吉田研作
上智大学言語教育研究センター教授・センター長
専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。
日本人は、日本語を話し、日本語を読み書きしている。国中どこへ行っても、「文字」を見ることができる。よく言語の4技能というが、これは、聞き、話し、 読み、書く技能を指している。そして、我々はどの言語にも4技能という概念があてはまると思っているのではないだろうか。
以前、世界には6500以上の言語が存在すると言ったが、果たしてそのなかで、文字をもっている言語はいくつあるだろうか。実は、独自の文字体系をもっている言語は、400ぐらいしかないのである。つまり、文字をもたない言語は6000以上もあるのである。
ところで、文字をもたないということはどういうことなのだろう。まず、文字がないために、民族や共同体の歴史や文化を子孫に伝えることが難しくなるだろ う。また、文字がないために、文明の進化についていけなくなるだろう。つまり、文字がないと教育に大きな支障をきたすのである。今世紀末までに、現存する 言語の約半分は死語になる危険性をはらいんでいるというが、そのほとんどは、文字をもたない言語なのである。
そこでUNESCOやSIL(Summer Institute of Linguistics)などでは、文字をもたない言語話者のリテラシー促進のために、文字の無かった言語に文字を与える努力をしているのである。
日本語を母語とする我々は、文字を通じて教育が受けられることにもっと感謝しなければならないのではないだろうか。
(July 2011)
専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。