中村典生
長崎大学 教育学部教授
小学校英語教育学会事務局長、言語文化学会理事、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会 連合会)利酒師、俳人協会会員・狩俳句会同人(俳号は中村龍徳〈りゅうとく〉)、前岐阜大学硬式野球部監督など、昼夜を問わず役職多数。専門は英語教育学、第二言語習得。著書多数。
今回は利き酒師の話をしましょう。
利き酒師はいわゆる日本酒のソムリエ(sake sommelier)です。私が岐阜にいるときは、ボランティアで「利き酒講座」などを開催していました(毎回、後半は宴会でしたが…)。私が考える利き酒師の仕事の流れは以下の通りです。
1.お酒の質を利く(聞く)
2.利いたお酒を表現する
3.お酒を楽しんでもらう(楽しむ)
1では、実際にお酒を飲んで、どのようなタイプのお酒かを識別します。これを「利く」と言います。舌の上でお酒を転がすように利いていきますが、この際、甘み、辛み、だけではなく、酸味、苦味、塩味や、香りやアルコールの濃さ、揮発性、発泡性、米の旨みなど、さまざまな味わいを感じ取ります。
2では、その利いたお酒を、的確な言葉で表現します。実はこれが大変です。というのは、例えば同じお酒を飲んで、「甘い」と言う人と「辛い」とい言う人がいることがあるからです。つまり、味わいはかなり相対的なもので、人それぞれによって捉え方が異なる場合があるのです。こんなときに役に立つのが何か他のものに例えることです。シルクのようになめらかで、かつ膨らみのある味わい、そしてライチのような香り、等々(しかし、あまりくどいと余計に分からなくなることもありますが…)。
1、2でお酒を利いて、表現するのは、結局は3、楽しんでもらう(楽しむ)ためです。こんな酒質だから、こんな料理に合わせるといいですね、記念日ならこんな華やかなお酒がいいかな、など。単に1の利き酒だけで終わってしまうと自己満足の世界です。その知識を使って、表現して、みんなで楽しむ。利き酒の知識を人とお酒、そして人と人との出会いに役立てるのです。これこそ利き酒師の存在価値ではないでしょうか。実は英語に関しても同じです。単にたくさんの英語を知っているだけでは自己満足に過ぎません。その知識を使って、表現して、コミュニケーションを楽しむ。これこそが英語を学ぶ意味ではないでしょうか。
(February 2015)
小学校英語教育学会事務局長、言語文化学会理事、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会 連合会)利酒師、俳人協会会員・狩俳句会同人(俳号は中村龍徳〈りゅうとく〉)、前岐阜大学硬式野球部監督など、昼夜を問わず役職多数。専門は英語教育学、第二言語習得。著書多数。