小学校英語教育セミナー in 鹿沼」を主催した。宇都宮自主英語研究会との交流もある。
この他に「下都賀の英語教育を考える会」では、吉田研作・上智大学教授を招くなど、これまでに2回の講演会を主催してきた。
この3つの自主研究会が連合して何かを企画しようという話も出ている。
勤務校で、地域で、既に数多くの問題を抱えながらも、いや、だからこそ助け合おうと、なんとか時間のやりくりをし、研鑽(けんさん)に励む英語教師の姿がここにある。
次を見るopen
岐路に立つ小学校英語と自主研究会
小学校英語活動指導者養成研修の様子
栃木では7校が研究開発校となり、それ以前に何らかの形で7つの英語特区が実践研究をしていた。
さらに、那須烏山市は昨年度から英語コミュニケーション科を小中一貫プログラムでスタートさせている。また、宇都宮市では独自のカリキュラムやシラバスのもとに、小中一貫教育を地域学園という形で構想し、平成24年度から全市で実施する計画である。
宇都宮大学でも、平成17~19年度の3年間、県の委託で「栃木県小学校英語活動指導者養成研修」を担当し、毎年80名、計240名の小学校教師の研修に関わってきた。
わずか4日間の研修ながら、指導力を身につけようとする参加教師の熱意と意欲に感銘を受けてきた(初回の参加者の中には小学校英語反対の教師もいたが)。それと平行して、大学の助成金を活用し、小学校英語ワークショップを数回開催しており、最近は小中連携セミナーを2回開催している。
シラバス開発、教材教具、指導者研修のどれをとっても、まったく不十分ななか、子どもたちのために懸命に英語活動に取り組む小学校教師は多い。
全国的にそうであるように、小学校英語は、これまでの成果を十分に生かせるかどうかの岐路に立たされている。目先のことにとらわれた拙速な取り組みは、なんとしても避けたい。
そんな想いで、現在、小学校教師の英語自主研究会を発足させようとしている。未来を見据え、立ち止まり、振り返り、思索し、進むことができる研究会。児童の反応次第でブレーキ、アクセルをしっかりと踏みかえる教師の集まりである。
SELHiと自主研究会
県内では2つのSELHi校があった。宇都宮北高校と白大学附属足利高校である。前者では運営委員として授業をさせてもらい、後者では間接的にアドバイスをするという形で関与した。
高校では、受験指導のために仕方なく(?)協力しあうことはあっても、1つの科が一丸となって授業改善に取り組むというのは珍しいことであろう。2校ともそれをかなり成し遂げた。
40代後半の教師が自分の授業をなんとか英語で通そうとし、ICTを取り込んで授業を活性化しようとするその姿に、私はいたく感激した。「ここのSELHiはうまくいく」と直感した。決して優れているとは言えないが、真摯(しんし)なその言動に、生徒は暖かい反応を示していた。そして、授業参観している同僚の目は、「自分も変わらなくては」という輝きを放っていた。
数か月後の公開授業研究会でも、再び、その教師の授業は感動を呼んだ。英語による授業もICT活用も、自分のものとし、レベルが数段上がっていたのである。
多くの場合、教師の自己研修を鼓舞するのは、仲間を得たときである。SELHiはそれを証明することになったと思う。うまくいった場合もいかなかった場合も、SELHi後、継続しているかいないかも、「自主研修・研究の精神」がそこにあるかないかで決まっているように思われる。
「英語が使える日本人育成構想」が、英語で英語の授業をするという教師の数を増やしたことは確かである。そこに広がりとつながりが出てくることを期待してきたのだが…。
そこで、身近な若手高校教師を焚(た)きつけてみた。「自主的に自分たちで研究会をやったらどう」と声をかけ、それなりの感触を得ている。この記事が出る頃には、高校の自主研究会が始まっていることを期待する。
渡辺研究室の月例研究会
渡辺研究室 月例研究会にて
手前味噌になるかもしれないが、最後に、宇都宮大学での月例研究会を紹介する。これは、8年前に出会った内地留学の先生方と一緒に始めた会である。
小中高の教師、企業人、そして学生や院生が出入りする7年間だった。月例会の他に、春夏の合宿、関東甲信越英語教育学会や全国小学校英語教育学会の開催、国内外の学会発表、ワークショップの企画・実施、科研費の研究等々、小規模な自主研究会でありながら、いろいろな活動を繰り広げてきた。
そんな月例会もいよいよ終止符を打つことになる。それはさらなる出会いを求めてのものであり、すべての終わりを意味するものではない。
人は「出会いによって絆を広げ、別れによって絆を深める」そうです――メンバーの1人が解散にあたりMLに書いてくれた言葉である。
その通りだ。
絆を深める別れ、それができる仲間。そんな研究会とこれからも関わっていきたい。
STEP英語情報 2009年5・6月号 掲載