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  • 2023年05月17日
  • 公益財団法人 日本英語検定協会
  • ビジネステスト事務局

 

本セミナーのポイント

・英語学習のモチベーションを高く持ち続けるためのマインドセットとは?
・英語力UPにつながる効果的な学習法やグローバルに活躍するために必要な英語力とは?

第1部では、『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称:ビリギャル)のモデルになった小林さやか氏より、自らの経験や研究分野から得た英語学習を継続し続けるためのマインドセットについてお話しいただきました。第2部では、世界で最もイノベーティブな教育を実践する英語教師に贈られる、Pearson ELT英語教育ティーチャーアワード2017アジア人初受賞者の英語教師・嶋津幸樹氏が、英語スキル向上に向けた学習法やおすすめの教材、グローバルビジネスに必要な英語力を証明できるスコアについて紹介しました。また、お二人には受講者から寄せられた質問に答えていただきました。

第1部
“英語×キャリアアップセミナー ~英語力でキャリアを切り拓け~”

 

教育研究者
小林さやか氏

第1部の講演に登場したのは、現在、米国ニューヨークに在住、コロンビア教育大学院にて認知科学を研究する小林さやか氏です。「勉強が大嫌いだった私が、30歳を越えてからも目標に向かって勉強を続けている。今も、新しい道で悪戦苦闘しながら楽しい毎日を送っています」と笑顔で語る小林氏は、『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴・著)の主人公でありビリギャル本人です。成績が学年ビリで、学校の先生からも問題児扱いされていた女子高生が、一人の塾教師との出会いによって成長を遂げていく物語は、多くの人に感動を与えました。実は、この書籍が出版されたのは、小林氏が大学を受験してから7年後のこと。小林氏は、大学卒業後、ウエディングプランナーとして活躍していましたが、『ビルギャル』が出版されたことにより講演の依頼が殺到。彼女のキャリアは『ビリギャル』の書籍化・映画化によって大きく変わったといいます。

そんな中、『ビリギャル』のストーリーをもっと科学的に説明できるようになりたいと、次なる目標が生まれます。日本の大学院で学習科学や認知科学の分野を学び、公立中学校との共同研究を論文にまとめ、修士課程を修了し、教育研究者としての道を歩むことになりました。さらに、恩師の坪田信貴先生から「この先、教育に関わりたいなら一度外に出てみないと日本のことはわからないよ」という一言に刺激を受け、3年前より留学を決意。そこから英語を猛勉強して、2022年秋より「子どもの能力を信じて引き出すことができる教育者の育成」を研究テーマに、コロンビア教育大学院で忙しくも充実した日々を送っています。そんな小林氏が、留学を実現するために英語学習を続けてきた過程には、社会人が英語学習を持続させるためのヒントが満載です。小林氏は、「英語学習を続けるうえで最も大切なのは、マインドセットとメンタル」だと語ります。これまでのご自身の経験と科学的な根拠を盛り込みながら、英語学習を継続するための5つのポイントを紹介しました。

1. 「感情」を伴う目標設定を持つ。ワクワクしていないとやっていられない。

―これは、小林氏が大学受験の際も大切にしてきたこと。人間は「感情の生き物」なので、感情が揺さぶられないと、長期間にわたって努力し続けることは至難の業です。「アメリカの青い空のもと、芝生の上で洋書を読みながらサンドイッチを頬張りたい」「ニューヨークのおしゃれな街に住みたい」など、自分自身がカッコイイと思うものやワクワクするイメージを持つことが大切だといいます。そのためには、日頃から自分が何に心を惹かれるのかを知っておくことが重要。感情を軸に目標を設定することが、モチベーション維持につながるといいます。自分の感情がわからない場合は、ノートに書き出したり、人に話したりしてモヤモヤした胸の内を言語化することがお勧めだと話します。

2. 思い込む。根拠のない自信を持つ。

―これまで中学受験や大学受験を経験してきた小林氏の成功体験の裏には、必ず「私ならできる!」という思い込みがあったといいます。「日本では、新しいことに挑戦しようとする人に対して、”現実を見ろ””調子に乗るな”と言う風潮が見受けられますが、ポジティブな思い込みは、割と激しく持った方がパフォーマンスに反映する」と実感しているそうです。小林氏は、これまでの講演活動でも繰り返し「根拠のない自信を持ちましょう。飛び込む勇気を持ちましょう」と伝えてきました。「失敗を恐れて踏み出すのをやめるのではなく、一歩を踏み出す勇気を持ってほしい」と勧めます。

3. 戦略を立てる。(現在地→目的地の距離)÷制限時間

―留学を決意した小林氏には、「認知科学、発達心理学、学習科学などの分野が充実したランキングの高い大学院に行きたい」という目標がありました。そこで必要となるのが、TOEFL iBT 100点以上、IELTS7.5以上のスコアです。目標とするスコアをクリアするために、1日8時間という学習時間を設定。まずは、「基礎を固めていく」ことに専念したそうです。ポイントは、中学の英文法を3日間で短期集中的に頭に戻すこと。また、語いを増やしていくために単語を「覚える」のではなく、何回も繰り返し「通る」という意識が大切だといいます。1冊の単語帳を完璧に習得するために20周する。それに加えて、自分が選択した英語試験の過去問を1つのテキストにつき3周繰り返し解くことを実践したそうです。そのほかにも、本番に向けた時間配分の練習やスランプを乗り越えるために頑張っているのに上達が感じられない時期「プラトー現象」があることを知っておくことなど、目標達成に向けた具体的な取り組みについてご自身の経験を交えながら紹介。英語学習を続ける過程で重要なのは、「“小さなできる”を“大きなやる気”に変えること」だと語りました。

4. 成功者のメンタルをつくる。メンタルが9割。

―「恩師の坪田先生は“受験はメンタルが9割”ということを常に口にしていましたが、認知科学を学ぶようになって本当にそうだと実感しています」と話す小林氏。その中でも「自分はこうなります」と公言する自己成就予言は、目標を達成するためには有効だといいます。また、「あの人を見返したい」というような強い感情は非常に強い力を持っているため、それをプラスの力に変えることでモチベーション維持やパフォーマンスの向上に活かしてほしいと語りました。

5. 最適な環境を作る。必要なものとそうでないものを見極めて。

―小林氏の留学後の夢は、英語スキルを活かして起業して、これまでのご恩を還元し、社会にインパクトが残せる人になることだといいます。「日本の外に出たからこそ見えた、日本の素晴らしさを伝えていきたい」と語りました。講演の最後には、受講者からの質問に回答し、英語を学ぶ社会人に向けて「海外に一歩を踏み出すためには、英語学習の時間を確保するなど、様々なことを手放さなければならない場面も出てきます。しかし、必ず新しい可能性や出会いにつながっていくので、“自分の人生は自分で舵を取るんだ!”という気持ちを大切に、前に進んでほしい。“意志あるところに道は開ける”」という熱い応援メッセージで締めくくりました。

小林氏の留学後の夢は、英語スキルを活かして起業して、これまでのご恩を還元し、社会にインパクトが残せる人になることだといいます。「日本の外に出たからこそ見えた、日本の素晴らしさを伝えていきたい」と語りました。講演の最後には、受講者からの質問に回答し、英語を学ぶ社会人に向けて「海外に一歩を踏み出すためには、英語学習の時間を確保するなど、様々なことを手放さなければならない場面も出てきます。しかし、必ず新しい可能性や出会いにつながっていくので、“自分の人生は自分で舵を取るんだ!”という気持ちを大切に、前に進んでほしい。“意志あるところに道は開ける”」という熱い応援メッセージで締めくくりました。

第2部
“教えて、嶋津先生!グローバルに活躍するために必要な英語力って?”

 

英語教育起業家
嶋津幸樹氏(Pearson ELT英語教育ティーチャーアワード2017受賞)

第2部に登場したのは、英語教育起業家の嶋津幸樹氏です。週刊英字新聞『The Japan Times Alpha』への連載や、IELTSに関する書籍を多数出版し、2017年にアジア人として初めてPearson ELT英語教育ティーチャーアワードを受賞した実績を持っています。冒頭ではご自身が英語学習に目覚めたきっかけについて、「実は、私も最初から英語ができたわけではありません。高校2年生の時に偏差値が50程度だったのですが、人に教え始めたら4カ月後には偏差値80を越えるという経験しました。そこから復習して終わりではなく、人に教えたら伸びるということに気づいたのです」と述べました。

嶋津氏は、17歳の時に海外進学塾EUGENIC(現Academia)を創業し、生徒が他の生徒に教えることによる英語体得メソッド「Learn by teaching」を確立、地元・山梨県で700名以上の生徒に指導してきました。その教え子たちは続々と海外大学へ進学し、国内外の有名企業に就職するなど、グローバル人材として活躍しています。現在は、教育ベンチャー企業で、中高生向けの英語学習と海外進学に関する講演会やワークショップの開催、中高生向けオンライン英語学習プログラムの監修、IELTSを広める活動などに力を注いでいます。そんな英語学習のエキスパートである嶋津氏が、社会人の英語学習者に向けて、「4技能別英語学習法」やおすすめの教材について紹介しました。

Listening

−おすすめ教材は、6分間の対話形式で進行するラジオ番組『BBC LEARNING ENGLISH』(意図的学習)、バイリンガルニュース『英会話Podcast』(偶発的学習)、リスニングの学習としては、全部英語で聞くよりも、日本語と英語をミックスして聞く方が効果的です。嶋津幸樹氏が自身の生徒向けに配信している『リンガライブ』では世界中からゲストを招待して日本語と英語で大量にインプットすることを目的としています。

Reading

−『READING FOR SPEED AND FLUENCY』や『IELTSの総合対策スピードマスター入門編』などを紹介。一番のおすすめは、小林さやか氏にも取り組んでもらったという『PRISM READING』。このテキストは、英検準2級から2級レベルの良質な英文が満載で、教養を身に付けながら学ぶことができます。まずは自分の興味のある内容を1日1記事のペースでマスターしていくことをお勧めしています。英語学習教材だけでなく英字新聞や雑誌などもうまく活用していくと良いでしょう。

Speaking

−IELTSの過去問にあるLevel 1の基本的な英文にどんどん飾り付けをして、Level 2、Level 3とレベルを上げてくグラデーションスピーキングについて説明しました。これは英作文にも使えるテクニックです。また、IELTSの評価基準(流暢さと一貫性、語いの豊富さ、文法の幅と正確さ、発音)を意識しながら練習することが大切だといいます。そして重要なのは、まずは基礎を固めること。正確性が低いと IELTSは得点につながらないため、文法書『ENGLISH GRAMMAR IN USE』『1億人の英文法』などを活用しながら、自分のレベルをその都度チェックしたり、わからない文法が出てきたらすぐに引いたりするなど、文法書を辞書代わりに活用すると良い。その他の学習法としては、30個のテーマに対する「1分間スピーチ」の練習をすること。その時に『IELTSスピーキング完全対策』と合わせて『Oxford Collocations Dictionary』などの辞書を活用してさまざまなコロケーション(相性のいい単語同士)を身につけることが大切だといいます。

Writing

−スピーキングと同じく、まずはシンプルな文を書いて、そこにLevelに合わせて飾り付けをしていきます。ライティングもグラデーションしていくことがポイントだといいます。あとは、小林さやか氏の英語指導でもおすすめしたという「100語エッセー」は、ぜひ挑戦してほしいとのこと。これは現在、嶋津氏が、英語学習者向け週刊英字新聞『The Japan Times Alpha』でも連載している効果的な学習法の一つです。そのほかに、Deep Lや英作文を採点してくれるChat GPTの適材適所での活用も勧めました。

また、英語学習においてどこから始めてよいか分からない場合は、まずは現状レベルの把握が必要だといいます。何かしらの英語試験を受けて、A1からC2まであるCEFRという6段階の評価基準の中で、自分がどのレベルにあるかを知ることから始めることが大切です。英語試験の中で、社会人にはGCAS、Linguaskill Business、移住や留学をする人には、ジェネラルからアカデミックまで幅広い英語力を客観的に評価ができるIELTSがおすすめです。そして、英検はIELTSの架け橋として最適な英語テストだといい、「まずは、英検準1級に合格してから IELTSに移行するとよいでしょう」とアドバイスを送りました。

そして「今日からすべき3つの対策」として、「①1日100単語に出会う」「②1日1記事をマスターする」「③感情を伴う目標設定と振り返りを行う」ことについて、ご自身が実践してきたことをもとに具体的な方法を伝授。さらに、「人生の45%が“固定された習慣”に支配されているため、メタ認知を意識し、自分自身がどれだけLazyかに気づくことも大事」との話もしてくれました。

 

講演の最後には受講者からはいくつかの質問が寄せられました。

Q. 1分間スピーキングやライティングのためのネタ帳や成果物は保存や保管をしたほうがいいでしょうか? それともどんどん新しいことをしたほうがよろしいでしょうか?

A. 30個のトピックスに対する成果物は保存した方がいいと思います。このテーマについて聞かれたら、この内容で1分間話そうというものを保存しておく。それを何度も見返す中で、グラデーションしながらレベルアップさせていくことが有効です。

Q. IELTSやアカデミック英語に力を入れてきたせいか、日常会話でも不自然でアカデミックな英語を話してしまう。今後キャリアアップするために自然で幅広い話題を話したいがどうしたらいいでしょうか?

A. SNSで紹介している動画には英語圏で使われるカジュアルな表現から子どもが使うシンプルな表現が出てくるのでぜひ、参考にしてほしいと思います。また、子ども向けの絵本や学習教材、テレビ番組もおすすめです。

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