柳川 浩三 (やながわ・こうぞう)
法政大学理工学部准教授。Ph.D(ベッドフォードシャー大学大学院(英国)。日本大学文理学部英文学科卒。神奈川県立高校の英語教師として25年間勤務したのち、現職。専門は英語リスニングおよび言語テスト。趣味は剣道(現在、剣道錬士六段)。
英検2級または準2級の合格を目指しながら、大学入試センター試験英語でも高得点をねらいましょう。
全10回の連載で、真の英語力を鍛える効果的な学習法を伝授していきます。
新緑が気持ちのいい季節となりました。爽やかな気持ちで第2回の講座を始めましょう。
今回は、センター英語リスニング試験の第2問を取り上げます。第2問は、対話を聴いて、最後の発言の応答として適切なものを選ぶ形式です。この問題は、受験生の聴き取り能力を測るだけでなく、応答する力をも問うている点で、受験生のコミュニケーション能力を測る良問だと言えるでしょう。
その反面、第2問は受験生泣かせなところもあります。どのあたりが受験生泣かせなのかをこの講座で学び、対策法をマスターし、今の時期からセンター試験に備えておきましょう。
第2問の対話は、最後の発言が疑問文か平叙文(疑問文以外)かによって、大きく二つに分けることができます。
まずは、平成24年度実施のセンター試験の問題を解いてみましょう。
(例題)
平成24年度 センター試験(本試験) 第2問 問12
対話を聞き、最後の発言に対する相手の応答として最も適切なものを、四つの選択肢(1~4)のうちから一つ選びなさい。
聞き取る英語は、2回流します。
1) If you hurry, you might be able to catch it.
2) The art museum is closed at the moment.
3) There’s a history museum, but it’s a little far.
4) Yes, that’s right. You can say that again.
[ 解答を見る ]
いかがでしたか? この問題は、最後の発言、Is there another museum nearby? が疑問文で終わっているので、比較的すんなりと解けたのではないでしょうか。ただし、Yes or Noで答えられる疑問文であるからと言って、その応答が必ずしもYes や Noで始まらないところがポイントです。うっかりすると、4) Yes, that’s right. You can say that again. を選んでしまいます。本文(対話)を聴くことに集中した後は、じっくりと選択肢を吟味し、消去法を使いながら正答を選びましょう。
[ Script ]
Man: Excuse me. Where is the art museum?
Woman: It’s just over there, but I think it’s closed today.
Man: Oh, that’s too bad! Is there another museum nearby?
[ Words & Phrases ]
● at the moment 「現在」「今のところ」,
● You can say that again. 「その通りだね」
ところで、museumと言えば、一つ思い出すことがあります。私が生まれて初めて訪れた外国は、イギリスでした。大学3年生(21歳)のときです。午前の語学研修が終わった午後、一人でロンドン近郊のThe Musical Museumを訪れようと、寮を出て地下鉄を乗り継ぎ、目的地の近くまで来ました。ところが、The Musical Museumがなかなか見つかりません。そこで、通りすがりの英国紳士と思しき人に勇気を出して尋ねてみました(たぶんこんな会話でした)。
私: Could you tell me where The Musical Museum is?
英国紳士: Pardon?
私: Uhm, where is The Musical Museum?
英国紳士: Musical…?
私: Musical Museum.
英国紳士: Oh, Musical MuSEEEEEEum!!
そうです。このとき初めて、英語を話すときのストレス(強勢)の大切さを身を持って学んだのです。日本語の発音に影響されて、平坦に「ミュージアム」と発音していた自分の誤りに気づきました。
さて、本題に戻りましょう。次は、最後の発言が平叙文で終わる場合です。
平成24年度 センター試験(本試験) 第2問 問8
対話を聞き、最後の発言に対する相手の応答として最も適切なものを、四つの選択肢(1~4)のうちから一つ選びなさい。
聞き取る英語は、2回流します。
1) Or get them right.
2) So watch carefully.
3) You can contact me.
4) Your glasses look fine.
[ 解答を見る ]
いかがでしたか? 疑問文で終わる場合と異なって、平叙文で終わる場合には、対話の場面や状況を短いセリフの中から想像し、文脈に合った応答を選ばなければなりません。とりわけこの対話では、メガネをコンタクトに変えて良かったと思っている男性に対して、メガネがよく似合っていたとする女性の印象が一致していない点に、難しさがありますね。
[ Script ]
Man: I’ve decided it’s time to get contact lenses.
Woman: What’s wrong with wearing glasses?
Man: I think contacts will suit me better.
[ Words & Phrases ]
● What’s wrong with~? 「~はどこがいけないのか」「~はどうかした?」,
● suit~ 「~に似合う」( =go with ~)
さあ、もう一問やってみましょう。
平成24年度 センター試験(本試験) 第2問 問11
対話を聞き、最後の発言に対する相手の応答として最も適切なものを、四つの選択肢(1~4)のうちから一つ選びなさい。
聞き取る英語は、2回流します。
1) Maybe they are cleaner than the others.
2) Maybe they’ve worn them already.
3) Maybe we have to close the shop.
4) Maybe we should wait for a while.
[ 解答を見る ]
この問題は、対話の最後の発言の形式が平叙文でありながら、I wonder ...という、相手に問いを投げかけている形で終わっています。I wonderは、「いったいいつ、冬物をクリーニングに出したらいいのかなぁ」(と困っている)と女性が男性に相談するともなくしているという状況を示しています。この状況をつかめるかどうかが、解答へのカギとなります。それに対する男性の助言(つまり、回答)は、4) Maybe we should wait for a while 「もう少し待ったほうがいいかも」ということになるわけです。
[ Script ]
Woman: The weather has been changeable.
Man: Yes. It was warm yesterday, but we had snow this morning.
Woman: Yeah, I wonder when we can send our winter clothes to the cleaner’s.
[ Words & Phrases ]
● changeable 「(天気などが)変わりやすい」
● for a while 「しばらくの間」
いかがでしたか? センター英語リスニング 第2問は、意外と手ごわいでしょう。でも、安心して下さい。英検準2級のリスニングpart1でしっかり練習をしておけば、対策は万全です。続いて、英検の問題を見てみましょう。
英検準2級 平成24年度第3回 リスニング part1 No.8
対話を聞き、その最後の文に対する応答として最も適切なものを、放送される1, 2, 3の中から一つ選びなさい。
英文は一度しか読まれません。解答時間は10秒です。
◎選択肢は放送されます。
[ 解答を見る ]
この対話は平叙文で終わっているので、疑問文で終わっている対話よりは、場面と状況を思い浮かべて少し頭をひねらないといけませんね。でも、文脈をしっかりとつかんだ上で、消去法で選択肢を見ていけば、おのずと正解は、1 Oh. Well, I’m glad you’re all right. しかないことに気がつくはずです。
[ Script ]
Woman: Hello. Can I help you?
Man: Hi. I’m Henry from downstairs. I heard a loud noise from your apartment. Is everything OK?
Woman: Yes. I just dropped a heavy box of books.
1 Oh. Well, I’m glad you’re all right.
2 Sorry. I don’t have any boxes.
3 Sure. I’ll lend you some books.
[ Words & Phrases ]
● I’m glad (that) ~ 「~してうれしい」(I’m happyよりもややていねいな表現)
最後に、センター英語リスニング試験第2問と英検準2級のリスニングpart1の形式の相違と、そこから見えてくるセンター英語リスニング本番の解答手順のポイントを解説しましょう。
■表1: 最後の発言の応答として適切なものを選ばせる問題形式の比較
センター 英語 リスニング試験 第2問 |
英検 準2級 リスニング part 1 |
|
---|---|---|
問題の放送 | 英文は2回読まれます | 英文は1回しか読まれません |
選択肢の提示方法 | 問題冊子に印刷 | 対話の後に音声で提示 |
選択肢の数 | 4つ | 3つ |
表1のように、センター英語リスニング試験第2問では、選択肢が問題冊子に印刷・提示されているので、受験生は対話を聴く前にそれを見ることができます。しかし、本文を聴き取ることよりも選択肢を選ぶことを優先してしまうと、作問者のワナにハマってしまいます。まずは内容を聴き取ることに集中してください。対話を聴き終えて初めて選択肢を見るくらいが、正解を外さないポイントだと思います。これについては、次回の講義で詳しく触れます。ただし、人名や地名などの固有名詞を含む選択肢のみ、事前にさっとチェックしておくといいでしょう。センター試験では本文を聴くチャンスが2回あります。1回目で聴き取れない部分があったとしても、2回目でカバーできる可能性は高いので、気持ちに余裕を持って臨んでください。
一方、英検ではセンター英語リスニングとは異なり、選択肢が音声で提示されます。したがって、対話を聴き終わるまで選択肢を知ることはできません。その結果、対話を聴くことに集中せざるを得ません。英検で対話そのものを聴き取る集中力と能力をしっかりと養っておくことで、センター英語リスニングの第2問でも高得点が期待できるでしょう。
今回はここまで。次回は、センター英語リスニングの第3問(A)を取り上げます。お楽しみに。
法政大学理工学部准教授。Ph.D(ベッドフォードシャー大学大学院(英国)。日本大学文理学部英文学科卒。神奈川県立高校の英語教師として25年間勤務したのち、現職。専門は英語リスニングおよび言語テスト。趣味は剣道(現在、剣道錬士六段)。
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