国際基督教大学でIELTS全員受験がスタート

2013年03月12日

国際基督教大学でIELTS全員受験がスタート

国際基督教大学 日比谷 潤子 学長

国際基督教大学(以下・ICU)は日本のグローバル人材育成の先駆け的存在として、創立以来、「国際的社会人」の育成を主眼としてきた。平成24年度文部科学省「グローバル人材育成推進事業」(タイプA:全学推進型)に採択されたことを受け、同大では学生の英語運用能力を測定する試験としてIELTSを採用し、英語教育プログラムを修了した学生全員に受験を課すこととなった。ICUは今後どのような教育を目指していくのか。日比谷潤子学長に今後の取り組みについて聞いた。

グローバル人材に必要な3つの力を養成

ICUは「国際性・キリスト教・学問」を使命に掲げ、その実現に努めている。これまで、英語と日本語のバイリンガリズムに基づくキャンパスのグローバル化をはじめ、さまざまな取り組みを通じて多くの有能な人材を世界に輩出してきた。そして現在、社会で求められているグローバル人材の育成にあたり、ICUが育もうとしている学生の力について、日比谷学長は次のように説明する。

「まず、生涯を通して学び続ける力です。大学を出て社会人になったら学びは終わり、というのではなく、あらゆるかたちで学び続け、新たな知に出会い、一生成長し続けることのできる人材を育てたいと考えています。次に、異質な他者との出会いにより、自らの価値観をとらえ直す力です。大学のグローバル化は、日本人学生を海外に送り出すことだけではありません。日本ではキャンパスの国際化が遅れています。本学でもさらに学生や教員の多様化をはかり、自分とは異なるものと出会えるチャンスを広げてもらいたいと思います。そして、英語でのコミュニケーション力、特に自分の考えや専門分野について他者にもわかりやすく伝える力を重視し、ライティング力の強化を目指しています」

ELAで英語運用能力を身につけ、修了時に全員がIELTSを受験

 これらの力を養成するため、ICUでは「英語運用能力のさらなる伸長」、「英語開講専門科目履修を通じた情報発信能力(ライティング)の涵養」、「教育目的達成の具体的検証としての単位取得を伴う海外留学」の3点を本事業の構想の柱として定めた。

「本学では、4月入学生に対してリベラルアーツを学ぶための英語運用能力および思考力と技術を身につける「リベラルアーツ英語プログラム」(ELA:English for Liberal Arts Program)の履修を必須としています。平成24年度より、このELA修了時に全学生がIELTSを受験することを課しています。学生の目標到達度を測るだけでなく、IELTSは海外の大学に留学する際の英語力認定基準として使用できるため、留学への動機づけとなることを期待しています」

また、ライティング力強化のため、ELAでは全員に「Research Writing」という英語での論文作成の手法を学ぶ科目を課している。さらにELA修了後も、英語開講の専門科目におけるライティング力強化のため、教員の他にレポート作成を支援するチューターを授業に配置する「Wコース」を設置する。学生が英語でレポートや論文を書くための支援を行う。

さらに、単位取得のできる海外留学プログラムの拡充を進めている。日比谷学長は、「これまでは1年間の交換留学が中心でしたが、夏季休暇を利用して参加できるサマープログラムや、留学を伴う理系分野における共同研究など、学生が参加しやすい短期プログラムを整備していく計画です。留学先についても、従来のアメリカ・ヨーロッパに加え、アジア各国への派遣に力を入れていきたいと考えています」と話す。

留学時に使え、学生へのメリットも大きいIELTS

ICUでは数年前よりIELTS受験を推奨してきたが、本事業に採択されたことを機に、ELA修了生全員に受験を課すこととなった。「私たちとしては、一人でも多くの学生に海外留学を経験してほしいと考えていますので、ELA修了時に目標達成度を測る試験は、留学時の英語力認定基準にもなるものというのが第一条件でした。さらに、IELTSは4技能がバランスよく測れ、特にライティングの試験がしっかりしているので、私たちの目指すところと合致していました。ペーパーベースであるため慣れ親しんだ試験環境で受験できること、コンピューターのスキルなど英語力以外の要素に左右されないことも、学生にとっては大きなメリットだと思います」

そして、「現在、本学では留学申請者の約半数が、IELTSのスコアを提出しています。IELTSは英国系というイメージがあるかもしれませんが、それは一昔前の話です。今や米国でもほとんどの大学でIELTSを採用していますし、世界の多くの国で通用する試験になっています」と述べる。

ICUでは、「グローバル人材育成推進事業」の補助金の一部をELA修了時のIELTSの受験料にあてるため、学生が受験料を負担する必要はない。今回のIELTS導入により、留学希望者数の増加も期待しているという。
 

学生と教員の多様化、キャンパスのグローバル化を進める

本事業の構想を軸に、ICUではこれまで以上にグローバル人材育成に力を入れる計画だ。「今後は、アジアとのつながりを強化していきたいと考えています」 と話す日比谷学長。「シンポジウムや学会など、大学全体としてはアジアの大学との連携も増えていますが、今後は学生レベルでの交流の機会も増やし、より多 くの学生に留学先としてアジアを選んでもらえるよう、大学としても力を入れていく予定です」と意気込む。

そして、60年前の創立時より推進してきた学生と教員のグローバ ル化を、より一層進めていく方針だ。「『世界を舞台に人類の平和と共存に実践的に貢献できる人材を育てる』というICUの教育目標をさらに高いレベルで実 現できるよう、今後も質の高い教育の提供に努めていきたいと思います」。グローバル人材育成にいち早く取り組んできた同大の今後の展開に、注目が集まって いる。
 

国際基督教大学 Profile

キリスト教精神に基づき「神と人とに奉仕する」ことを理念に1953年に開学。日本最初のアメリカ式リベラルアーツ・カレッジであり、徹底したバイリンガリズムを標榜している。「教養学部アーツ・サイエンス学科」の下に30を超える専修分野(メジャー)を持ち、多くの授業が英語で開講されるなど、特色ある大学として国内外に広く知られている。