研究部門 Ⅰ 英語能力テストに関する研究
日本人英語学習者の聴解時の統語的一時曖昧文の処理における韻律情報の影響
―ゲーティング法を用いた検討―
愛知県/名古屋大学大学院 在籍 後藤 亜希
▼研究概要
本研究は,英語学習者と英語第一言語話者が,聴解時の文処理において,韻律情報をどの段階で活用しているのかを明らかにすることを目的とする。調査では,ゲーティング法を用いたリスニングの課題を行い,分析においては,学習者のリスニングの習熟度,文構造,学習者の動詞使用の選好性を要因として扱った。その結果,(1)英語学習者は,音声言語処理の早い段階では,動詞の選好性の影響を受けるが,提示が広がるにつれて韻律を用いた文構造の予測が可能となること,(2)英語のリスニング習熟度の高い学習者ほど,提示される文構造によっては韻律情報に対して敏感であり,文構造の予測が正確であること,(3)英語第一言語話者は,英語学習者と比較して,文処理において,より正確に韻律情報を活用している可能性があることが示された。これらの結果から,英語第一言語話者のみならず,学習者においても,韻律情報を活用して,文構造を予測することが明らかとなった。