英語教育に関する論文・報告書

STEP BULLETIN vol.22 2010

研究部門 Ⅰ 英語能力テストに関する研究

テキストマイニングによる学習者作文における談話能力の測定と評価

大阪府/大阪大学大学院 在籍 小林雄一郎

▼研究概要
本研究では,日本人中学生,高校生,大学生の英作文を集めた「学習者コーパス」を解析し,(1) 中学生,高校生,大学生と学年が上がるにつれて,談話標識の頻度や使用傾向はどのように変化するのか,(2) 学習者(中学生,高校生,大学生)と母語話者の間には,談話標識の頻度や使用傾向にどのような違いがあるのか,という2 点に光を当てて,量的分析と質的分析を行った。また,談話標識に関して,先行研究ではさまざまな定義や構成要素が提案されているが,本研究では Hyland(2005)の metadiscourse markers の定義とリストに準拠した。  その結果,接続表現(transitions, frame markers),視点(self-mentions),心的態度(hedges, boosters)といった多くの点において,習熟段階の異なる学習者の間,そして学習者と母語話者の間に頻度や用法に関する大きな差異が見られた。

研究部門 Ⅱ 英語能力テストに関する研究

日本人英語学習者のスピーキング vs. ライティングパフォーマンスの比較分析のための指標 
―学習者コーパスに基づくアプローチ―

東京都/東京外国語大学大学院 在籍 野村 真理子

▼研究概要
本研究は,日本の中学・高等学校の外国語科の新学習指導要領を踏まえ,話す活動と書く活動を組み合わせて表現力を育成する効果的な指導を模索するための基礎調査として,中学生・高校生の日本人英語学習者からスピーキングとライティング両方の産出データを収集し,学習者コーパスを構築することにより,同一学習者集団のスピーキング vs. ライティングパフォーマンスを比較分析し,比較測定のために有効な指標を調べたものである。分析に使用したコーパスデータは,中学3年生~高校3年生324名から収集した同一学習者が同一テーマで産出したスピーキングとライティングのデータである。使用語彙,10の言語特徴, 5つの言語項目のエラーおよび正用率について,話し言葉vs. 書き言葉で比較分析を行った結果,調査した多くの項目がモードの違いによる差異を示し,日本人中高生の産出モードの異なるパフォーマンスデータを比較分析するのに有効な指標が明らかになった。

研究部門 Ⅲ 英語能力テストに関する研究

英文読解におけるテキスト間情報統合能力の検証

茨城県/筑波大学大学院 日本学術振興会特別研究員DC 清水 遥

▼研究概要
本研究は,複数テキストを同時に提示した際の日本人英語学習者の読解パフォーマンスを検証した。3つの調査の結果,次の3点が明らかになった。 (1) 6つの英文読解テストを調べた結果,3つのテストにおいて複数テキストを用いた問題が出題されていた。しかし,複数テキストを受験者に提示していても,テキスト間情報統合能力を測定する問題の出題率はテスト間で異なることが示された。 (2) 学習者の英語読解熟達度によって,テキスト間の情報統合を必要とする問題の正答率に差が見られ,熟達度の高い学習者ほど正答率が高かった。特に,テキスト間の情報統合能力を問うことで,中級および上級レベルの英語学習者の読解力の違いが明らかになった。 (3) 熟達度の高い学習者は熟達度の低い学習者よりも複数テキストの内容をより理解していたが,情報源の理解に関しては熟達度による差は見られなかった。  本研究から,英文読解テストに複数テキストを利用することによって,テキスト間情報統合能力というより高次レベルの読解スキルの測定が可能になることが示唆された

実践部門 Ⅰ 英語能力向上をめざす教育実践

『英語ノート』の効果的な使用法と活動実践例【共同研究】
―英語教育特区荒川区における小学校での取り組みから―

東京都/荒川区立峡田小学校 英語教育アドバイザー・代表者 杉山 明枝

▼研究概要
筆者が小学校英語教育アドバイザーとして勤務している東京都荒川区では,特区として平成16年度から小学校英語教育を開始し,指導方法の確立など一定の成果が見えてきた。しかしその一方で『英語ノート』に関し,これをどのように使用するかという課題が浮上した。  そこで本研究では既存の指導計画を生かしながら効果的に『英語ノート』を使用するための方法を荒川区での一小学校における授業実践を中心に,『英語ノート』で扱われている語彙やアクティビティなども分析しながら検証した。荒川区では既に6年間特区として独自の小学校英語教育を展開しているため,『英語ノート』をそのまま使うのではなく,既存の指導計画を生かしながら,『英語ノート』の中で活用できるアクティビティや歌・チャンツなどを部分的に選択利用するという形式をとった授業がほとんどであった。『英語ノート』は基本的には5,6学年用に作成されたものであるが,歌・チャンツに関しては低・中学年の授業においても利用した。また年度の開始と終了時に5,6学年全児童に語彙習得に関する調査をアンケート形式(評価)で実施し,その結果も踏まえた上で『英語ノート』を組み込んだ年間指導計画や語彙集を作成した。

実践部門 Ⅱ 英語能力向上をめざす教育実践

コミュニケーション活動に対する動機づけを高める理論と実践
―自己決定理論に基づいて―

三重県/津市立東観中学校 教諭 村井 一彦

▼研究概要
本研究の目的は,コミュニケーション活動を英語科授業の主たるものとして位置づけ,その中で,生徒の動機づけを高めるために必要な諸条件とは何であるかということを具体的に検討することであった。そして,自己決定理論における3つの心理的欲求の充足を動機づけを高めるための手立てとして,それらの認知を高める授業介入を約6か月間継続して行い,コミュニケーション活動に対する手立てと動機づけの高まりの関連について検討した。  研究1においては,自己決定理論における3つの心理的欲求の認知を測定するための「コミュニケーション活動における心理的欲求支援尺度」と自己決定理論における動機づけを測定するための「コミュニケーション活動における動機づけ尺度」を作成し,津市立T中学校の第2 学年生徒115名を対象に,2009年4月中旬に質問紙調査を実施した。(1)コミュニケーション活動に対する3つの心理的欲求支援の働き,(2)コミュニケーション活動に対する動機づけ構造,(3)コミュニケーション活動に対する3つの心理的欲求支援と動機づけの関係に関して検討した。コミュニケーション活動に対して,自律性支援,有能性支援,関係性支援の3 つは,互いに関連させ合いながら心理的欲求支援を満たしていることが確認できた。また,隣接する動機づけ概念間では,連続体上で隣接する概念間ほど相関が強く,離れるほど相関が弱い,あるいは負の相関を示していることが確認できた。そして, 3つの心理的欲求支援のうち,自律性支援と有能性支援に関しては,コミュニケーション活動の動機づけの高まりに強い影響を与えることが確認できた。  研究2においては, 3つの心理的欲求を充足させる手立てや動機づけの高まりにつながる手立てを計画し,授業介入(2009.4下旬~2009.9下旬)を行った。また,「コミュニケーション活動における心理的欲求支援尺度」,「コミュニケーション活動における動機づけ尺度」を使用し,授業介入を行った津市立T中学校の第2 学年生徒56名を対象に,2009年4月と2009年9月に質問紙調査を実施した。授業介入前後の比較により, 3つの心理的欲求支援の高まりと動機づけの高まりの関係を検討した。6か月間の授業介入によって,コミュニケーション活動に対する3つの心理的欲求の充足に関しては,自律性支援と関係性支援の認知が高まった。そして,内発的動機づけと同一視的調整といった自律性の高い動機づけの高まりが確認できた。

実践部門 Ⅲ 英語能力向上をめざす教育実践

逐次通訳メソッドによるアウトプット練習が英語コミュニケーション能力に与える影響
―リプロダクションとシャドーイングを統合した授業から―

茨城県/茨城県立古河第一高等学校 定時制 教諭 飯塚 秀樹

▼研究概要
本研究では,通訳訓練法を用いたこれまでの SLA研究を,「逐次通訳」,「シャドーイング」,「リプロダクション」,「プロソディー分析」という4つの視点から調査し,それらが英語コミュニケーション能力に与える影響を考察した。さらに,これらの先行研究の中から統計的に有意とされた活動や,主効果の認められた手法を統合し,新たに改良を加え,音声中心の学習法として「逐次通訳メソッド」を提起した。本メソッドによる処置を約5か月間継続した結果,以下の3点が示された。  1) 本メソッドに基づくリプロダクション活動後,語彙・文法力を測る事前・事後テスト間に統計上の有意差が認められた。  2) 音声の表層構造をとらえるシャドーイングにtop-down的認知処理プロセスを加えた結果,リスニング能力伸長度テストで有意に点数が伸びた。  3) IL(Interlanguage:中間言語)を書かせることで,音声中心の学習では解決されづらい言語分野が特定された。 本研究により,CALL システムを使った指導法の一例も示唆された。

実践部門 Ⅳ 英語能力向上をめざす教育実践

高校生の英語ディベート活動は英語スピーキング力と批判的思考力を伸ばすのか【共同研究】

鹿児島県/鹿児島県立志布志高等学校 教諭・代表者 有嶋 宏一

▼研究概要
本研究は,高校生の英語ディベート活動が英語スピーキング力と批判的思考力に及ぼす効果について調べたものである。仮説として,英語ディベート活動により,英語スピーキング力と批判的思考力は伸びるとし,またその両者にも相関関係があるとした。生徒の批判的思考力と英語スピーキング力は英語ディベート活動の前後で2回ずつ計4回調査された。また英語ディベート活動後,生徒に試合前,試合途中,試合後,感じたことを振り返ってもらい,それぞれ自由記述式で書かせた。  結果として,仮説は支持され,英語ディベート活動の後で,英語スピーキング力と批判的思考力が伸びることが示唆された。また英語ディベート活動後,批判的思考力と英語スピーキング力全体と流暢さと複雑さに相関があることが示された。

実践部門 Ⅴ 英語能力向上をめざす教育実践

第2言語ライティング学習時に協働作業によるピアレスポンスが生む創造性

埼玉県/秀明高等学校 教諭 山本 恭子

▼研究概要
本研究はグループとペアによる協働学習を行い,そこでのピアレスポンスが英語ライティングにどのような創造性を生み出すのかを3つのタスクを通して分析し,考察したものである。  質の高いライティングをめざすためにそれぞれのタスクに合ったマッピングなどを行った上で,さらにピアレスポンスでの変化を見た。ピアレスポンス前の原稿を第1原稿とし,ピアレスポンス後を第2原稿として,第1原稿と第2原稿の文中の総語数,語彙数,エラー数,複文数の変化,またそれが本人の英語力や協働学習者の英語力に関係するかという点を量的に調べた。また,生徒のピアレスポンスに対する態度や,そこでの学習成果をフィードバックおよびリフレクションから質的に研究を行った。  結果として,語数,語彙数が増加し,創造性が増しながらも間違い数が増加せず,複文数が増えるなどの点が成果と考えられる。また,日本語を使ってのピアレスポンスが英語ライティングの質や量の改善を促すだけでなく,社会概念,人間関係・友情の育成,自己確認,文化理解など個人の社会性に影響するという結果が認められた。

実践部門 Ⅵ 英語能力向上をめざす教育実践

コミュニケーション能力の育成をめざす「長良メソッド」の実践とその効果の検証
―新しい学習指導要領を具現化する一指導法―

岐阜県/岐阜県立長良高等学校 教諭 石神 政幸

▼研究概要
平成21年3月に出された「高等学校学習指導要領」では,「4技能の総合的な指導を通して,これらの4技能を統合的に活用できるコミュニケーション能力を育成するとともに,その基礎となる文法をコミュニケーションを支えるものとしてとらえ,文法指導を言語活動と一体的に行う」ことや,「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,授業は英語で行うことを基本とする」ことがうたわれた。本稿ではこの新しい学習指導要領を具現化していく一指導法として,岐阜県立長良高等学校で行われている「長良メソッド」について報告する。「長良メソッド」では,シャドーイングやサイト・トランスレーションなど音読を中心としたインプットと生徒がカセットテープレコーダーを利用して会話をするアウトプットの活動が行われている。この「長良メソッド」の指導法を概観し,その実践と効果の検証を行う。

実践部門 Ⅶ 英語能力向上をめざす教育実践

英語プレゼンテーションに特化した授業による論理的思考能力を高める試み【共同研究】
―戦略的な英語プレゼンテーション技術の向上をめざして―

兵庫県/兵庫県立国際高等学校 教諭・代表者 眞田 弘和

▼研究概要
本研究は,英語プレゼンテーションに特化した授業を通して,論理的思考力の伸長を図るために行われた実践研究である。  スライドやスクリプト作成のノウハウを体系化し,その指導手順に従って授業を進めることで,生徒の意識やプレゼンテーションスキルがどのように変わっていったのかを観察した。  4月当初と12月に行った質問紙による調査や生徒が作成した各学期でのスライドとスクリプトを比較することにより,私たちが取り組んだ手法(GUEPメソッド)で,自ら情報を発信し,自分の考えを論理的に英語で発表する力が向上したことが明らかとなった。  また,質問紙による調査の項目を使って,論理的思考力を測る評価指標モデルを作り上げた。  一方で,ビジネスでの経験や知識もない生徒に,論理的根拠を示すデータを実際に短時間で調査させることは困難であることが判明した。  課題としては,生徒が情報収集を行いやすくかつ提案が実現可能なテーマを設定することが必要である。

調査部門 Ⅰ 英語教育関連の調査・アンケートの実施と分析

中学校検定教科書で学習される語彙,学習されない語彙
―延べ語数、異なり語数、語彙レンジの視点から―

東京都/日野工業高等学園 教諭 村岡 亮子

▼研究概要
本研究の目的は,1)中学英語教科書に出現する語彙の特徴を明らかにすること,2)それをもとに指導者が学習者に適切な語彙指導を行う助けとなる資料を提供すること,である。英語学習において語彙習得の必要性は言うまでもないが,本格的な英語学習入門期である中学校での教科書を使用した語彙学習は特に重要だと考えられる。  本研究では,6社の教科書を2つの視点から調査した。まず,各社の教科書に出現する異なり語数(token),品詞の割合,各社にまたがって出現する語彙のレンジを調査し,6社の教科書に出現する語彙の特徴を明らかにした。次に,最も異なり語の出現が多かった SUNSHINE ENGLISH COURSE 1-3. の延べ語数(total)を調べ,語彙の出現頻度を調査した。また,出現回数が多いほど語彙を習得できるという仮説のもと,反復回数別に語彙を集計し,学習されやすいと思われる語とそうでない語を分類した。  研究の結果,中学英語教科書に出現する語彙には以下のような特徴があることが明らかになった。 1) 使用する教科書によって,学習する語彙に相当なばらつきが出る。 2) 6社の異なり語の品詞の割合はほぼ同じである。特徴的な違いは名詞である。異なり語を多く扱っている教科書は名詞の割合が高い。 3) SUNSHINE ENGLISH COURSE 1-3. に関して,繰り返しの回数が多く学習効果が高いと思われる語は全体の約24%,比較的効果があると思われる語は全体の約7%であり,この2つの合計でも31%程度である。 4) 以上のことから,語彙指導には特に注意を払わなければ中学生の語彙力は不足する傾向だと言える。

調査部門 Ⅱ 英語教育関連の調査・アンケートの実施と分析

授業を見つめる視点
―教員や生徒には授業がどう見えているか―

岩手県/岩手県立釜石高等学校 教諭 三野宮 春子

▼研究概要
本調査は,教員と生徒が授業のどの要素に注目し,どのように意味づけするかを関心事とする。協力者が自覚的・選択的に言語化した認知情報をデータとして,その内容と表現における一般傾向と個別性を扱う。授業を正確に(間違えて)観察しているかどうかを評価するものではない。  初めに,教員29名と高校生29名の協力を得てVTR視聴を伴う質問紙調査を実施し,自由記述式の回答をカテゴリー分類した。続いて,教員6グループ18名と筆者が視聴 VTRについて協議を行い,そのうち2グループの談話を分析した。  その結果,教員の回答の特徴として,「ねらい-評価」,「導入-展開-終末」など論理的・時間的関係を強く意識することなどが明らかになった。しかし,これらが必ずしも授業理解に役立っていないのではないかという疑問が生じた。一方,協議からは,相互作用の中で協力者が自身のビリーフを対象化しスキーマの特徴を自覚する様子を報告する。さらに,質問紙の回答,協議の発話それぞれに特徴的だった表現使用を比較する。  以上をもとに,「教員が授業を見る・理解する」ことの意味を考察する。

調査部門 Ⅲ 英語教育関連の調査・アンケートの実施と分析

英語授業における教師の考えとコミュニケーション志向との関連
―教師をめざす大学生が行った模擬授業の分析を中心に―

北海道/旭川実業高等学校 教諭 志村 昭暢

▼研究概要
本研究では教師をめざしている教員養成課程の大学生が行った中学校と高等学校での授業を想定した模擬授業について,Frolich,Spada and Allen(1985)で開発された授業分析手法である,Communicative Orientation of LanguageTeaching Observation Scheme(COLT)を用いて分析し,それぞれの授業におけるコミュニケーション志向の特徴を分析した。その後,分析結果をもとに授業者に面接調査を行い,授業の背景にある授業者のビリーフ(考え)を明らかにした。  結果は授業分析により活動形態,活動内容,学習者の使用技能,教師・学習者の言語使用の観点により,それぞれの学生教師(教育実習生)が行った授業のコミュニケーション志向の特徴を明らかにできた。また,面接調査の分析により,学生教師のビリーフが模擬授業のコミュニケーション志向の特徴に反映されていることが明らかになった。また,各教師が行った模擬授業の背景にあるビリーフも明らかになった。

調査部門 Ⅳ 英語教育関連の調査・アンケートの実施と分析

大学入試英作文の語彙分析
―異なるコーパス間の比較から―

新潟県/長岡工業高等専門学校 教諭 占部 昌蔵

▼研究概要
本研究は,入試英作文の中で出題されることの多い和文英訳問題に的を絞って英文を収集し,それをコーパス化したものを分析し,その特徴を明らかにすること,および,高校生の書いた自由英作文コーパスと比較することによって,それぞれどのような相違点があるのかを探ることであった。主な分析に使用したソフトはAntConcとRangeである。主な分析結果は,次の4点である。 (1) 入試英作文の方が,多くの種類の語を使用しているということ。 (2) 頻度順で上位30位までの分析では,自由英作文の方が,わずかに内容語の使用が上位に来ているということ。 (3) 語彙難度分析では,大きな違いは示されなかったが,入試英作文の方が,難度の高い語をより多く使用しているということ。 (4) 特徴語分析では,自由英作文に比べて入試英作文では what が顕著に使用されており,その品詞が関係代名詞であったということ。  最後に,データ収集の方法やタグ付けなど今後の課題を提示した。

調査部門 Ⅴ 英語教育関連の調査・アンケートの実施と分析

チームティーチングにおける構成員のチーム認知の比較研究
―チーム力をつけるための提案―

三重県/三重県立四日市工業高等学校 教諭 橋爪 真理

▼研究概要
JETプログラムのチームティーチングが日本の英語教育に導入されて23年となるが,教育現場ではチームティーチングにやりにくさをいまだに感じている。  本論では,このやりにくさの原因はどこにあるのか,そしてチームをよりよく機能させ,チームワークを高め,教育効果を上げていくにはどうすればよいのか,またやりにくさを解消させるポイントは何かを探索的に考察した。  まず,質問紙を用意して三重県の中学校,高等学校に勤務する日本人英語教師と外国人指導助手に回答を依頼し,その回答結果から因子分析を行い,チームティーチングを構成する4尺度を作成した。次にこの尺度得点を使って,日本人英語教師と外国人指導助手が,チームおよびチーム活動をどのように考えているのか特性を探った。  そして,両者を比較分析することにより,やりにくさの要因を明らかにし,チーム機能を高めるには何を,どのように取り組んでいけばよいのか,可能性をいくつか提案した。

調査部門 Ⅵ 英語教育関連の調査・アンケートの実施と分析

「話し手」の英語スピーキング力を促す「聞き手」の育成
―カウンセリング技法、スピーキングテスティング技法教授の効果―

東京都/東京大学大学院教育学研究科 在籍 関谷 弘毅

▼研究概要
本研究は,ペアワークによるスピーキングの学習場面において,聞き手に質問スキルを教授することの話し手のスピーキング力向上への効果とその個人差について,中学生を対象に検討した。質問スキル教授群,事前準備を加えた質問スキル教授群,統制群を設定し実験授業を行った。質問スキル教授の有無,事前準備の有無の対比を用いて検定を行った結果,質問スキルの教授は話し手の発話の複雑さに,事前準備を加えた指導は発話の複雑さ,正確さに効果を持つことが示された。また,学習観を個人差変数とした適正処遇交互作用(ATI)の検討の結果,文法規則を重視する学習者には,事前準備を行った聞き手を相手にした方が発話の流暢さ,正確さ,および知識レベルの文法規則の習得に高い効果が得られた。情緒性格要因に関しては,衝動性が高い学習者にとっては事前準備を行っていない聞き手を相手にした方が,発話の流暢さを高めることが示された。