英語教育に関する論文・報告書


STEP BULLETIN vol.21 2009

研究部門 Ⅰ 英語能力テストに関する研究

診断テスト・学習プログラム方式 CBT のフィードバック作成と検証
―並べ替え問題の履歴分析を通して―

新潟県/長岡市立宮内中学校 教諭 姉崎 達夫

▼研究概要
本研究の目的は次の3つである。(1) 並べ替え問題において,日本人学習者の間違いに見られる特徴は何か。(2) 並べ替え問題の誤答に対して,L1のフィードバックを提示した場合に語順の理解や定着が進むか。(3) 並べ替え問題の正答と誤答は並べ替え時間に差があるか。「授業同時テスト」方式 CBT に公立中学校の3年生約55名が参加した。出題は英検4級の並べ替え問題から35問を用いた。 本研究から次の3点が示唆された。(1) 中学生に見られる誤答の原因として,日本語の語順の影響,連語の知識の不足,結びつきの強さの影響などが考えられる。(2) 並べ替え問題において,L1と L2のフィードバックも L2のみのフィードバックも語順の定着につながるが,前者のフィードバックが後者のフィードバックよりも語順の定着に結びつくとは言えないことが示された。(3) 並べ替えの時間については正答の方が誤答よりも短時間だったことから,知っている語順は迷わず正確に並べ替えることができる傾向があることが示唆された。

研究部門 Ⅱ 英語能力テストに関する研究

スピーチにおける生徒相互評価の妥当性
―項目応答理論を用いて―

茨城県/茨城県立竹園高等学校 教諭 深澤 真

▼研究概要
本研究の目的は,スピーチにおける日本人高校生の相互評価にはどの程度の妥当性があるかを検証することである。妥当性は, 1)構造的要素, 2)一般可能性的要素, 3)外的要素, 4)内容的要素, 5)実質的要素, 6)影響的要素の6つの側面より検証された。主な分析方法として項目応答理論のラッシュ・モデル分析を用いた。その結果,生徒相互評価の構造的要素については部分的に妥当性が認められ,その他の5つの妥当性の側面についてはすべてにおいて十分な妥当性が示された。6つの妥当性の要素の検証結果をまとめると,スピーチにおける日本人高校生による相互評価には一定の妥当性があると考えられる。また,生徒相互評価には,教員評価に比べ平均値が高く,標準偏差が低い傾向も見られた。これらの研究結果に基づき,生徒相互評価の活用について教育的示唆を行う。

研究部門 Ⅲ 英語能力テストに関する研究

日本人英語学習者に適したテスト形式とは何か
―オンラインテストと口頭テストの比較検討―

兵庫県/神戸学院大学附属高等学校 教諭 船越 貴美

▼研究概要
テスティング技術の進歩とコンピュータの普及によって多様なテスト形式が開発されるようになり,従来の紙と鉛筆を用いた筆記テストに代わって,コンピュータを用いたテストが開発され,テスト形式と採点方法に変化をもたらした。本研究では,異なる2つのテスト形式を使って同じ質問をし,評価基準をあわせて得られた採点結果と,テスト後のアンケート結果よって,どちらのテスト形式がよりコミュニケーション能力を発揮できるかを検証した。実験には私立高等学校1年生199名が参加し,英語母語話者による直接対面式の口頭テストと,インターネットの回線でつながれたコンピュータの画面を見ながらキーボードで解答を入力するオンラインテストの両方を受験した。その結果,口頭テストは英語によるコミュニケーション能力を測定するテストとして,日本人学習者に適したテスト形式であると考えられるが,テストの信頼性を高める必要があることがわかった。また,オンラインテストは客観的な採点が可能となるが,解答時間や IT 環境の整備などの課題を見直す必要があることが明らかになった。

研究部門 Ⅳ 英語能力テストに関する研究

英検リスニング問題の音声加工による聴解度向上の可能性
―ナチュラルスピードの英語音声理解の壁を越えるポーズ効果―

茨城県/茨城県立勝田高等学校 教諭 鈴木 隆一

▼研究概要
本研究では,英検リスニングテストを教材としての可能性につながるよう音声加工を施し,聴解度がどのように変化するのかを検証する実験を行った。そこで, 3種類のタスク(①オリジナル英検問題,②ポーズ加工を施したナチュラルスピードの英検問題,③ナチュラルスピードの英検問題)間の聴解度を調べた。その結果,以下の2点が明らかになった。(1) ナチュラルスピードでの聴解度は,オリジナルスピードとの比較では有意に低いものの,ポーズを加えるとオリジナルスピードと同程度の聴解度に回復する。(2) 3つのタスク間の聴解度に対する熟達度別の比較では有意差はない。したがって,リスニングにおいてナチュラルスピードの英語であってもポーズ加工することで有意に聴解度を向上させることが示された。そして,このポーズ効果はどの熟達度群においても一律であることがわかった。  聴解度に影響を与える要因として考えられるのが,テキスト,発話者,タスク,聞き手,リスニング処理である(Rubin, 1994)。その1つであるテキスト要因には,ナチュラルスピードの特性[チャンク(意味の塊)スピード,脱落・連結・同化・弱化といった音声変化,プロソディーなど]が含まれる。 英検問題の教材としての可能性は2つあり, 1つはネイティブスピーカーに自然に読んでもらうだけでテキスト難易度が高まることである。そしてもう1つは,これらナチュラルスピードの特性を維持した上でも,句ごとに1秒ずつポーズを挿入する加工により聴解度が向上することから,その自然な英語音声を理解するための橋渡し教材としての側面も示唆できる。

研究部門 Ⅴ 英語能力テストに関する研究

日本人学習者の英語語意知識測定テストの開発と検証
―正答率および応答自信度による評価―

東京都/東京大学大学院 博士課程・在籍 中田 達也

▼研究概要
本研究では,L2における語意知識(語の意味に関する知識)を測定するためのテストである再認式文章完成課題において,応答自信度を得点に反映することで,テストの1)信頼性,2)妥当性,3)実用性が改善されるかどうかを調査した。98人の日本人大学生を対象とした調査の結果,自信度を語意テスト得点に反映することで,信頼性と妥当性の構造的側面に関しては改善される可能性が示唆された。しかし,妥当性の一般化可能性および外的側面に関しては,差が見られなかった。また,テストの実用性に関しては,自信度を用いない従来の採点方式の方が優れていた。本研究の結果から,再認式の語意テストにおいて自信度を用いることは必ずしも必要ではないものの,高い信頼性が望ましい場合には,自信度を採点に取り入れることが1つの選択肢になり得ることが示された。

実践部門 Ⅰ 英語能力向上をめざす教育実践

プロジェクト型外国語活動におけるインプット増強のためのカリキュラムの提案
―自立学習喚起のための音声指導のあり方―

兵庫県/西宮市立高木小学校 教諭 東野 裕子

▼研究概要
平成23年度より小学校の第5 ・6学年に導入される「外国語活動」では,小学生という発達段階を考慮した体験的な活動を通して,内容は「総合的な学習の時間」で育成すべき「生きる力」を共通項としながらも,言語教育の枠組みの中での「コミュニケーション能力の素地」の育成が目的である。そこでは,与えられた(あるいは,見つけた)課題に対して児童自らがゴールを決定し,そのゴールまでのプロセスにおいて,グループ学習や協同の学び体験を通して,主体的かつ創造的な学びが成立する。この種の特徴を持つ課題解決型の活動を「プロジェクト型外国語活動」と呼ぶ。  本研究では,このプロジェクト型外国語活動により,児童が,時間の経過に伴い,より意欲的に活動に取り組むことができたことを「振り返りシート」を時系列に調査し,コミュニケーションに対する積極的な態度の変化を観察した。また,到達すべきゴールが明確であることにより,学習が必然的になされ,自ら英語表現を練習し,発表の段階まで意欲的に取り組んだ結果,プロジェクトで扱った英語表現が自然と定着したことを明らかにした。

実践部門 Ⅱ 英語能力向上をめざす教育実践

紙辞書を使った語彙・コロケーションの指導とその効果
―英語で伝える力と自ら学ぶ力を育てる『和英表現ノート』作りの実践―

千葉県/渋谷教育学園幕張中学校 教諭 内田 富男

▼研究概要
「紙辞書」,「英作文」,「語彙」,誰もがその指導の意義を認めてはいるものの,教室ではなかなか手が回らない。本実践では,公立中学で英検講座を受講する約70名の2年生を対象に,1)コロケーション重視の語彙指導,2)紙辞書を活用したノート指導,3)フリーライティングの指導,を試みた。年間およそ20時間の講座では,教科書・英検コーパスから作成した教材と紙辞書,作文シートを使って指導した。その結果,敬遠しがちだった紙辞書をより身近なツールであると感じ,コロケーションに興味を持つ生徒が増えた。また,モデルを参考にしながらでも英語で書く機会を得て,表現意欲が昇華された。なお,正課の授業とあわせて,週7時間の学習の結果,2年終了時にはほとんどの受講生が英検3級以上に合格した。本研究から,実際の授業実践を通して,英語を学ぶ動機と意欲,英語に触れる機会の大切さが確認され,困難な学習課題に挑戦させることの意義が示唆される。

実践部門 Ⅲ 英語能力向上をめざす教育実践

海外パートナー校との協調学習による英語コミュニケーション力向上プログラムの試み【共同研究】

東京都/八王子市立城山中学校 教諭・代表者 吉田 和夫

▼研究概要
本論文は一般的な公立中学校での英語科の授業においては比較的実現が難しいと考えられる,海外のパートナー校(中学校レベル)との連携による効率的・効果的な学習指導を構築することの可能性について具体的に検討・実施した教育実践を紹介するものである。  また,この実践を通して,今後どのようなシステムで,国際社会に備えることのできる英語を用いた総合的なコミュニケーション力を向上させるかを具体的に考察した。さらに,そのためにどのような手立てやプログラムが必要となるか,またそのプログラムを実施するにあたり,どのようなマニュアルや手引き,ワークシートなどの書式があるとよいかをあわせて検討し,各学校ですぐに役立ち,実践に取り組めるよう,全体の内容や手順をパッケージ化した。  この報告内容を実践することで,多くの公立中学校でこれまでとは異なる「真正・本物の(Authentic)」交流的な学習,協調学習が実現すると考える。

実践部門 Ⅳ 英語能力向上をめざす教育実践

後置修飾の定着を促す言語活動と文法指導の有効性に関する実証的研究

神奈川県/横浜市立旭中学校 教諭 奥村 耕一

▼研究概要
この報告は,中学校における外国語指導において,教師が,日本語を母語とする中学生に日本語とは異なる語順や修飾の関係について定着させるには,どのような指導が必要かを明らかにしようとしている。  そのために,これまでに提言されてきた言語活動と文法指導を有機的に関連させることによって,後置修飾の定着をどの程度促すことができるかを探ることにした。後置修飾の文構造は,日本語とは異なることから,中学生にとってその定着が難しいとされてきた。2012年度に完全実施の新学習指導要領では,文法指導と言語活動を有機的に結びつけて指導することにより,コミュニケーション能力の基礎を養うよう求められている。本研究では,主に3種類の言語活動を実施することにより,どの程度後置修飾の定着が促されたかを測定していく。  結論においては,日本における外国語学習の環境を踏まえた,今後の指導のあり方と課題についての示唆でまとめている。

実践部門 Ⅴ 英語能力向上をめざす教育実践

ペア・プランニングが自由英作文に与える影響【共同研究】
―Coh-Metrixを用いたテクスト分析―

新潟県/長岡工業高等専門学校 助教・代表者 田中 真由美

▼研究概要
本研究では,事前のペアによるプランニングの方が,1人で行うプランニングよりも,その後のライティング・タスクのパフォーマンスを高めるかどうかを検証した。用いた分析指標は,流暢さ,複雑さ,正確さ,結束性の4つである。高等専門学校の2年生,3学科を対象に,英語ライティングの授業時間内に,週1回,計5回の自由英作文タスクを行った。各学科を,ペア・プランニング群,個人プランニング群,オンライン・プランニング群に割り振り, 3群間でパフォーマンスを比較したところ,個人プランニング群の平均値の方がオンライン・プランニング群の平均値よりも統計的に有意に高かった。ペア・プランニング群とオンライン・プランニング群との間には平均値に統計的有意差は認められなかったものの,ペア・プランニング群と個人プランニング群とではほとんど数値に差がなかったため,流暢さにおいてペア・プランニングは個人プランニングに近い効果があると考えられる。ペア・プランニングの効果は,今回の研究結果ではあまり認められなかったが,ペア・プランニングがより効果的になるようなプランニングとライティングのタスク設定の必要性が,今後の課題として明らかになった。

実践部門 Ⅵ 英語能力向上をめざす教育実践

高校生のリーディングに対する動機づけの高揚と読解力の育成
―学習動機を高める学習者支援のあり方を求めて―

三重県/三重県立四日市南高等学校 教諭 城野 博志

▼研究概要
本研究は10分間ほど易しい段階別教材を読ませる多読(10分間多読)に関する実践的研究である。次の2点をその研究目的とする。1つはコメントや助言など(言語的報酬)による多読支援を行うことによって多読の動機が高まり,読みの速さを伸ばすことを実証すること。もう1つは,読みの速さと動機の関係を明らかにすることである。  本研究の結果,支援を受けた生徒は教師との関係を改善し,多読に対する関心を高め,1分当たりの読語数(WPM)を伸ばした。同時に読む面白さを味わいながら,多読に対する不安を減らして読語数を増やした。しかしながら,自分の読みたい本を自分で決めるという学習内容に対する自己管理意識(自律性)や長文を読む自信(有能感)に変化はなかった。本の選択についての助言,読後レポートに対するコメント,多読に対する姿勢についてのフィードバック回数が不足していたことがその要因として考えられる。有能感支援や自律性支援が効果的でなかったために,多読の価値が自分の中に取り込まれず内発的価値が高まらなかった。  言語的報酬による多読支援には多くの要因が複雑にからまっている。支援の柱として,生徒が読みたいと思う本を生徒と一緒に読みながら,読む喜びを共有して,その喜びを通して達成感を味わせることが重要と思われる。我々教師は多読を支援する者として,複雑にからまった糸を解きほぐしながら,いかにして動機づけを高めていくか,試行錯誤を繰り返していくことが求められる。

実践部門 Ⅶ 英語能力向上をめざす教育実践

コストパフォーマンスの高い読解をめざして
―より速くより正確に読み取るための速読スピードの検証―

東京都/東京都立白鷗高等学校 主任教諭 中野 達也

▼研究概要
本研究は,受験を目前に控えた高校3年生40名の読解の様子を観察した実態調査である。調査は,昨年度の2学期に約3か月にわたって行い,英検準2級および2級の問題を使用した速読を全部で14回実施した。  40名の生徒がいれば,本来40通りの読み方が存在する。しかし,一人一人の読解の様子を細かく分析すると,いくつかの特徴や共通点が見えてきた。 調査の結果を踏まえ,読解スピードと内容理解問題の正答率の関係を,大きく2つの観点から分析した。1つは,両者の関係を個人内で比較することであり,もう1つは,両者の関係をクラス全体の中で比較することであった。  さらに,読解スピードおよび正答率を,生徒の持つ語彙力,文法力と比較することにより,英語力との関係を探ろうと試みた。  これらの分析を通して,「速さと正確さ」を兼ね備えたコストパフォーマンスの高い読解の実態が明らかになってきた。

実践部門 Ⅷ 英語能力向上をめざす教育実践

ライティング授業における音読活動が作文に及ぼす影響

京都府/京都府立桂高等学校 教諭 大八木 康弘

▼研究概要
本研究は,公立高校でのライティング授業において,習得目標である文法項目を含む文をフレーズ単位で繰り返し音読させることにより,その内在化をめざす指導を試みる。学習者に書かせた作文をコーパス化し,その言語的特徴などを分析する。それを基に効果的な授業案を提案する。  よりよいアウトプットをするためにはインプットされた言語知識が中間言語に内在化される必要があり(Gass, 1997),内在化にはそれを含む英文の音読などが効果的である(門田, 2007)と主張されている。  本研究では,1組には文法解説中心の,もう1組には基本例文などの音読活動中心の指導を行い,指導前後で作文をさせた。結果,音読中心の組が作文の流暢さ,正確さおよび文法的複雑さをより向上させた。さらに,音読した英文の N-gram を作文でより多用した上,従属接続詞もより多く,正確に,母語話者に近く使用した。以上から,ライティング授業でのインプット後の音読活動が,言語知識の内在化を促し,作文を上達させることが示唆された。

調査部門 Ⅰ 英語教育関連の調査・アンケートの実施と分析

中学校・高等学校英語教師の,英語学習動機づけに対する認識に関する調査

兵庫県/兵庫県立西宮南高等学校 教諭 篠原 みゆき

▼研究概要
本研究の目的は英語学習動機づけ方略にかかわり,(1) 日本の英語教師の英語学習動機づけ方略重要認識度と,(2) 方略重要認識度と使用頻度の違いを調査することである。調査に参加したのは,日本全国の中学校・高等学校英語教師762名で,調査は2008年6月から8月に行われた。その結果,(1)については,重要認識度が高い順に,「適切な教師行動」,「適切な活動提示」,「生徒の自信を高める」,「学習活動を面白くする」,「学習習慣の確立を支援する」,「個人の違いに合わせる」,「生徒の自律を高める」,「生徒の努力を認める」,「心地よい教室雰囲気作り」,「グループの結束と規範を高める」,「生徒の目的意識を高める」,「生徒を英語関連価値に親しませる」であった。(2)については,重要認識度に比べて使用頻度が低かったのは「学習活動を面白くする」と「個人の違いに合わせる」で,高かったのは「学習習慣の確立を支援する」と「生徒の努力を認める」,どちらも低かったのは「生徒の目的意識を高める」,「グループの結束と規範を高める」,「生徒を英語関連価値に親しませる」であった。

調査部門 Ⅱ 英語教育関連の調査・アンケートの実施と分析

英文の速読力を高めるための指導方法考察

神奈川県/神奈川県立川崎高等学校 教諭 小林 潤子

▼研究概要
入試問題の英文読解の長文化やインターネットの英語での情報収集の必要などから,生徒の速読力をつけさせる指導法が,課題となっている。本実験は,1)継続的な速読の練習の必要性,2)速読の補助に貢献するもの,3)音読などの指導の効果,という課題を中心に速読力を上げるための効果的な指導方法を考えて研究,検証した。  2006年度に行った小規模なリサーチで,継続的な指導で速読力に統計的な有意差が出た結果を踏まえて,2008年にリサーチの規模を拡大して研究をした。読解の助けとなる語彙の提示の方法を変えたり,また,音読やシャドウイングを指導しながら速読指導を行った。2008年でも,事前・事後の速読の速さに有意差は出たものの,それぞれの指導に統計的な有意差は出なかった。音読などの指導をしながらの速読では,速度は伸びたが,有意差は出なかった。その他語彙サイズや読解の助けとなる事項を検討して,速読指導について考察を行う。

委託研究部門 Ⅰ 「英検Can-doリスト」に関する研究

英検 Can-do リストのスピーキング分野における Can-do 項目の妥当性検証

北海道/函館工業高等専門学校 准教授 臼田 悦之

▼研究概要
財団法人日本英語検定協会(以下,英検)は2006年に「英検 Can-do リスト」を発表し,それぞれの級取得者が4技能の領域で実際にどのようなことができる可能性があるのかをわかりやすく示した。これは,大規模アンケート調査による結果に基づいて作成されているため,信頼性はあると考えられる。しかし,英検合格者がそのリストの内容を実際にできるかどうかはほとんど調べられてはいない。  本研究では,級取得者が「英検 Can-do リスト」に書かれている内容を,実際にできるかどうかを調査することによって,その妥当性の検証を試みた。  対象は準2級の「話す」分野に的を絞り,合格通知後1か月以内の準2級合格者73名に対して,4つの Can-do 表現を基にして作成したタスクを1対1の面接形式で実施した。そして,各タスクにおける被験者の達成率を調べることにより妥当性検証を行った。  その結果, 1つのタスクを除いて数値上妥当性があるということがわかった。その1つのタスクとは,自分の将来の夢や希望について話すというタスクであったが,できる可能性が低いというわけではなく,他のタスクの出来具合から考えて,本人に話す内容があればきちんと応答できた者もいたのではないかと推察された。