日本語は難しい?

絵を見てこの男性の様子を教えてください。

靴(shoes)をはいてますね。
ジーンズ(jeans、ジーパンは和製英語)をはいてますね。
ベルト(belt)をつけてますね。
長袖の服(clothes)を着てますね。
マフラー(muffler)を巻いてますね。
手袋(gloves)をつけてますね。
めがね(eyeglasses)をかけてますね。
帽子(cap)をかぶってますね。

日本語が母語である皆さんには当たり前の表現ですが、実は外国人がこの様子を説明するのは一苦労だそうです。だって、身に付けているものによって、動詞が 「はく」「つける」「着る」「巻く」「つける」「かける」「かぶる」と変化するからです(ちなみに北海道では手袋を「はく」ということもあります)。

では英語でこの様子を表現するにはどんな動詞を使えばいいでしょうか。答えはなんとすべてwear。色々と区別はしないんですね。さらにはヒゲ(whiskers)をはやす、までwearで表現できてしまいます。

なんてことを言うと、また「日本語は難しい」などという話になりそうですが、実はそうではありません。日本語では区別しないのに英語では区別する、という 表現もあります。たとえば「焼く」。英語にはbake, broil, burn, toast, roast, grill, charcoalなど、たくさんの「焼く」が存在します。たとえばgrillは強火で焼いたり、屋外で焼くこと、toastはパンをこんがりと焼くこと、 charcoalは炭焼きにすること、などです。英語圏の多くでは、生の食べ物を食べることはあまり一般的ではありません。一時期前まで、お刺身を食べる ことにも抵抗があったようです。食べ物には火を通す、という文化的な背景などがあり、様々な「焼く」が生まれたのではないかと考えられています。

そうそう、よく使うcookという動詞にもご注意を。これも「加熱調理する」という意味です。お刺身をcookする、とは言わないことになりますね。

(August 2012)

中村先生のPROFILE

中村典生
長崎大学 教育学部教授

小学校英語教育学会事務局長、言語文化学会理事、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会 連合会)利酒師、俳人協会会員・狩俳句会同人(俳号は中村龍徳〈りゅうとく〉)、前岐阜大学硬式野球部監督など、昼夜を問わず役職多数。専門は英語教育学、第二言語習得。著書多数。

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