京都大学
学生の英語力向上を導くIELTS
京都大学
国際交流推進機構 国際企画連携部門
西川 美香子 特定助教
IELTS は留学における国際的指標
「グローバル30」採択校として、京都大学では2009年度から教育プログラムの国際化、学生・教員の多国籍化、学生の海外派遣を柱とする取り組みを実施してきました。採択を受けて、学部・大学院に17つの英語コースを新設しました。そして、留学における国際的な指標として導入したのがIELTSです。IELTSの試験問題は、海外での学術研究の場で求められる英語運用能力を測定でき、本学のねらいと合致していました。
現在、IELTSは年2回、学内実施をしています。受験希望者には受験料の一部を援助し、対策講座を提供しています。毎回6 0 名程度が受験し、過去4年で400人以上が受験しました。慣れ親しんだ環境で受験できるため、学生も緊張せずに実力を発揮しています。
ライティング力を高めるオンライン教材を開発
本学の派遣留学先では学部生レベルで「IELTS6.0~6.5」大学院レベルでは「IELTS7.0」以上とされます。しかし、新入生の多くの留学希望者の実力は基準を満たせず、IELTS受験を義務づけている「オーストラリア海外研修プログラム」参加者の平均スコアは派遣留学の条件を満たせていません。特に英語4技能の中では、一番ライティングのスコアが低く、アカデミック・ライティングの力をつけるのが最も時間がかかることが研究で分かってきました。
そこで、論理構成や文章の展開能力を強化するため、公益財団法人 日本英語検定協会とともに、オンライン添削ライティング教材「Study-Abroad & Preparation for Academic Writing」を開発しました。10回のユニットで、アカデミック・ライティングに必要な基礎から応用までを習得できる教材です。各ユニットのエッセイ課題を提出すると、ネイティブ添削者によるフィードバックを受けられ、学習への動機付けにつながります。
平成24年度に実施した全学経費プロジェクト:English for Academic & Business Purposes -Making your 留学More Meaningful-にこの教材を導入したところ96名の学生が登録しましたが、約3カ月間の受講で、実力を伸ばし、中にはIELTSを初めて受験し、ライティングのスコア6.0をマークした学生もいました。
多読を通じてディスカッション能力を向上
2013年度には、平成25年度全学採択事業として多読を通じて英語ディスカッション能力を向上する「The R/Lead International Project」を10回にわたり実施しました。参加者は毎週、事前に提示された課題書籍を読み、チームごとに英語で45分間のディスカッションを行いました。各グループでは、ファシリテーター養成プログラムを受講した学生たちがファシリテーターを務めました。そして、その集大成となる最終コンテストも実施しました。前日に指定された3冊の書籍に関するトピッククエスチョンが提示され、45分間のディスカッションに挑むのでした。ファシリテーターはコーチングの役割を果たすのみですが、3か月にわたるディスカッションの経験が生かされ、メンバーの実力は確実に伸びていました。
また、プロジェクトの前後には、ブリティッシュカウンシルと公益財団法人 日本英語検定協会による英語テスト「Aptis」を実施しました。Aptisは試験内容をカスタマイズでき、英語能力の伸張度の測定にふさわしい試験でした。
各プロジェクトに参加する学生の英語力は高まっています。しかし、学生全体の英語力にはかい離があります。その差を縮めるためにも、今後は、より多くの学生が客観的に英語力を把握できる機会を作っていく必要があるでしょう。
プロフィール
京都大学
1867年、日本に2番目の帝国大学として創立される。学生の自主性を重んじる、建学の精神「自由の学風」を掲げ、幅広い分野において日本を代表する学術研究拠点として、京都から世界に向けて発信を行っている。国際交流の歴史も長く、世界各国の研究機関・大学と協定を結び、活発な国際交流を実施している。