吉田研作
上智大学言語教育研究センター教授・センター長
専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。
英語を勉強している人の多くは、ネイティブ・スピーカーの英語に近づきたい、と思っているだろう。しかし、いつまで経ってもネイティブのようにはなれない。
ところで、ネイティブ・スピーカーって誰のことだろう。アメリカ人?イギリス人?同じイギリス英語でも、BBCなどのアナウンサーが話すいわゆる RP(Received Pronunciation)がイギリス英語のモデルとさ れることが良くある。しかし、ジェンキンズによると、英国人でRPを話す人は、人口全体の3.5% に過ぎない。
だとしたら、イギリス英語のネイティブ・スピーカ―とは一体誰なのか。イギリスはまだましで、アメリカに至っては、RPに相当する英語さえない。北東部の 英語、ニューヨーク英語、南部英語、中西部英語、カリフォルニア英語、ハワイ英語、ブラック・イングリッシュなど、山ほど種類がある。
ネイティブ・イングリシュというのは、一般には、英語を母語とする人が話す英語のことという意味だが、英語圏の国はどこも移民が多いので、たとえ英語を母語としていても、千差万別の英語が存在する。中には、日本人と大差ないような発音の人もいるのである。
さて、もう一度考えていただきたい。皆さんは誰のネイティブ・イングリシュをモデルにしたいのだろうか。
(December 2011)
専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。