吉田研作
上智大学言語教育研究センター教授・センター長
専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。
いよいよ4月から高等学校では、英語の授業は基本的に英語で行うことになっている。問題意識が高い先生方の中にも、現実的には難しい、と考えている人が大勢いるだろう。しかし、英語で授業をする際に一番大切なのは、教師が一人で英語で講義をすることではなく、生徒にいかに英語を理解させ、使わせるか、である。しかし、そのためには、教師が生徒に分かるように授業運営をする必要がある。その一つの方法は、いわゆるclassroom English の上手な活用である。内容に関する表現 (What does this mean?)、授業運営に関する表現 (Open your textbook to page 10.) 、そして、教室における生徒との一般的やり取りの表現(You look sleepy today.)、などは、比較的慣用表現が多く、また、毎授業使えるため、その内に生徒は分かるようになるものである。
問題なのは、あるタスクやテキストの内容を説明する時など、内容によって毎回新しい表現が必要になる場合だろう。Who knows the meaning of this word? までは良いが、It means….とその後の説明の時に使う表現は、その時々で変わるため、難しくなる。
そこで、説明に使う表現が難しくなる場合のヒントを紹介しよう。まず、一つのことを最低でも3通り言えるように準備する(授業の前に練習しておく)。たとえば、If you were the pilot in this story, what would you have done? という表現を、Okay, let’s go back to the story. If you are the pilot, what will you do? 、さらに、All right. You are the pilot. Now what will you do? という表現に変えていく。つまり、コツは、文法的に徐々に易しい表現に変えていき、更に、可能ならば、図や写真、表やグラフなどの視覚補助教材、また、デモンストレーション(上記例なら、I would have done this….と言いながら例を示す)などを取り入れて説明すれば、かなりの程度まで生徒も分かるようになるだろう。
英語で授業をする際に最も大切なのは、生徒が分かるように生徒と「コミュニケーション」しながら、彼らに最も分かり易い表現方法を使うことなのである。
(February 2013)
専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。