イギリス英語とアメリカ英語

"autumn"と"fall"----ともに季節の「秋」を指す言葉である。しかし、使われている国が違う。イギリス英語とアメリカ英語の違いだ。同じ英語といっても、イギリスとアメリカでは同じ意味を指すのに別の単語が使われているケースがあるのだ。

先ほどの"autumn"と"fall"は前者がイギリス、後者がアメリカだ。"autumn"は、フランス語を話すノルマン人が11世紀にイギリスを占領した際にもたらした言葉である。一方"fall"は、もともと英語ではあったものの、16世紀頃になってから初めて、秋という意味に使われるようになった。枯葉が"落ちる"季節だからであるといわれている。つまり、近世のイギリスでは秋を指す言葉が2つあったわけだ。しかし、いつしか"fall"は使われなくなり、"autumn"が一般的に。反対に、17世紀にイギリス人移植民によって両方の「秋」が伝えられたアメリカでは、"fall"が一般的になった。ちなみに、"lift"と"elevator"(エレベーター)、"chemist"と"pharmacy"(薬局)なども英米による違いである(前者がイギリス)。

逆に、同じ言葉でも両国で意味の異なるものもある。たとえば、アメリカ人にとって"vest"と"pants"はベストとズボンのことだが、イギリス人にとっては、それぞれ上下の下着を意味し、彼らはベストのことを"waistcoat"、ズボンのことを"trousers"と呼ぶ。また、イギリス人にとって"holiday"がそれなりのまとまりのある休暇を意味するのに対して、アメリカ人にとっては一日だけの祝日というニュアンスをともなう言葉となる。

(May 2011)

デービスさんのPROFILE

Marc Davies(マーク・デービス)
『週刊ST』コントリビューター

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