6 年間のゆとりあるカリキュラムで豊かな人間性を持った将来のリーダーを育成
長野県屋代高等学校附属中学校
2014.12.12
長野県の北部に位置する千曲市屋代は、春にはアンズの花が咲き、秋には木々の紅葉が美しい自然豊かな環境にある。1923 年、長野県埴科中学校としてこの地に開学した同校は、1948 年に長野県屋代東高等学校として生まれ変わり、1963 年に長野県屋代高等学校に改称した。さらに2012 年には長野県初の公立の中高一貫校として附属中学校が開校した。今年度、附属中学校の第一期生が3 年生になり、ようやく3 学年すべての生徒が揃ったばかりの新しい学校を取材した。
長野県初の中高一貫校として実験的な取り組みを実施
塩野英雄校長
長野県屋代高等学校は、県下有数の進学実績を誇るだけでなく、クラブ活動にも積極的に取り組んで数多くの生徒がインターハイに出場するなど、文武両道を具現してきた名門校だ。1992 年には普通科に加えて理数科を設置、2003 年には文部科学省からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けるなど、理数教育において積極的な取り組みを行ってきた。
2012 年、県内初の公立中高一貫校として附属中学校が開校し、新たなスタートを切った。6 年間の教育期間を大きく3 期に分け、中学1 ~ 2年を「基礎期」、中学3 年と高校1 年を「充実期」、高校2 ~3 年を「発展期」とし、6 年間を通して生徒が自分の夢を叶えるための力の育成を目指していく。塩野英雄校長は「高い知性と創造力を備え、幅広く勉強し、他人と関わり合って物事を成し遂げることができる、人間性豊かな将来のリーダーを育てていきたいと思っています。具体的には、中学3 年で受験がない分、生徒が伸び伸びと学習できるカリキュラムを組み、海外留学を含めて生徒たちの望む進路実現が可能となるような力を付けることが重要だと考えています」と話す。
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少人数クラスで生徒一人一人の個性を引き出す
宮澤 宏先生
新設された中学校の真新しい校舎は、廊下で高校とつながっている。生徒たちは班活動(部活動)や生徒会活動を始めとして、さまざまな場面で活発に交流している。文化祭や体育祭も中高合同で実施し、高校1 年生による一人一研究のプレゼンテーションには中学生も参加している。「屋代高校では創立時より、生徒の自主性、積極性を育む教育に注力しており、その伝統が引き継がれ、今でも生徒は自分の意見を積極的に発表したり、質問したりする姿勢を持っています。高校生たちのそういった姿を見ることで、中学生たちは良い刺激を受けているようです」と塩野校長は話す。
授業においても中高教員の連携が行われているが、その中でも密なのが英語教育だ。中学校では週4 時間の英語の授業を2 時間ずつに分け、中学校の英語教師が「読む、書く」を重視した授業を行い、高校の教師が「話す、聞く」を重視した授業を行う。主に中学校を担当する宮澤 宏先生は「授業時数は文部科学省の指定通りですが、教師も、使う教科書も、内容も、まったく違う2 つのタイプの授業を並行して行うことで、4 技能を効率的に育成できると考えています」と話す。授業は高校を見据え、可能な限り英語で行うようにしている。さらに、1 年次には1クラス20名の少人数で授業を進めている。「講座を少人数で編成することにより、教師は生徒全員に目が行き届き、一人一人のつまずきにもすぐに対応できます。また、生徒は授業に集中し、グループワークでも全ての生徒が活動に参加でき、発表できます。少人数制の授業により、生徒の実力は着実に伸びていると実感しています」と宮澤先生は話す。
英検全員受験で生徒の実力を客観的に評価
本郷由美先生
青木裕士先生
昨年度から、中学・高校それぞれに英検全員受験制度を取り入れている。同校では、英語力の習得に対し保護者の意識も高く、以前より英検受験を望む声が多数寄せられていたという。全員受験は、最高学年になる前の気持ちに余裕のある中学2 年次(第3 回)と高校2 年次(第2 回)に設定した。「英検は、定期考査とは違う形で生徒それぞれの英語力を明確にする試験です。また、実用的な英語力を客観的に評価する試験なので、生徒の今後の英語学習の指針になります」と本郷由美先生は話す。
受験級は、中学校では2 年修了時までに4 級以上の取得を目指すこととした。すでに4 級以上を保有している生徒には、さらに上を目指すよう生徒の学習状況に合わせて指導する。青木裕士先生は「英検に合格することが目的ではなく、英検を通して総合的な英語力を付けてほしいと思っています」と、生徒の英語力向上に期待する。
屋代高等学校附属中学校は、来春、第一期生がいよいよ高校に進学する。「80 名の『一貫生』と、外部より入学する『選抜生』が高校では共に学ぶことになりますが、独自のカリキュラムで3 年間を過ごした一貫生が、新しい仲間と一緒にどのような屋代高等学校を作っていってくれるのか、楽しみにしています」と塩野校長は笑顔で語った。
生徒の声
海外で通用する英語力を身に付けていろいろな国の人と友達になりたい
山﨑麻結さん(3年生)
吹奏楽班 準2級取得
海外で通用する英語力を身に付けていろいろな国の人と友達になりたい
幼稚園のころから英語を習っています。5 年生のときに初めて英検5 級を受験しました。英検に合格すると、自分の英語力が上がった事が実感できてうれしいし、とても良い目標になるので、それ以来毎年受験しています。
去年は、初めて学校で全員受験をしました。私の周りには2 級を目指している友達もいて良い刺激になります。今年は私も2 級に挑戦する予定です。学校では、先生方が英検の前になると分からない問題を丁寧に教えてくださったり、二次面接の練習をしてくださったりするので、とても心強いです。
将来は外国に行ってみたいと思っています。もっとたくさん英語を勉強して、いろいろな国に行き、さまざまな話題について話せる友達ができるよう力を付けたいと思っています。
小5 から毎年受験してきた英検中3 で2 級取得を目指します
滝澤みさきさん(3年生)
吹奏楽班 準2級取得
小5 から毎年受験してきた英検中3 で2 級取得を目指します
小学校入学前からずっと英会話教室で英語を習ってきました。英検を受け始めたのは小5 のときで、それから毎年1 級ずつ上の級を受験してきました。ラッキーなことに今まで一度も落ちたことがないので、できればこのまま2 級も合格したいと思っています。
外国の人と英語で話す事は難しいですが、通じるととてもうれしいし、「もっと上手になりたい!」といつも思います。
屋代高校附属中学校では、3 年生の3 学期に希望者はニュージーランドへの研修旅行に行けるのですが、ぜひ参加したいと思っています。将来のことはまだ何も決めていませんが、ニュージーランド研修に行くことで、また次の目標が見えてくるのではないかと今から楽しみにしています。
英検 英語情報 2014年 10月・11月号 掲載