中村典生
長崎大学 教育学部教授
小学校英語教育学会事務局長、言語文化学会理事、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会 連合会)利酒師、俳人協会会員・狩俳句会同人(俳号は中村龍徳〈りゅうとく〉)、前岐阜大学硬式野球部監督など、昼夜を問わず役職多数。専門は英語教育学、第二言語習得。著書多数。
外国語活動で大事にしたいことの中に、「インフォメーション・ギャップを作る」「表現と場面をセットにする」ということがあります。例えば、"Do you have a pen?"という表現を使う際には、「相手がペンを持っているかどうか分からない」際に、例えば「ペンを買い求めようとする場面」や「何か書く必要があるのに自分にペンの持ち合わせがない場面」を添えて提示するようにします。言葉が実際に使われる生きた文脈を提示することで、児童にコミュニケーションを体感してもらうことが狙いです。目の前にペンが並んでいるお店で、買う気もないのに、"Do you have a pen?"とは言いませんよね。しかしそう考えると、"How old are you?"や"Is this a pen?"に、生きた文脈を提示することはとても大変です。日本語で考えても、「年齢は?」とか「これはペンですか?」と聞かれることはめったにありません。特に年齢を聞くことは失礼に当たることも多々あります。「簡単に言える言葉でも、安易に使えない」ことが分かります。
それでは、"What can you do?"という表現はどうでしょう。これも文脈を添えるのは難しいですね。「何ができるの?」などと聞くのは、よほど横柄な採用面接担当者くらいでしょう。そもそもcanにも注意が必要です。canには「能力」のニュアンスがあるからです。"Can you speak English?"と尋ねたら、"Yes, if I study harder."「ええ、もっと勉強すれば」とちょっと気分を害したような答えが返ってくる可能性もあります。「英語を話す能力があるの?」と尋ねられたと捉えたのでしょう。英語を話すかどうか聞くのであれば"Do you speak English?"の方が妥当です。日本人はちょっとcanを多用し過ぎる傾向があります。後続の動詞も原形で使えるという便利さから、外国語活動でも頻繁に使われます。しかしこれもやはり「簡単に言えても、安易に使えない」一例であることに注意が必要です。
(August 2013)
小学校英語教育学会事務局長、言語文化学会理事、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会 連合会)利酒師、俳人協会会員・狩俳句会同人(俳号は中村龍徳〈りゅうとく〉)、前岐阜大学硬式野球部監督など、昼夜を問わず役職多数。専門は英語教育学、第二言語習得。著書多数。