オーストラリアは、高い教育レベルや就業率を誇るだけでなく、制度やカリキュラムを時代の変化に合わせて向上させています。
連邦政府が教育政策全体を統括しています(各州に教育担当の行政部を設置)が、実際の教育は州が行うので、州によってやや違いがあります。また留学生の受け入れについては、国を挙げて力を入れています。
オーストラリアの小・中・高校の7割は州立校です。基本的に中高一貫校で、男女共学です。義務教育は1年生(6歳)から10年生(15歳、タスマニアのみ16歳)までになっています。
さらに上の高等教育機関には、大学(ほとんどが国公立)と職業訓練校(VET/Vocational Education and Trainingと呼ばれる)があります。
これらへの進学を希望する生徒は、11年生、12年生の進学準備課程に進み、12年生の修了時に統一資格試験を受け、その点数に応じて、希望の高等教育機関に進学します。
オーストラリアでは大学に入学する場合、高校の卒業時点までに、日本の大学で言う一般教養課程の学習内容を修了するのが条件となっています。 日本人がオーストラリアで大学に入学するルートは、大学を直接めざす、ファンデーションスタディ・コースを経由する、VETを経由する、の三通りが考えられますが、この条件があるため、日本の高校を出てすぐ、オーストラリアの大学へ進学するなら、ファンデーションスタディ・コースかVETで学んでから行くのが普通です。
オーストラリアには、41校の国公立大学と2校の私立大学があります。入学1年目からすぐに専門科目を履修するので、大学学部課程は通常3年間。学士課程を優秀な成績で修了した学生は、オナーズ(Honours)と呼ばれる1年間の専門研究コースに進むことができます。
学位取得に要する期間は専攻によって異なり、教育学部や法学部、工学部で4年、建築、歯学、獣医学で5年、医学部は6年程度かかります。学位取得の他に、実践的な技術や知識を身につけるディプロマ(Diploma)や、アドバンス・ディプロマ(Advanced Diploma)などのプログラムがあるのも大きな魅力といえるでしょう。
また日本の大学や大学院に在籍しながら、半年から1年間、オーストラリアの大学生活を経験し、専門分野を探求したい学生には、「スタディ・アブロード」という制度があります。これは、学生の知識の幅を広げ、個人的なチャレンジや異文化体験の機会を提供することを目的としたもので、日本の大学の単位に認定されることも多くなっています。
ファンデーションスタディ・コース
オーストラリアで大学に入学したくても、大学の入学基準に達しない留学生が、進学に向けた準備として1年間入学するコースが、「ファンデーションスタディ・コース」です。
大学で学ぶための英語、ディスカッションや研究・分析の方法、レポートの書き方などの基本学習スキルをトレーニングしてくれます。
期間は約1年間で、大学自体が設置しているコース、大学が認定している教育機関が実施するコースの二種類があります。
各大学は学生が志望する大学・学部によって、どのファンデーションスタディ・コースを選ぶべきか、アドバイスをしてくれます。
日本人留学生の場合、まずファンデーションスタディ・コースに入り、力を付け、慣れてから、学部に進むことがほとんどです。それでも文科系の場合は3年で卒業できるので、ファンデーションスタディ・コースの1年間と合わせて4年間で卒業することができます。
実社会で役立つ知識や技術を身につける
オーストラリアの職業訓練校はVET(Vocational Education and Training)と呼ばれます。職業に直結した専門知識、技術を獲得する教育機関として、各産業界と連携し、社会に根づいています。
州運営の公立校TAFEと、個性ある私立校
VETには公立校と私立校があります。公立校はTAFE(テイフ/Technical and Further Education)と呼ばれ、州政府が運営しています。また私立校では多くの学校が強みのある専門分野を持ち、独自性を打ち出したプログラムを整えています。
専門分野を学ぶだけでなく、大学への道も開けている
VETで取得できる資格は、CertificateⅠという初歩のものから大学院レベルのものまでさまざまです。
短期間で資格を獲得できる利点があるため、社会人が必要な知識・技術を学ぶために通うことも珍しくありません。VETを修了してから大学へ進学したり、編入したりすることは一般的に行われています。多くのVETが大学と提携したり、VETで取得した特定分野の資格と大学の学士号をつなぐ、Diploma to Deglee Pathwaysというプログラムを持ちます。これを修了すると自動的に大学2年、もしくは3年に編入学することが可能になります。