吉田研作
上智大学言語教育研究センター教授・センター長
専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。
現代のボーダーレス世界においていわゆるモノリンガル社会は殆ど存在しなくなっている。どの国にも複数の言語話者が共存している。日本には日本語以外を話 す人は基本的にいないと思いがちだが、実は、日本語の他にアイヌ語や琉球諸島で話されている日本古来からの言語が存在するし、ここ100年の間にハング ル、中国語、ポルトガル語、スペイン語、英語など、今では日本で生まれ育った人が母語としてきた言語がいくつも存在するのである。これは、日本がもはやモ ノリンガルではなくマルチリンガルな国になってきていることの証なのである。
しかし、これだけ多くの言語が共存する社会になってきたのにも関わらず、なぜ日本語以外話せないという人がこんなに多いのだろう。
それは、国としてはマルチリンガルになったものの、個人レベルではプルリリンガル(複数の言語が使える)にはなっていないからである。ヨーロッパを始め、 世界の色々な地域を見てみると、単に国の中でいくつもの言語が話されているだけでなく、個人々々が複数の言語を(完全でなくても)話せることが分かるだろ う。つまり、社会がマルチリンガルになっただけではだめで、個人がプルリリンガルにならなければならないのである。
(June 2011)
専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。