英語は誰の言語?

前回,母語では中国語を使う人が多いけれど,公用語などを含めると英語を使う人の方が多いという話しをしました。母語だけの場合に比べて,これだけ英語を 使う人が増えると,その使い方も様々です。Kachru (1982) は,インナー・サークル(Inner Circle),アウター・サークル(Outer Circle), エクスパンディング・サークル(Expanding Circle)という3つの円が泡のように上に大きくなっていく様子を描いて,この現状を表しました。

どの程度,英語が出来る人を英語話者とみなすかという定義によっても変わりますが,Crystal (2003)によれば,Inner Circleはアメリカ,イギリスなど3-4億人,Outer Circleがインドやシンガポールなど3-5億人,そしてExpanding Circleが日本をはじめ5-10億人です。世界の総人口を仮に66億人とすると,その3人に1人が英語を用い,しかしその8割近くの人が実は英語を母 語としてない人々ということになります。今英語を学んでいる子どもたちは将来,母語話者とよりも,アジアの人々など英語を母語としない人同士で英語を使う 可能性が大きいのです。

(June 2011)

卯城先生のPROFILE

卯城祐司
筑波大学大学院人文社会科学研究科教授

博士(言語学)。小学校英語教育学会会長、関東甲信越英語教育学会会長、全国英語教育学会副会長、語学教育研究所評議員。ELEC評議員。専門は英語教授法全般、リーディングおよび第二言語習得。文部科学省「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」、「外国語能力の向上に関する検討会」委員などを務める。『図解で納得!英語情報ハンドブック』(ぎょうせい)ほか著書多数。

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