つまずきを糧に

一昨年学生たちと一緒に英語学習に関する動機づけの調査をしました。アンケートに答えて下さったのは全国各地の学生、社会人を含め225名。これだけの人数で日本の全体像を明らかにすることはできませんが、いくつか興味深い結果がありましたので紹介したいと思います。

特に驚いたのは、225人中197名(87.6 %)もの人が、英語学習で「つまずき」を経験していたことです。また、その時期については高校時代が50.2%、中学時代が23.1%、小学校の時だとい う回答も1.8%ありました。実際私自身も高校時代に見事につまずき、無残な点数をとって補習授業を受けていた覚えがあります。あれは地獄でした。今とな ればいい思い出ですが...。

さらに、つまずいた経験のあるなしにかかわらず、社会人の40%以上が、今でも何らかの形で英語の学習を続けている、という結果となりました。これを考え ると、今回の被験者に関して言えば、大部分の人が英語学習でつまずき、しかし社会人になってもやはり相当の人が学習を継続している、という構図があること がわかりました。

つまずいても立ち上がり、また学び続ける。もしこんな人たちが全国的にも多いのであれば、つまずかないように指導することに加え、つまずいた人たちをどう ケアするか、あるいはつまずくことは必然で悪いことではなく、「その後が大事」「つまずきを糧に飛躍する」というような指導も必要かも知れませんね。

奇しくも英語に"A stumble may prevent a fall."(小さなつまずきは大きな失敗を防ぐ)ということわざがあります。小さな失敗をすることで、色々なことに気づき、結果的には致命的な失敗を防 ぐことができるかもしれない、というものです。人生にも多少のつまずきは必要、ということでしょう。

(December 2012)

中村先生のPROFILE

中村典生
長崎大学 教育学部教授

小学校英語教育学会事務局長、言語文化学会理事、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会 連合会)利酒師、俳人協会会員・狩俳句会同人(俳号は中村龍徳〈りゅうとく〉)、前岐阜大学硬式野球部監督など、昼夜を問わず役職多数。専門は英語教育学、第二言語習得。著書多数。

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