研究部門Ⅰ 英語能力テストに関する研究
ライティング・タスクとCEFR CAN-DOリストとの関係
― タスク困難度からの探求 ―
研究者:神奈川県/神奈川県立白山高等学校 教諭 大井 洋子
▼研究概要
日本人英語学習者の大半は、Common European Framework of Reference for Languages (CEFR) のA1 レベルに属するのではないかと言われている。では、日本の高校生用の英語教科書で扱われているタスクの大半もこのA1レベルに属しているのだろうか。それとも、同Aレベルであっても、タスクによってその困難度に違いはあるのだろうか。本研究の分析対象として、『英語表現I』の教科書7冊を取り上げ、その中から100の英作文タスクを見つけ、CEFRのレベルに分別した。しかし、A1にのみ属するタスクはなく、書き手の実力によって、A1以上のB ・Cレベルのタスクなるものが大半だった。タスクの内容としては、自己を説明的(narrative)に表現するタスクが半分強だった。他者を詳述(describe)するタスクは1割強であり、議論的(argumentative)なタスクが占める割合はわずかであった。また、タスクの困難度についてラッシュ・モデルを使って分析を行った所、自己紹介に関する英作文のタスクの困難度が一番高いことがわかった。これは、他のタスクに比べ、英文の結束性(coherence)を図るのが難しかったからだと推測される。教師は英作文の指導の際に、固定概念に縛られずに、タスクそれぞれの困難度を考えながら、英作文トピックの提示や扱いを工夫することが求められる。