英語「を」から英語「で」へ ‐CAN-DOの意味‐

従来の英語教育は大半が英語「を」教えることを目的としてきた。しかし、グローバル化された現代社会においては、自らも発信し、他の国の人にも負けないだけの交渉力を兼ね備えたコミュニケーション力を持っていなければ生きていけない。もはや、従来のような英語「を」教えるやり方では到底歯が立たない。大切なのは、英語「を」学ぶことよりも、英語「で」コミュニケーションできる力を育成することだ、ということになるのである。

このように、英語「で」学ぶ、ということになると、英語教育の具体的目標をいわゆるCAN-DOリストの形で設定することの重要性がクローズアップされる。つまり、英語の何を覚えているかではなく、英語で何ができるかが大切になるからである。仮に、次のCAN-DOがあったとしよう。英語でどういう言い方をすればよいだろうか。

「誕生日プレゼントをもらったことに対して感謝の気持ちが言える」

"Thank you."や"Thank you for the present."など、どちらかというとそのままの易しい表現から、"How did you know I wanted this? ""I didn't know you remembered my birthday.""Where did you get this?""Oh, you are so sweet!" など、感謝の表現はいろいろある。しかし、どれを使っても、「誕生日プレゼントをもらったことに対して感謝の気持ちが言える」というCAN-DOに対して、"Yes, I can."と答えられる。つまり、CAN-DOの主たる目的は、どういう英語が使えるか(=英語「を」)ではなく、どういう表現であれ、問われているCAN-DOができるかどうか(=英語「で」)にある。英語の知識の多少にかかわらず、誰でも"Yes, I can." と答えることができ、誰もが英語を「使う」ことに自信が持てるようになることが最も大切なのである。

(August 2013)

吉田先生のPROFILE

吉田研作
上智大学言語教育研究センター教授・センター長

専門は、応用言語学。最近は、文部科学省の「外国語の能力の向上に関する検討会」座長も務める。また、日韓中国の高校生の英語力比較や教師の教え方を研究。海外のThe International Research Foundation for English Language Education(TIRF)の理事や、国内ではNPO小学校英語指導者認定協会の理事なども務める。著書多数。

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