「本物の英語」の発音を!? 

英国レディング大学の短期研修に参加した際、1カ月間のホームステイをすることになりました。ホストファーザーは、「せっかく英国に来ているのだから『本物の英語』を学んで帰りなさい」と、米国式の私の発音を何度も修正しました。

日本にも地理的な方言(九州弁、東北弁、関西弁など)はありますが、英国は、地理的方言に加えて、社会的階層方言があることで知られています。私の発音矯正をしてくれたホストファーザーは、自称、中流労働者階級の方でしたので、社会的階層方言としては、BBC英語やパブリックスクールで用いられてきた容認発音:Received Pronunciation (RP)でなかったことは確かです。彼の言う「本物の英語」とは何だったのでしょうか 。

 

RP自体が、使用話者の年代によって異なるいくつかの変種として存在しており、純粋なRP話者の存在は5%にも満たないことが分かっています。最近では、テムズ川下流に沿った地域と河口付近で用いられてきた発音:Estuary Englishが一般的に普及してきているといわれています。このEstuary English では、helpの [l] の発音が [u] の発音に近くなったり、sayを [sei] ではなく [sai] と、newは [nu:]、また、stopが [ʃtɒp] と発音されたりするのが特徴です。

 

言語は変化します。発音については経済性の原理が働き、一般的には言いやすいように変わる傾向があるようです。ただし、話者が何らかの価値を認めれば、often [ɒfn] のtのように一度発音されなくなった文字までもが発音されることも起こります。今では、イギリス人の30%ぐらいが [ɒftn] と発音するようになっているといいます。中学校のころ、「“おふとん”って発音するやつがあるか!」と激しく叱られた記憶がありますが、「本物の英語」を話す人たちは今、“オフトゥン”って言い始めています。

(June 2014)

金森先生のPROFILE

金森強
文教大学 教育学部教授

専門は英語教育、音声学、早期英語教育。日本児童英語教育学会理事、小学校英語教育学会理事。小学校~高校のデモ授業と教員研修で全国を飛び回る。講演テーマは、小中・中高連携を意識した指導、統合的な活動の開発・評価、Can-Doリスト作成の在り方、歌・ゲームを利用した英語指導など。著書多数。

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