中村典生
長崎大学 教育学部教授
小学校英語教育学会事務局長、言語文化学会理事、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会 連合会)利酒師、俳人協会会員・狩俳句会同人(俳号は中村龍徳〈りゅうとく〉)、前岐阜大学硬式野球部監督など、昼夜を問わず役職多数。専門は英語教育学、第二言語習得。著書多数。
日本人が英語を話すと、本来の英語にはない母音をやたらと挿入してしまうケースがあります。「じゃんけんグリコ」の回でもお話ししましたが、極端な場合はchocolate[発音記号①]を[chi・yo・ko・re・i・to]、pineapple[発音記号②]を[pa・i・na・tu・pu・ru]といった具合です。一体これはなぜでしょうか。
実は「英語と日本語では許される子音の連続数が違う」ということに原因があります。普通、人間が発する言語音は、「母音を中心にして、その前・後ろに子音がある」という形になっています。その子音が続けて現れる数が、英語の方が多いのです。日本語では母音の前には二つ(例えば謝辞の謝[sha]、竜[ryu]など)、母音の後ろには一つ、それもnだけ(缶[kan]、本[hon]など)しか来ません。一方英語では、例えばstrengthなどを見ると、[発音記号③]のように、母音の前後に三つずつの子音があります。一つの単語だけではなく、次に続く語によっては、もっと子音が続くこともあり得ます。母語が日本語の人は、英語で子音が続くことに違和感を覚え、「日本語の型に合うように本来ないはずの母音を挿入してしまう」というわけです。
さらに、ないはずの母音を挿入して、そこにアクセントを付与してしまうこともあります。dragon[発音記号④]を「ドラゴン(アクセント①)」、trick[発音記号⑤]を「トリック(アクセント②)」としてしまうことなどです。日本人の発音の特性を理解し、こまめに電子辞書の音声機能などで、正しい英語の音声を確認することも大事です。
このように、日本語では子音が連続することは少ないのですが、母音が続くことは多くなります。母音で終わる語が多いことがその一因です。英語の母語話者は日本人とは逆に、母音の連続を発音することに困難を感じるといわれています。
(October 2013)
小学校英語教育学会事務局長、言語文化学会理事、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会 連合会)利酒師、俳人協会会員・狩俳句会同人(俳号は中村龍徳〈りゅうとく〉)、前岐阜大学硬式野球部監督など、昼夜を問わず役職多数。専門は英語教育学、第二言語習得。著書多数。