じゃんけんグリコ

「最初はグー、じゃんけん...」という、いつものじゃんけん。実はこの「最初はグー」から始まるじゃんけんは、志村けんさんが、『8時だョ!全員集合』でやったのが最初だと言われています。思いの外歴史は浅いですね。ところで子どもの頃、じゃんけんで階段などを上がっていく遊びをした覚えがあるでしょうか。この遊びは「じゃんけんグリコ」と呼ばれ、グーで勝つと「グリコ」で3歩、チョキで勝つと「チヨコレイト」で6歩、パーで勝つと「パイナツプル」で6歩進むことができます。ただ、調べてみると地方差もあるらしく、グーで勝った際に「グリコのおまけ」で7歩、あるいは「グリコのおまけつき」で9歩進める、という地域もあるようです。

英語のじゃんけんの掛け声としては、"Rock, Paper, Scissors, One, Two, Three!" が多く使われます。Rockは石、Paperは紙、Scissorsはハサミですね。ところで、もし英語の母語話者が「じゃんけんグリコ」をやったとしたら何歩ずつ進むでしょうか。答えはglicoは2歩、chocolateは3歩、pineappleはなんと2歩だけです。この違いは語の「長さ」に関する感覚の違いに由来します。辞書を見てみると、chocolateには、choc・o・late のように切れ目があり、これは「音節(基本的には母音を中心とした塊)」を表しています。pine・appleに至っては、文字数としては多いのですが音節は2つしかないことになります。これがpineappleで2歩しか進まない理由です。

一方、日本語の「長さ」は「拍(モーラ)」で計られます。簡単に言えば、俳句や川柳などの5・7・5の1音(仮名1文字。長音「ー」、促音「っ」、撥音「ん」を含む)のことです。そういうわけで、2音節のpine・appleに対し、日本語のパイナップルは6拍となり、6歩進めることになります。

このように、「じゃんけんグリコ」は日本人が有利なようですが、この「長さ」の感覚の違いが、英語を発音する際、本来ないはずの母音をやたらに挿入してしまう、日本人のクセの原因でもありますのでご注意を!!

(June 2013)

中村先生のPROFILE

中村典生
長崎大学 教育学部教授

小学校英語教育学会事務局長、言語文化学会理事、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会 連合会)利酒師、俳人協会会員・狩俳句会同人(俳号は中村龍徳〈りゅうとく〉)、前岐阜大学硬式野球部監督など、昼夜を問わず役職多数。専門は英語教育学、第二言語習得。著書多数。

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