文法の教え方をどう考える

新学習指導要領において、文法の取り扱いは次のようになっている。「文法については,<コミュニケーションを支えるもの>であることを踏まえ,言語活動と効果的に関連付けて指導すること」。問題はこれがどういうことを意味しているか、である。

外国語を学ぶには、文法規則をしっかり学ばなければならない、と思っている人は多い。まず、体系化された規則をしっかり学び、それを練習してから使えるよ うに練習する、という考え方である。しかし、その逆もある。世界に6800ある言語の中で、体系化された「文法」を持っている言語は、数百に過ぎない。あ る言語(あるいは方言)を国の「公用語」にした場合、その規範となる「文法」が必要になる。日本には、東京方言をベースにした共通語があり、日本語の文法 は共通語の文法である。しかし、他にも存在する関西方言や東北方言の文法書は存在しない。だからと言って、関西弁や東北弁に文法がないわけではない。つま り、文法は「明示的に体系化された」ものである必要はなく、コミュニケーションする中で自然に(暗示的に)学ばれる、ということを忘れてはならない。

昔、先生が stand on the corner of the intersectionは間違いだと言っていたのを思い出す。corner は面ではなく点なのでat が正しい、というのである。では、英語の有名な歌に、Standing on the corner watching all the girls go by....という歌詞があるが、これは間違いなのだろうか。

今回の学習指導要領では、文法はコミュニケーションと切り離して教えないようにと言っているが、これの意味をよく考える必要があるだろう。

(June 2012)

吉田先生のPROFILE

吉田研作
上智大学言語教育研究センター教授・センター長

専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。

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