コミュニケーション能力とは

一般にコミュニケーション能力というと、日常会話能力と認知力・思考力を土台としたコミュニケーション能力に区別される。日常会話能力の特徴は、言語以外 の非言語情報(ジェスチャー、顔の表情、場面、服装など)が言葉の理解に大きな影響を持つことと、例えば、How are you?  How much is it?  May I have~? というような慣用表現(チャンク表現)が多く使われることがあげられる。そして、これらのチャンク表現は分析する必要がなく、そのまま使えれば良いのであ る。このような日常会話の場合、言葉自体がコミュニケーションに果たす役割は30%ぐらいに過ぎない、という人もいる。それに対して、認知力・思考力を土 台としたコミュニケーション能力の場合、コミュニケーションに言葉自体が持つ割合は、非常に高くなる。たとえば、講演や講義を聴いている時に周りの場面は 話の内容と無関係だろうし、話し手の顔の表情からも話の意味内容を推測することは難しい。また、このようなコミュニケーションの際に使われる言葉は、単な る慣用表現ではなく、What I mean is~...という表現があったとしたら、~ の後にくる内容が分からなければ理解はできないのである。つまり、この場合は、語彙や文法等、言語そのもの の知識が大切になるのである。

小学校、中学校、高等学校、それぞれのレベルでコミュニケーション能力の育成の大切さが強調されているが、問題は、どのようなコミュニケーション能力か、ということである。それをしっかり理解しないと、トンチンカンな議論が生まれてしまう可能性があるのである。

(August 2012)

吉田先生のPROFILE

吉田研作
上智大学言語教育研究センター教授・センター長

専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。

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