吉田研作
上智大学言語教育研究センター教授・センター長
専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。
現日本の英語教育改革の目標として、中学卒業時に英検3級、高校卒業時に英検準2級、あるいは、2級が挙げられている。ところで、生徒の英語力をそこまで 伸ばすためには、英語の教師もそれなりの英語力を持っていなければならない。そして、「英語が使える日本人」を育成するための行動計画では、教師には、準 1級程度の英語力が求められる、としている。
ところで、現状はどうなっているかというと、中学3年で英検3級相当の英語力がある生徒は約33%弱、準2級の英語力がある高校生は約30%にとどまって いる。そして、英験準1級程度の英語力のある英語の教師は、中学で約25%弱、高校で約50%弱となっている。当初設定された目標は、残念ながら達成でき たとは言い難い。
確かに、教師自身の英語力を伸ばす努力はしなければならない。しかし、英語ができるから英語が教えられる、という単純なことでもない。英語教育を良くする ためには、教師の英語力の他にもう一つ大切な「教授力」がある。小学校で現在英語活動がほ行われているが、先生は、英語で教えている。元々英語が嫌いだっ たり苦手だったりした先生も英語を英語で教えている。そして、その先生たちを見ていて、うまい先生は、必ずしも英語ができる人ではなく、むしろ、生徒をひ きつけ、上手に動かすことができる人、生徒に英語を使わせ、生徒が英語を使ってコミュニケーションできた喜びを教えられる人なのである。英検で何級あるか という基準も大切だが、教師として生徒に英語を使わせ、英語でコミュニケーションすることの喜びを教えられる「教授力」の方が、大切な場合があるのであ る。
(October 2012)
専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。